恋愛なんて、所詮感情の真似事。

「なァーんで飲んでないってばよ名前!」
「…ほっといて」

どこぞの奴が上忍になったのかあまり興味の無い私にとって、この昇進祝いの飲み会とは一番苦痛だったりする。…誰だ、上忍強制参加を作った奴は。忙しいんだこちとら。お酒が好きなわけでもなければ、人との付き合いも好ましくないし余計迷惑極まりない。

しかしそんなものは序の口にすぎない。一番苦痛なのは、隣で酔いまくっている同期である。次期火影確実という出世頭…

「離れてナルト」
「エエエ!?なんで俺が名前から離れなくちゃなんねーんだってば!?ナンデ?!何で「もう黙って」
「いーやだもんねーっだ!イシシー」
「…」

横から抱き付いて離れないことに舌打ちをかまし、この状況をいつも助けてくれる男女を探す。他の上忍達はナルトがこうなると情もなくせっせと逃げていくことは、もはや当然となっていて辛い。早くいつもの救世主を見つけなければ…。

上忍のみの飲み会だが、同期は全員上忍みたいなものなので言わばプチ同窓会状態。だからこの状況を打破する男女を探すのは少々大変だったりするが…。身体は酒臭いナルトに抱きつかれ動けないので、目を動かせて黒髪と桃色の髪を探せば、バチ、と目が合ったのは黒髪の方だった。私の視線と状況を理解したのか、彼は黙って立ち上がり、桃色の髪の少女に話しかけに言った。

「ありがとう黒髪」
「えー!?何だってばよ!?」
「お願い静かにして」
「あーもう名前ってばツンデレかぁ!?可愛いなァもう!!」
「…」

馬鹿かコイツは。なんて呆れた目で金髪男を見ていれば近づく二つの影。ああ助かった…。私は隅でひっそり、それなりの酒とご飯を食べられればそれでいいのに。そろそろこの悪目立ちを卒業したい。

「名前ってばなんでそんな綺麗な肌してんだってばよ…髪も綺麗な茶色だし…触りたくな「ナールートォー?」
「う…え…?サクラちゃ「なに私の名前にベタベタしてんのよー!!しゃーんなろー!!」

ナルトが私の髪に触ろうとした手を掴んだのは救世主の一人、サクラはそのまま手を曲げてはいけない方向へ。グキッと変な音と共に、恐怖に怯えたナルトの手を掴んだまま引っ張り連行されていく。もはやいつもの光景になりつつあるソレ。…早く学んでくれ、出世頭よ。

「サクラ日に日に増してんね…」
「…ま。分かんだろ?お前なら」
「……まあ」

代わりに隣に座ったのは救世主のもう一人である、ナルトに次ぐ出世頭である木の葉の策士ことシカマル。人付き合いを好まない私の数少ない友人。いつもこの人がいち早く私のSOSに気づきサクラを呼んできてくれる。もうこの二人が居ないとナルトの居る飲み会には参加しない程だ。

「サクラも、サスケにしときゃいーもんをなァ」
「まあ、人の気持ちに永久はないし」
「まーなぁ…。」

私達の視線は、ナルトに説教するサクラに集まる。あれだけサスケサスケと言っていたサクラが今じゃナルトを好き、必死に連れ戻したサスケがサクラを好くという何とも言えない状況らしい。加えて、

「ナルトもあんままサクラだったらなー…今頃うまくいってんのに」
「まあね」
「なんで名前とくんだ?あいつは」
「…私が聞きたいわ」
「お前も毎回大変だな」
「…」

そう、何を間違ったかナルトは私が好きらしい(シカマル談)。まあ今だに信用できない話だけど。ま、ナルト達の四角関係に巻き込まれてしまったみたいな。うん、だから毎回三人の違った視線が痛かったり。実はこれが飲み会に来たくない一番の理由だったり、する。

