「新年会?」

出勤中、うちはさんに差し出された紙を見て、あぁもうその時期か…とぼんやり思った。この店がオープンしてから在籍する私にとって4回目のそれは、規模が縮小して近場の店を貸し切ってのものになっていた。
うちの店だけでなく、他の店舗やお得意様、テナントの皆様も集合する年イチのそれ。私的にとっては正直、良いご飯がタダで食べられるぐらいにしか思っていなかった。

「出席でいいな?」
「ワオ主導権なしタイプ★」
「春野にも聞いておいてくれ」
「それはうちはさんから聞いた方が出席率上がると思います。」
「…会ったら聞いておく」

どうせ私と一緒に行くけどな!!と思いながら(ニヤついている)、売り場に出た。来年の1月中頃の出欠がもう来るのかと思いながらも、いやもう1ヵ月もないことに身震いがした。もう年越してしまうぞ。恐怖、2020年…。

***

そしてあっという間に年を越し。もちろんサクラと一緒に行くことになり、二人で会場に到着。お得意先や業者もたくさん居るので、社員は皆スーツで爆イケ放題(特にうちはさんの姿にサクラが溶けていたことが爆笑)だった。でも確かにあれはイケメンすぎる。

「あ!はたけさ…」
「ん?」
「………(あ然)」

そして振り向いたら瞬殺級のイケメンが居て(スーツ5割増し)、泡を食べました。……ってぐらいマジでやばくてもう何コレ現実最高何コレってなりました。そういうのを隠さず告げると、はたけさんはいつもハイハイって流す。それでもいいです眼福…。

なんてヨダレを垂らしていたら、円卓なのに私とサクラしかいない席に目をやる彼。三日月のように微笑んだ細い目が、心臓の裏側を響かせた。

「ここ、空いてる?」
「あ、はい誰もいないんでぜひ」
「よかった。俺の席、野郎ばっかりで食べ物なくて」

新年会なんぞ、初めの挨拶さえ終わればこちらのもので。わいわいヤーヤーなって1時間、サクラと落ち着いていた席がラッキー席だったようだ。ご飯が残りまくっていたおかげで釣れたはたけさんよ、嬉しすぎる…!隣に腰掛けた彼はスーツの魔法増し増しで吐きそうでした。

「そういえばくじ引き大会あるらしいよ」
「あ、受付の時もらったこの紙のことですか?」
「そ。現金がいいねぇ」
「当たったらくださいよ〜〜」
「ハハハ。いいよ。」

やった!と喜ぶ私がもう可愛いぐらい今が楽しい。円卓なのではたけさんとサクラに挟まれた席なので、独り占めし放題ハッピーライフです…。足を組んで右手を私の椅子に置いている感じとか、なんか、肩抱かれてないけど抱かれてる感がすごくて嬉しい誰か後ろから写真撮ってくださいマジで。

結果、くじ引き大会ではたけさんは3千円当たっていた。3万が良かった、と笑いながらそれをさらっとくれたのでこれはもう使わずに飾ろうと思う。そしてお開きになって、各々で二次会行くか行かないやらの会話が飛び交っていた。私とサクラはいつも行かない組なので、こっそり帰ろうと思っていたのだけれど。

「おーい。二次会、行くでしょ?」

ぽん。と肩に手が回ってきだと思えばまさかのはたけさん…!スーツ色気爆発お兄さまに誘われて、断れる奴がはたしているのだろうか。そんなもの二つ返事でした。誰かお願いします、今この瞬間写真撮ってください…!!

***

「「「カンパーイ」」」

二次会はいつもうちの店舗が行き着けの店だった。私とサクラ、そしてはたけさんは謎に3人で先にタクシーにて到着していた。さらっとお金を出してくれるとこ、もうイケメンの極みです。ほろ酔いだし先に3人で乾杯して、みんなが来るまで恋愛トークでもしようかとなる。私が待ちに待っていた話ではないか!!

「とりあえずはたけさん、今彼女って…」
「あーもう長いこといないね」
「えっそうなんですか!?不思議すぎ…」
「なんでよ」

ククク、と小さく笑うはたけさんにもう何度目ましてのキュンを頂く。隣でサクラがニヤニヤしているので、肘ドンしながら。その後、お前も同調しろよ分かってるなアァ?!と視線で伝えながら微笑んだら、サクラは一瞬で営業スマイルに戻っていた(さすが)。

「でもはたけさんって絶対モテますよね?名前もいつも格好良いって言ってますし」
「いやそんなことないよ。もうおじさんだしね」
「こんなイケメンがおじさんだったら世の中の男全員クソジジイです…!」
「クソジジイは言い過ぎだって」

と笑ってくれるはたけさんにいや本当です。と真顔で言うと真っ先にサクラが爆笑したタイミングで、他の従業員がやってきた。その中にまさかのうちはさんも居たので、サクラは断りの一言もなくそちらの席に移った。さすがです…。

「春野さんってうちはさんのこと大好きなんだね…。」
「すごい行動力でしょ。一直線」
「もうあそこまでいくと逆に清々しいよね。」
「はい。でもうちはさんは8年になる彼女がいるんで…」
「え!そうなんだ。じゃあ叶わぬ身なわけね」
「まあそういうことになります…。」
本人春野さんは知ってるの?」
「まあ…。でも、8年も付き合ってるのに結婚しないなら私にもチャンスが!って言ってました…」
「アハハ。言いそう。」

実際のところ、難しい案件だとは正直思うけどなぁ。と心の中で呟いて、そんな話をはたけさんと二人でしている今にトキめいていた。あー、一生続けばいいなー。もう20人くらい居る今、青果さんは彼だけで。もうある意味独り占め状況。今日、絶対連絡先を聞こうと強く思った。