9歳、友達の好きな人の話を聞いていて違和感を感じる。12歳、自分は普通でないと違うと気付く。15歳、はっきりと自覚するも誰にも言えず悩みになる。19歳、抑えてきた気持ちを破るほどの出会いをする。24歳、変わらずずっと想い続けている。

「サクラ!」
「名前!久しぶり」
「会いたかったよ〜〜」

2週間ぶりのハグをかますと、久々じゃないでしょとつっこまれながらも抱き返してくれる。ふんわりと匂う香水が私を充満させてくれる。このまま首元を舐めて襲ってしまいたい。…なんて下品は心の中だけだ。一生許されはしないんだからせめて思うぐらいは許して欲しい。

「さ、買い物行くわよ!」
「前言ってたワンピースだね」
「そうそう!それ着てサスケくんとデート行って、その後…」
「はいはい、告白するんでしょ?それ毎回言ってるけど出来たことないよねー」
「うっさいわね!今回はするの!!見てなさい〜〜」

アハハ、と笑いながら自然とサクラの腕に手を掛けて歩き出す。でもこれは学生の頃からの癖だと思われているので、嫌がられることはない。ただのスキンシップ。もうそれでいい。私は彼女の好きな人を応援する立場以上になれないし、なっちゃいけない。この関係が無くなるぐらいなら、友達でいい。

「ねえ、似合う?」
「……かわいい。すっごい、似合ってる!」
「ホントー?アンタ私贔屓だからどーだか」
「でもでも?それが?」
「嬉しいんだけどねー!」

試着室からお目当てのワンピースを着たサクラは、本当に可愛くて。好きだと痛感ばかりする。もう何年も同じことを思っているのに、毎回新鮮に感じてしまう苦しさ。もう彼女も私と同じ気持ちだったら、なんてタラレバに飽き飽きする。期待しないと決めたはずなのに。いつも心のどこかで願ってしまう、振り向いて、と。

サクラは満足げにワンピースを買って、その足でお茶をして、夕方に別れた。夜はあの彼とご飯に行くらしい。…私と一緒に選んだあの服を、着て。


「……ただいま。」
「ん?早いね」

おかえりって言え。と言いながら、リビングで寛ぐ銀髪同居人を蹴って隣に座る。乱暴だねぇ、と言われても気にならない。蹴られた奴は少しずれ落ちた腰をソファに戻して、持っていた本を机にパタンと置いた。

「なんかあった?」
「…別に。」
「あーね、サスケに取られちゃったのか」
「……気遣え?」
「アハハ。図星ね」
「…」

よしよし。と勝手に私の頭を撫でてくるのは大学時代のサークルの先輩、はたけカカシ。そのサークルでサクラと出会って、その彼にも会ってしまった。そんなある意味因縁のサークル。そしてこの銀髪は、私の秘密を知る唯一の人。そして彼も私と同じ人種だ。だから一緒に住むに至る。撫でてくる手を叩いて、キッチンに足を向ける。

「アンタこそ、オビト?と会うんじゃなかったの、今日」
「あー、そうなんだけど。仕事入っちゃったみたいでね」
「…振られたもん同士か…」
「孤独ハウスへようこそ〜」
「ほんとうるさい」

まだ日が差すなか、ビールの缶を開ける。その音に、銀髪細目が手を伸ばしてくる。仕方なくもう一本持ってソファに戻ると、乾杯して始まる(いつものお慰め)会。

「サクラすっごい可愛かったの」
「この前言ってたワンピース?似合ってたんだ?」
「そう。てかサクラが可愛いから。服はおまけ。」
「恋は盲目だねぇ」
「うっさい。…でもさぁ、一瞬でもいいから、あの男を思う時みたいに私を思ってほしいんだよ」
「…ハードルは高いね。」
「分かってるよーそんなの無理だって。でも…どうしても好きなの止められないんだもん」
「止められたらどんだけ楽かね。俺達」
「……あー。酒が足らんぞー。酒ー!」
「ハイハイ。程々にしてくださいよ」

そう言って腰を上げる銀髪がサクラだったらなぁ。なんて、もう何万回も思い過ぎたよ。


一体化を醒ましたい/2022.?