また、だ。いちいち目に付くあの人。

「また明日ね!名前せんせー!」
「はいはい。気を付けて帰ってね。」
「バイバーイ!」

夕方の教室。3階、窓際の一番後ろ。それが俺の席。校門の前の花に水をやるあの人と、それを先生と呼んで帰る奴ら。生物の先生だからか、いつも白衣を着ている。あの人は酷くその白衣が似合う。俺の目を惹きつけて離さない程に。

そんな俺の視線に気づいたのか、見上げてくるあの人。またいつもみたいに笑ってくれるんだろう。

「まだ帰らないの?」

そういうあの人は夕陽に照らされてますます綺麗だから、俺は今までちゃんと返事が出来たことがない。今日もまた、まあ、と軽く返事をしただけだった。あなたの視界の中に入れることが、嬉しいくせに恥ずかし過ぎて。

毎回そんな反応なのに、気にもしないかのように笑ってくれる。3階にいる俺に届くはずもないのに、水を撒くホースをこちらに向けてくるのだ。

「はたけくんにも水、あげるよ!」

無邪気なその笑顔を、気にもしていないかのようにするので必死だ。だって直視してしまったら、俺はもう良い生徒でなんかいられない。周りを気にせず奪いに行ってしまう。あの人の人生を踏み潰して。

「…罪深い人だよね、ホント」

「えー?、なんてー?」
「何にもない」
「嘘だー今なんか言ってたー!」
「子どもみたいに駄々捏ねないで下さい、せんせ。」
「うわムカつくんだけど!水掛けてあげるから降りて来なさい!」
「……そう言われて誰が降りるかっての」
「もー!はたけくん!」

それを聞き流すかのように窓を閉めて、席を立つ。行く先はもちろんあの人のところだ。受験よりも何よりも、先生と呼ばれるあなたが気になって仕方ない。俺の青春全てを掻っ攫った人。ただ、勝手に、好きな人。