「じゃ、今のうちに帰るわ。助けてくれてありがと、シカマル」
「おー。…んじゃ、送「お先に」

盛り上がってるのをいいことにこっそりお店を出ようとしたら、パシッと掴まれた右手。シカマル?と振り向けばそこには、黒髪ではなく、あの金髪の姿。

「名前」
「ナルト…」

お酒のせいだろう。赤い顔が私を見る。掴まれた右手から熱が伝わるようで、どうもいつもの感じと違うことを察知してしまう。……駄目だ、その先を言ったら、何かの均衡が崩れる気がする。でも止められぬ雰囲気に、喉の奥が何かに引っ張られるように重くて。

「名前…、」
「…な、に」
「、分かってんだろ…?」
「だから、何が」
「いつも俺が…酔ってるフリしてるってこと」
「…!」

え…、とサクラの声と共にガチャン!と手に持っていたであろうグラスが落ちる。その音に反応する様に店内は一気に静かになり、皆の視線は彼女…が見つめる先のナルト、と私に集まった。

「ナ、ナルト…アンタ何言って、」
「ごめんサクラちゃん…」
「……ウソ、」
「…」
「……。」

サクラを見つめるサスケの視線が切なくて、うつむくシカマルの姿がなぜか心を締め付けて、でもそれよりも、サクラがナルトを見る視線が、何よりも…苦しい。それでもナルトは、言葉を止めず。私を一直線に見てはっきり言ってしまった。

「本当に俺…名前のことが好きだ。」

サクラが息を飲む音が今にも聞こえてきそうな、視線を一心に浴びて

「…付き合ってくんねーか?」

店の空気が張り詰める−−−。誰も息も出来ないかのような、緊張感に包まれる。でもそれを打破できるのは私だけで私が口を開かなければならない。けれど……私は専ら恋愛に興味がなく、答えは決まっている。がしかし−−−このギャラリーの期待の目線、ナルトを傷つけずにどう返答すればいいのか…と口を開けれずにいれば。

サッ、とナルトから私を隠すように立った背中が見えた。

「な…シカマ
「悪ぃナルト。こいつは…俺の女だ。」
「…!?ちょ、…!」

あ然とするナルトサクラサスケ、同期の皆がシカマルの言葉に大騒ぎするまでに時間は掛からかった。野次馬が店内を飛び交うなか、店内を私の手を引っ張って逃げるようにシカマルに無理矢理連れられ。…気付けば火影岩の上にいた。

「っ、シカマル!」
「…悪ぃ」

さっきまでの勢いはどこへやら。そこにはいつも通りのシカマルがいて、するり、と掴まれた手は離された。自然すぎたそれに少し寂しさを感じたことは、きっと誰にも言うことは無い。

…けれどなぜ、あんな嘘を言ったのだろう。助けてくれただけ…としても、頭の良い彼なら店内で野次馬が飛び交い、里には有りもしない噂を流されるのを承知で、どうして…?一番嫌うソレを、自ら発したのか。

「なん、で……」
「…」
「シカマル…?」

≪悪ぃナルト。こいつは…俺の女だ。≫

私をあの状況から連れ出すためだけの台詞としては、シカマルにデメリットが多すぎる。表情を伺おうとしても街灯もなく、照らすのは夜空だけな火影岩の上では全く見えなくて。

「…なんで「名前、」
「え?」

途端、呼ばれ気付けば身体を包むのは温かい腕。意外と筋肉質だった胸。耳元に掛かる彼の吐息。そして…身体全体から伝わる彼の心音。抱き締められてると気づくには、遅すぎるぐらいだった。

「………え……?」
「初めはよ…友達でもよかった」
「…どういう、」
「けどよ」

キュッ、とそんな音が聞こえてくるかのように包まれる力が少し強められる。まるで心臓を直接抱きしめられたかのようだ。…こんな感情、私は知らない。ぞわぞわして、でもやみつきになって、でも、本当は知りたくないような、

「やっぱナルトには、やれねーわ」
「、は…?」
「いや、なんつーか…その、それだ……。あー…めんどくせえ」
「面倒臭がるとこそれ…?」
「あぁだから俺はお前が!…名前が好きなんだよ。だから、よ」
「!」
「……俺にしとけよ。」

興味なんてなかったはずなのに。…ソレに足を踏み込まされたこと、に、気付くまで後2秒。