今日もみっつ、使い終わったコップがキッチンに置かれている。7時、それを見つめながら食べ終わったパンの皿を隣に置いた。気怠く歯磨きをしながら、今日おじじの出勤時間が30分遅かったことをぼんやりと思い出す。でも間に合ってんだろうなぁ、とうがいをした。


「――…おかえり」
「もう飯食ってんのか」
「?ごめん」

18時すぎ。蕎麦をすすっている私を背に、マスクを取ってL字のソファに座る。ご飯を作るのが面倒くさいから、私とデリバリーしようと思っていたらしい。私の携帯でUber EATを開いて、何を食べようか迷っている。相変わらず行動が早い。

「ハンバーグも良いな。大盛…」
「Uber EAT高いよ」
「別にいくらでもいーんだよ。美味けりゃ」
「さすが金持ちっすポテト追加で」
「お前も相変わらずで…。」

ポテト一つ…と呟いて携帯を操作している。ポテトの為に納豆とゆで卵を食べるのは止めておこう。あと30分後に来るってよ、といつも縛っている髪を解いているおじじの姿。それがちょっとエロい。33歳のくせに。なんて初めはつっこんでいたけど、最近は言うほうが面倒くさくて言っていない。

「名前」
「んー?」
「俺先風呂入ってくるわ。来たらこれで払っといて」
「えー」
「ポテト奢ってやるから」
「はい!喜んで!」

変わりように笑いながら洗面所に消えてったおじじ。置かれた三千円をぼーっと見つめると、シャワーの音が聞こえてくる。そういえばもう一緒に住んで半年が経つなぁ。慣れてしまえば、初めはイヤだったこともどうでもいい。ティッシュの上に財布とマスクを置くとか、洗い物は放置されがちとか、洗面所のガラスを綺麗にしないとか。

「早くポテトこーい…。」

でも仲は良いほうだと思う。地味に。食費別だけど、なんだかんだと一緒にご飯を食べる機会も多いし。休みの前の日が被れば、一緒にお酒も飲む。そのせいで家はちょっとした居酒屋みたいだ。

チャイムが鳴ったので、もうそんな時間かと焦ててマスクを付けた。手に持った三千円で配達員に支払い、ハンバーグの良い匂いをゲット。リビングに戻る前に、洗面所から上半身裸のおじじが出てきた。

「腹減ったわー」
「先服着ろ?」
「あぁ…もーちょいしてからな」
「全力で風邪引け」

ハンバーグの入った袋を取って、おじじはリビングに足を向ける。その後ろを子分のように付いていく。ポテトを貰うとニヤニヤが止まらない。ガキみてぇと聞こえるが知ったこっちゃない。300円ごときのそれで幸せになれる私、最高じゃん。

「明日仕事か?」
「ん、仕事。シカマルは…あっ休みかうぜーな」
「お前ホント口悪くなってくな…。」
「誰のせいか誰の」
「ま、のんびり寝かせてもらうわ」
「勝手にどーぞぉ!!」

嫌味ったらしくお酒を飲んでいる姿を見せつけてくる。まじうざい。早く寝ちまえ。でもポテトは美味しいので、一緒にテレビを見るハメになる。クイズ番組を見て、一緒に回答し合う我らはやっぱり仲良しだと思う。気付けば一時間経ってるなんてザラだ。

「あー…寝るわ」
「あっもうこんな時間か」
「おー」
「ばいばーいオヤジぃ」

ゴミを捨てて、部屋に戻っていくおじじ。21時かぁ。お風呂入らなきゃ。お酒飲んでる日は、お風呂入らず寝ちゃうのがオヤジの性質だしな。ゆっくり入ろっと。私も、私の部屋でパジャマを調達して…。って部屋汚いな。ま、いつものことか。洗面所に足を向けた。

他人以上友達以下。おじじことシカマルと一緒に住んで半年?経った日のことである。