あの時、俺、風祭と付き合ってた?

何 言ってんの?


あの2ヶ月は、ほぼ私と一緒に居たくせに他の子と付き合ってただって?しかもモエギちゃんと?あの子みたいなのがタイプでしょって聞いたらさらっと流してたくせに。平行されてた?……てか私浮気相手だったってこと?

≪…話、しに行ってもいいか≫
「………ハハ、」

あははは、ハハハ、しか、もう声にならない。震えた声が知らぬ間に涙を誘っていて、心臓はやさしく圧迫されて破裂してる。さっきまで楽しかった電話なのに、もう聞こえてくる声が不快で仕方ない。会うなんてもっての外だ。乾いた笑みで、何言ってんの?と考えるよりも先に声になって漏れた。

「…悪いけど会いたくない。切る」
≪名前……頼む。せめて話を「切らせて」
≪待っ

ブチン、と切った電話が精いっぱいだった。自然と溢れる涙に、声を出さずにはいられなかった。泣き喚くなんて格好悪いとかもう考えるヒマなんてなかった。何コレ、なんなのこれ。訳わかんない。こんなのありえない。…ずっと、二股して、都合の良い女にされてたってこと。他の女の可能性、なんて言ってたけれど無いと思っていた。……信じて、いたから。その分の反動が、こんなにもしんどいなんて。

「……っ…キバ〜…。、」

泣きながら縋ったのは、もうこの人しかいなかった。電話を12コールぐらい掛けて、やっと出た彼にまた涙が出た。ごめんメシ来てて、と言われるもそれでも出てくれたことが温かくて。潰れた心臓がやさしくなってくれた。私の異変に、すぐ聞く体制になってくれて一連を話した。泣きすぎてちゃんと伝わったか不安だったけれど。

≪……なんつーか……。ゴメン、掛ける言葉ねェわ……。≫
「〜〜〜だよね、酷すぎだよね〜〜…。最低すぎ」
≪奈良さんて…いや…、そんな人だったのか……。≫
「みたいです…人は見掛けによらないってことですよ…。」
≪いやァ……。…名前どうすんの、?≫
「…」

正直頭が真っ白で、これからどうしようかなんて全然考えてなかった。重要なことも、まだ聞けていない。とりあえず話を聞いてから考える、と答えるとなぜか頭が冷静になってくる。まだまだ泣けてくると思うけれど、それよりも今、腹が立ってる。

「…キバ、外なのに話聞いてくれてありがとう」
≪いや、俺は全然いいけどよ≫
「私…奈良に電話して聞くわ。全部」
≪おぉ…。そうだな。それがいい。またなんかあったら電話して来いな≫
「ありがとう弟よ、愛してる」

衝撃に耐え切れなかった涙が流れきったようだ。ふつふつと湧き上がる苛立ちを抑えながら、奴に電話を掛ける。2コールで出た彼に、先に言葉を投げかけた。我ながら威圧的な言葉で。

「今から聞くことに嘘偽りなく話して。それで私が言うことに全てイエスで答えて」
≪……分かった≫

嫌味な女が降臨してきている。それを拒むことはない。むしろ全力で貶してあげたいぐらいだ。武者震いなのか携帯を持つ手が震えてしまう。…分かってる。本当はこの先を聞くのが怖いってことくらい。

「いつから?」
≪……元々、2月ぐらいから二人で遊んでたりはしてて≫
「で?」
≪4月の…中頃、……俺から言って、付き合った≫
「……はぁ?」

中頃って…もう私と一緒に居たじゃん。一緒にご飯食べて一緒に寝てをしてたあの頃?……ッハハもう笑いしか出てこない!笑えるのに、涙も同じく流れてくるから腹が立つのだ。奴を好きだと思う気持ちが痛んで悲しんでいることに、引くぐらい呆れてる。こんな、こんな奴に。

「……、私と、もう一緒に居た頃に、あの子にお前から告って付き合ったってこと」
≪………、…はい≫
「アハハハ!そっかそっか…私、友達・・だもんねぇ?そのとき」
≪……ゴメン。でも、風祭とはそこから連絡の返事がなくて、全然会ってもないし連絡もしてなくて≫
「あぁ…。そっちが無理だったからコッチってことね」
≪そう思われても仕方ないかもしんねぇけど、違うくて!…名前がちゃんと好きだって思ったから≫
「悪いけど何言われてもへぇぐらいにしか思えないわ」
≪……会って、話がしたい「お前の顔なんて見たくもないわ」

もう呆れてものも言えないってこれだ。最後の一言こそ、本音がさらっと理性を超えていって笑った。涙が乾くほど腹立たしい気持ちが沸いてくる。こいつ私のことなんだと思ってたんだろうか?メシ作ってくれる家付きの女ってとこか。クソみたいだ。

「明日、うちにある荷物取りに来て。全部」
≪………分かった≫

お前の物があるだけで腹が立って仕方ない。部屋の隅に全てまとめたソレを見ると、苛立ちと悲しさが相まって複雑な気持ちだ。あれだけ好きだと思っていたのに。こうも変わってしまうのか。電話を切るといつも名残惜しくて早く声が聞きたいとか思っていたあの頃って、どの頃だったっけ。