……何故、私は布団を敷かねばならぬのか。 「あなたこっちね。いい、こっちで寝るんだからね」 「おー…。眠い」 「そりゃお疲れ様ですだこと。ほれ」 「んー…。」 1Kの間取りなので仕方なく机を退かして、ベットの隣に敷いた布団に奈良さんを投げた。もう開いていない目は素直に転がって、すーすー寝息を立てていた。…幸せか。呆れながらも私は一人お風呂に入り歯を磨き、こっそりと部屋に戻る。…いや、自分の家なのに!!と思いながらベットに静かにIN。 「とりあえずLINE…、いや違うか」 いつものおもしろ話をサクラに報告するのが日常だったが、今の状況…奈良さんの元カノならば話は別だ。言っちゃいけない空気を感じて、携帯の画面を消した夜中2時半。…明日起きれるのだろうか、私。 「……なぁ」 「ん?」 「寝た?」 「…寝てないね。てかそれ私の台詞」 「んー…。さっきまで寝てたけど」 「ごめん起こした?」 「いや…。てか明日仕事だっけか」 「そうだよ…。起きれる自信ないんだけど起こしてよ」 「そりゃぁ…俺は無理だろ…。」 「デスヨネ…」 とかって話していたら、野郎が謎にベットに上がってきた。……え?何故隣に寝転ぶ。いやいやいや、と突っ込むと、んー?と至って普通の反応だった。…いや私が可笑しいのか?いやいや違う! 「降・り・ろ。」 「寒ぃんだよ」 「布団被れよ。」 「人肌がいいんだよ」 「私は布団がいいから退「なぁ…。」 「は?」 キックして布団に落とそうとしても、謎に抱き締められていて離れぬ奴。呼びかけられて、イラッとして顔をあげると思ったより近い距離に奈良さんがいた。……あ。この感じヤバい。はたけさんの時と、同じ雰囲気を感じた。…い、いや待て待て待て。こんな近しい場所でワンチャンしまくりは本当にヤバい。てか有り得ないからね。 「…それしたらはたけさんと一緒だからね」 「……そりゃ嫌だな」 「でしょ?止めて」 「んー…。じゃあチューは」 「は?ふざけんな」 「ふざけてねー…」 覆い被さってくる影は、漫画のように抵抗する私の手と共にベットに縫い付けられる。この状況にドキドキしている私はやはり頭が悪い。このままそうなってしまえば、また、あの人と同じ道を辿ってしまう。それだけはどうしたって避けたいのに、降ってくる彼を、避けるだけの理性がない。、 「……ん。、…やめて」 「…分かってる。けど…」 「…!」 分かってない、というかのように何度も何度も降ってくるソレ。差し込まれた温かいものは、私の舌を必要以上に追ってくる。でも結局絡まってしまって、欲に塗れてしまう。理性と本能が対立したって、いつも流されて同じ目を見る。でも今回だけは、どうしても避けたい。 「……これ以上、は」 「…ああ。…でも」 「…?」 「コレは、許せよ」 「…」 その先はしない、と釘を刺し合っても抑えきれぬ本能。ただ合わせているだけの唇が、どうしてもきもちいい。…いつの間にこんな女になってしまったのか、もう思い出せない。でも、これだけなら。…身体を合わせなければ、なんていう腐った境界線にひたすら安堵していた。 *** もう何分そうしていたのか、正直分からない。たぶん数十分には及んでいただろう。冷めきれぬ熱を帯びたまま、ふたり、ベットに横になっていた。足りないものを、言葉で埋めるかのように。 「…もう若くないんだからさぁ、奈良さん」 「いやお前もだろ」 「待って私まだ26ですけどー」 「俺だって28だわ。」 「…まぁ、結局そんな変わらないってことか。」 「…そうなるな」 ある意味一線を越えてしまったもので、もうあの映画を見ている距離感で何かを思うことはない。くっついて隣で寝ている今、もちろん鼓動はいつもより少し速いがそれ以上のことをしてしまったのだ。もう友達には戻れない。チラ見した携帯の時間がえげつなかったので、明日の仕事はもう死亡確定だと溜息をついた。 「…ねむたくないんですか」 「は?…眠ぃに決まってんだろ」 「じゃあ寝てよ」 「お前もな」 「「…」」 まだ完全に冷え切らない熱に、二人してモヤモヤしていることぐらい分かっている。明日の仕事はもうサボることは決定済みだし、先に寝てしまおうか…。と思ったが、脳内が赤信号のまま言っていた。このまま終わると、誰にでもこんなことをする女で終わってしまう、と。いやもうそう思われているだろうけど。弁解の余地は、まだある。 「…奈良さん」 「ん?」 「私…誰にでもこんなことしないんで」 「……」 ここで黙るのはぜひ勘弁してください。と心から思っている。なんか変な雰囲気になってしまったじゃないか。…とまた少し眠気が遠のく中、更にそれを加速するような言葉が飛んでくる。 「…返事は、もうちょっと待って欲しい」 「……は?」 返事????? え、何?今私告ったの?そんな返事に聞こえたけど今?え??…と内心かなりパニックになるも、出した言葉をそう受け取られてしまったのなら、もう仕方ない。反論する気力もなく、覚めた眠気はどこへやら。おかしなことになってんなぁ、と思いながら瞼を閉じた午前4時半過ぎのことである。 ← |