なんだかすごく疲れていた。仕事が、というのもあるが些細なイライラだったりバイトの連勤疲れが重なって、今日は本当に何もしたくない。そうシカマルくんにLINEで愚痴を溢していた今日。そんな日に限って忙しい(バイト)!そんな中、げっそりしながら水分休憩で事務所に戻る。こっそり携帯をチェックすると、彼からの通知があった。

【今日、何か食いてえもんある?】

……どれだけ疲れていても嬉しいんだよなぁ。むしろ、疲れているからこそ、というのもある。しかもこのLINEはご飯を作っていてくれるということ。あー…神かな…。ありがとー…。と思いながら、魚の絵文字を送ってバイトに戻った。途切れない客の列だって、あの連絡のおかげでちょっとは頑張ろうと思えた。だってあの人だって今日は仕事のはずだ。

「ただいまー…。」
「おかえり。生きてっか、?」
「あー…。」

玄関を開けると、キッチンで鍋に火を掛けている彼が近寄ってきてくれる。おかえりって言われるのこんなに嬉しかったっけ…。ともう全てに感動。しかも良い匂いを漂わせていて、今日は鯖の味噌煮込みだぞ、と言われて思わず抱き付いた。

「どーした。そんな疲れたのか?」
「ええ…。もう…。そして温かいご飯とお兄さんが出迎えてくれる今…、愛…。」
「相当やられてんな」

そう笑いながら、頭を撫でてくれる手はやさしい。…絶対私よりシカマルくんの方が仕事大変だし。今日だって休みじゃないのに私に気遣ってご飯作ってくれたり。部屋に置かれていたサラダと味噌汁が見えた時にはマジで嫁に欲しいと思った。

「養うから嫁に来ないか…」
「そりゃありがてえな。魚持ってくから向こう行っててくれ」
「あい…。」

リビングに行くと豚しゃぶの乗ったサラダと、豚汁だった。もう最高なのかな?+魚って…何この組み合わせ。健康志向最強だし美味しいやつだしもう。と感動していると鯖の味噌煮がやってきた。どこぞの定食ですか…?という心臓の声はダダ漏れしていたようだ。

「この前の健康診断悪かったって言ってたからよ」
「……あなたは……っ…!!」
「まァ、この豚汁は具材セット買ったけどな」
「いやもうそんなのどうでもよくて…!それ覚えててくれたのがもうっ…」

もうマジで嬉しくて泣きそうなレベルだった。あー私この人のこと好きだー。めっちゃ好きだー…。食べた豚汁は少ししょっぱくて二人して笑いながら食べた。疲れた身体にはちょうどよかったりして、なんだか未来が見えた気がした。ずっと一緒に居れられたら、最高だろうなぁ。

0時すぎになるともう眠気がMAXなシカマルくんと、同じベットに潜り込む。結構ドライに見える彼だけど、そういう行為はなかなかお好きらしい。週の半分ぐらいはそんな雰囲気になっていた。飽きないのか?と思う心を余所に、今日も乗っかかってくるお兄さん。すげーな…。

「名前」
「んー、?」
「…すっげぇ、好き。」

その返事を言わせる間もなく重なったソレは、恥ずかしいから何も言うなと言われたようなものだった。はーこの人可愛すぎる。なんなんだ、…なんなんだこいつ!もう絞られる心臓が悲鳴をあげている。疲れていたけどもう全然オッケーです…!と彼の首に腕を回した。そんな0時21分のこと。

***

それからというもの。シカマルくんが職場で飲みに行くと聞いていて、その途中電話が掛かってきて。名前に会いたくなったから行ってもいいか、なんて殺し文句を投げられたり。私が好きだと言っていたケーキ屋さんのシュークリームを突然買ってきてくれたり。コンビニのスイーツを買い占めて二人で悶絶しながら食べたり。そんな楽しい日々が続いたある日。

「なんか電話するの珍しくて緊張する」
≪なんでだよ≫
「アハハ!分かんないけど」
≪でもまぁ会ってる方が多いもんな≫
「でしょ?だから新鮮」

本業後、バイトも無くてシカマルくんは実家に行っていた。LINEめんどくせぇって電話が掛かってきて、爆笑しながらそんな会話。これはこれで、なんだか楽しいな。なんて色々喋ったりして20分ぐらい経っただろうか。なんでその話になったのか、私にも分からない。やっと聞ける!と思ったタイミングがあったのかもしれない。

「そういえばさ、あの(待たされた)2ヵ月ぐらいってなんでだったの?」
≪……あー…。…≫
「言いたくなかったらいいけど」
≪…いや。いつか名前にちゃんと言わねぇとって思ってたから≫
「そうなの?じゃあどうぞどうぞ」
≪…んー……。あの、さ≫

軽い気持ちだった。正直、他に女が居るとかは口先だけで本当だとは思ってなかったし。たぶん元カノ(サクラ)のことを引きずっていて、やっとそれが断ち切れたから、だとかそんなものだと。心のどこかでそう、信じていたのだ。シカマルくんのことを。だから、

≪……あの時、俺… …。
…風祭と、付き合ってた……。≫

だから、それは−−−……
飲み込めない言葉を一生懸命かみ砕くように、ぎこちなく乾いた笑いしか出て来なかった。


「…………はっ?」