透明の衝立ついたて越しに、酒を喉に流し込む姿が映る。少しざわついた店内も、どこか懐かしくて喉が渇いてくる。待ち構えていた宣言解除に、喜んだのは私達だけでないはずだ。生一つ!の声がもはやおつまみのよう。

「良い雰囲気ですねぇ〜」
「だな。酒が美味ぇ」
「うむ〜最高〜おかわり!」
「おい飲み過ぎんなよ」
「そういうお前もな!家でも飲むからな!帰りスーパー寄ろうね!」
「へいへい…」

腹八分目!と思いながらも焼き鳥に伸びてしまう手。憎らしい。けれど美味しくて安いなんてずるいぞ。まだ頼みたい本能と、家で飲みたい理性が戦争中。そんな最中、もう半年経ったんだなとおじじが呟いていた。

「半年…弱?ですかね。早いよね〜」
「まさかお前とこうなるとは思ってなかったしな」
「な〜。面白いぜ〜」
「名前と初めてちゃんと話したのだって、去年の年始…新年会だろ?」
「えっ。そうだったっけ」

馬鹿め。私はもっと前からシカマルのことを知っていた。入社当初は格好良いと思っていたし。でも彼女がいるって聞いて、諦めた。でも一昨年の年末、別れたことを知って新年会頑張った覚えがある。

「入社当初"は"って何だよ、"は"って」
「あら!心の声!」
「いつも結構漏れてんぞ」
「えっ!言ってよ〜はずかし」
「で、」
「で?」
「俺、それ以前に話したことあるかって思い出してみたんだけどよ」
「(かわいいな)ほう」
「一昨年の年末、帰社途中で通りすがりの人に道聞かれて…たまたま近くを通った名前に声掛けたなって」
「……そんなことあったなぁ!うわ!懐かし!」

あの時、嬉しかったんだ。名前、覚えててくれたんだって。まさかその二年後、こうなるとは。人生って面白い。感慨深いな。あの時の新年会…とおじじが言うので、どうやら今までのヒストリー語りたいらしい。

「あの新年会で、初めてちゃんとお前と話したんだよ」
「そだねぇ」
「二次会まで行ってよぉ…。周りそっちのけで、俺ら二人で話したの覚えてっか?」
「覚えてる覚えてる!みんなポカーンとしてたよねぇ」
「やけに盛り上がったよなァ」
「そうそう!もうなんでかなんて覚えてねーですよ」

そこからご飯に行くようになって、一度間違えて・・・・・・、告白して振られて、そこから間があいてまたご飯に行くようになって。一緒に服買い行ったり、旅行行ったのとか、もうなんでって感じ。それで全力で友達だったっていうんだから、爆笑だ。一緒に住むことになるとか、抱腹絶倒である。

「一周回って仲良しだよね」
「…まぁ飲んべえに近づいてはいるな。お前のせいで」
「それこっちのセリフでもありますからね〜?一人で家飲みとかしなかったし!」
「もう家で週2は飲んでるよな、俺ら」
「休みの前の日ね」

アハハ!と笑う今この瞬間が、たぶん、ちょーしあわせらしい。関係性のない私達だからこそ、気楽で、居心地がいいのだ。まぁ、世間一般で言うとアリエナイと思いますが。面白いんで。遠慮の塊などなく、焼き鳥を頬張ってお会計を済ます。帰り道は秋の匂いがして、少し顎マスクになることを許してほしい。

「良い気候だねぇ」
「だな。なぁ、商店街の方から帰らねーか?良い店結構あんだよ」
「まっじ?いくいく。開拓じゃー!」
「アハハ。うるせ」

煙草の煙を吐きながら、少し火照った頬が嬉しそう。その横顔が、やっぱりイケメンの部類に入るおじじ。なので、お酒が入るとちょっと触りたくなる衝動。すぐに理性が勝利するから大丈夫だけども。一回間違えているとはいえ、同居し始めてから二度目の間違いは言語道断だ。

「えっBARあるよ」
「…おいおい勘弁してくれよ」
「見つけちまったな旦那」
「見つけちまったな。良い二件目」
「デスヨネ!!」

だから、ちょっとだけ手を繋ぎたい衝動は、お酒のせいであれ。