一緒に出かけるとき、鍵を持って行くのはおじじ。ゴミ収集日前、それを集めるのは私。大型スーパーで買い物するとき、カゴを持つのはおじじ。Uber EATを頼むときのアカウントは私。視聴者参加型のクイズ番組で、チャンネル操作するのはおじじ。我が家の暗黙公式ルール。 「もーさ、夫婦よそれ!」 「いや、我らの歴史覚えてる?絶っっっ対ナイ。」 「まぁクズではあるけどもー、」 コーヒーが無くなりかける16時すぎ。でもさぁ、とカフェの背景が似合いながらもご納得のいかぬ表情イノさん。 「一回間違っただけでしょー?」 「それのドコがクズでないと?その後告って振られましたが??」 「……ごめんそうだった。全てはアイツが悪い」 「まぁもう昔の話だし全然いーけど」 「でもね、ソレと一緒に住んでるアンタもなかなかのモンスターよ」 「間違いねぇっ!」 コップを傾けて一口飲むと、もうすぐ無くなりそうらしい。甘ったるい味が口の中に広がる。何飲んでたんだっけ? 「でも名前、今すごい居心地良いでしょ?」 「そだねぇ。ほぼノンストレス」 「普通ね、他人と一緒に住んでソレって有り得ないの。男女だと特に!分かる?」 「まぁそう思うけど…でもまだ半年しか経ってないしさ」 「半年、"も"、よ!私だったらすぐ間違えるわ」 「う〜ん」 もう消えてしまった後味を追って、一口残しでがぶ飲み。そうそう、この甘さ。でもどういうわけか口の中からすぐ無くなってしまって。前まではそんなこと無かったはずなのに。 「だから、私が言いたいのは!アンタこのままだと彼氏はおろか結婚なんて出来ないわよ。」 「…シカマル先輩が地味に優良物件だからですか?」 「残念ながらね。名前と波長が合っちゃってんのよ。」 「んー…それは否めぬ」 「ホントーーにシカマルは恋愛対象外なのよね?」 「そうです。てか、互いにそうです」 「ただの友達だから…ってのもあるかもしれないけど。でもそれだけじゃ片付けられないしねー…」 「?なんで」 「……さあね。」 残った一口を飲み干す。…甘さが分からなくなっている。慣れていないと思っていたはずなのに。もしかして無糖のコーヒーでも飲んでいたのだろうか。ずるずると飲み終えた音がした。 ガチャリと玄関を開ける。おかえりなんていう言葉はない。18時、おかずの作り置きに悩む。キッチンに並べた野菜達とにらめっこだ。遠くでドアの開く音がする。おじじが水を入れに来るのだろう。 「何作んの」 「悩み中。」 「悩めるほどレパートリーねぇだろ」 「うっせ引っ込め」 失礼しましたーと部屋に戻っていく。鑑賞されないスタイルがまたいい。イノが言っていたことは一理、いや二理以上はある。もう30歳の名前よ、正気か?と問えば問うほど、正当な言い訳を探している。 私の冷や奴ブームは、シカマルにも伝染していた。おじじがほぼカニ(カニカマ)を珍しいと買い絶賛していて、私も(ただの)カニカマを買っていた。納豆はどちらとも好きで、横取りされたりもした。卵だって… 「……なんていうか、なぁ…。」 ← |