失恋?…よし。とりあえず、髪でも切るか。精神で15pいってやった。完全なるショートに大変身して、バイト先ではどよめきを頂いた。すっきりしたので後悔はなし。逆にはたけさんに見て欲しいぐらいだ。ザ・昭和をやり遂げたぞ私は!!

「ショートかわいい?ねえ似合う?ねえ?」
「あーはいはい可愛い似合ってるところで歓送迎会行くよね?」
「扱いが雑…。行くよぉ…。」

バイト中のサクラといえばまぁ、いつものことなので気にしていない。しかしその話は知らなかったので聞けば、私がヤーヤーやってる中、事務所の黒板に歓送迎会出欠表とやらが貼られていたらしい。場所は行きつけの飲み屋で、時間は21時から。たしかにこの3月末で辞める子は多いし(特に学生)、社員さんも他の店舗に転勤だとかあったし、この時期の開催なるほどなぁと思った。

……けど、まさかとは思うけどはたけさん来ないよね?うちの会社だけだよね?髪切ったとてやっぱり飲みの場で会うのはまだちょっとキツイ気がする。

「ここだけの歓送迎会だから。大丈夫よ」
「…脳内読んだね?」
「違うわ見え見えなの。顔に書いてる」
「だってぇ……。」

今日はラストなので、掃除をしているサクラの隣でゴミを集めている私。そのままゴミ袋に突っ込みそうだ。今日もはたけさんとは会わなかったので、なんとなくほっとしているけれど。いつか必ず顔を合わせることも知ってる。時計を見上げると18時半すぎで、もう今日は大丈夫だけれど。、

「……あ。」
「え?」
「タイミングの女神なんじゃない、アンタ」
「は…?」

サクラが遠くを見てニヤリとしていたので、その視線の先を追うと……青果の作業場の奥で、背の高い銀髪が目に入った。……いやいやいや嘘ですかこんな時間まで居ることないのに。そういうタイミング、マジで不必要です…。と思うももう終わりなのだろう、こちらに向かって歩いてくる。…に、逃げたい。後退る身体を、逆に抑えてくる手を睨む。

「逃げたって結局会うんだから。今なら私も居るし頑張んなさい」
「………はい…。」

全てあなたの言うとおり過ぎて。前から歩いてきたはたけさんを見た。もちろん目が合って、一瞬の気まずさをかみ殺した。いつもの愛想モンスターをここで発揮しないでいつ発揮すんだ。

「おはようございます。こんな時間まで珍し」
「今日は忙しかったねー…。早く帰らないと」
「明日も(仕事)?」
「3時半に起きます。」
「やっば。早く帰って。」

笑いながら去って行ったはたけさんに、普通に接した私を褒め殺してほしい。あの日から砕けたらしい敬語に、やっぱり間違ったことは幻でないと身体が言っていた。そして互いに大人なので、対応もそれなりだ。けれど心臓は子どもなので苦しいと足掻いているが。でも、いつかきっとこんな気持ちだって忘れる。友達に戻れるはずだ。

「よくやったじゃん。偉い偉い」
「…我ながら頑張った方だと思う…。」
「なんか奢ってあげるから泣くなー」
「サクラ様しか勝たん…。」
「今時ねそれ」

とりあえず、浴びるほどの酒をください。と心から思った。…でも歓送迎会は来週だったので、その時便乗して飲んでやろうと思っていた。

***

「…えっ?なんで奈良さん?」

歓送迎会当日。うちの会社だけのソレと思って居酒屋に行けば、社員が固まる席にしれっと居座る彼に目がいった。隣が空いていたので腰を下ろすと、少し顔が赤い。……もう飲んでるな。

「…帰る前に誘われてよ。名字ちゃんも居るからおいでよって言われたのに、お前いねぇし」
「……今居ますけど……?」
「違うわ一軒はしごして来てんだよ。お前んとこの社員と、バイトと、俺と」

視線を追うと、ややこしい社員と、奈良さんと仲の良いうちのバイトの男の子。その3人で飲むのはちょっと…てかしんどいかもしれない。そもそも誘われてないけど行かなくてよかった…。と思うも、きっとバイトの男の子にあの社員と二人で飲むのは嫌だから奈良さん助けてって言われたんだろうな。安易に想像がつく。

「…それ私誘われてないですけど…」
「いやいやいや誘ったっつってたぞ」
「なんだろいつも適当に話してるからかな…」
「結構ヘビーな会だったぞ…。まぁ来なくて正解だ。で、次ここって言われて連れて来られたわけ」
「なるほど…」
「俺だけ会社違うの浮いてねえ…?」
「大丈夫奈良さんうちの皆と仲良いし余裕ですって」
「そういう問題か…」

ちょっと出来上がってる奈良さんは、いつもより口数が多い。ちょっと可愛いな。と思いながら酒を注ぐ。あんまり話すことなかったし、今日は面白くなりそうだ。あ、そういえば一緒にきたサクラは…と隣を見ても居なかった。なら……と探した彼の隣に居たので、さすがだと思った。うちはさんある所に、奴アリ。これで奈良さんと気兼ねなく話せる。乾杯が終わったのでご飯をよそいながら、とりあえず他愛もない話を振りかける。

「奈良さんってもう(ここで働いて)何年ですか?」
「んー…2年弱ぐらいか」
「結構ですね。けど、今まであんまり話すことなかったの不思議じゃないですか?」
「そりゃ名字が飲み会にあんま来ねぇからだろ。」
「んー…確かに参加率微妙かも」
「なのに別会社の俺の方がよく居るっていうな、」
「間違いない。それなかなかですよ」

笑いながらも、ちょっと驚いている。確かにうちのバイトはよく飲みに行ってるというのは聞いてたけど、まさか奈良さんも居たなんて。変なメンツ。でも無しではないか…。目の前のポテトをつまんでみる。

「春野も結構居るし、たまには来いよ」
「…え、サクラが?」
「ああ。てか大体いるぞ」
「へー…。」

それこそ目が点。いつも一緒だと勝手に思っていたから。まあ、バイトの子は年下の学生が多いので、その辺とご飯行くのはあんまり…。っていう私を知ってだろうけど。でもなんか、ちょっと寂しかったり。誘われても行かないけど…と思っていると、謎にLINEを聞かれる。奈良さんと連絡取ることってあるのか…?と思いつつも、聞かれたことがなんだか嬉しかったりしていた。