はたけさんと後輩と3人で飲んだ後。後輩を送れと彼に言ったけど、なんだかんだ私を送ってくれた。やべぇと思ったけど、やっぱり家に入りたがってきた。…生ゴミは健在である。腰に回ってくる手は厭らしさ全開だったが、顔が良いので無碍にできない…!が、断る一択なので断固拒否。合意の下でしかしないモットーらしい彼なので、帰っていく後ろ姿に頷いた。…だが。

事件は次の日の夜、唐突に起こるのである。

「キバ?どうした」
≪あー名前、…悪い。謝んねェといけねぇことあって≫
「?」

バイトもないのでのんびりテレビを見ていた夜のこと。着信音の主はキバだった。少し歯切れの悪い言葉たちに、一抹の不安を覚える。何かやらかしたのだろうか…?仕事か?最近出来たらしい彼女か?と弟のことを真面目に心配する姉だった。……その時までは。

≪名前の…奈良さんの話、酷すぎて……。社員に言った≫
「………は?」
≪でもあの人すっげぇ口堅いって俺知ってるし大丈夫だから!≫

バカ、なの?が呆れて口から漏れる。その社員は昔から有名だが、歩く情報垂れ流しモンスターである。いや、なに人の話勝手に喋ってくれちゃってんの…?しかも相手クソみたいな奴だし、しかも社員だし意味分かんなくない。あの時の怒りが沸々と降りてきた音が、した。

「……キバさぁ、あの社員、くっそ口軽いけど」
≪え?んなわけねぇって!一緒に働いてて俺「いや入ってきて数ヶ月のアンタに何が分かんの?私2年一緒に働いてるけど」
≪……≫
「てか何、人の話職場の社員にしてくれてんの?私の立場どうなんの?行きにくくなると思わなかった?」
≪……ごめん。でも酷すぎて、≫
「アンタの話ならいいよね。でもそれ、私の話じゃん。私の意思じゃない何勝手に話してんの?」
≪……悪い≫
「奈良さんだってそこで働いてんだから、しかも社員だよ?あの人の立場とか考えなかったの」
≪…≫
「…もしかしてサクラの名前とか出して言ったりしてないよね?」
≪……それも言った。モエギも、≫
「アンタ頭悪いんじゃないの?急に腐ったの?…何してくれてんの?みんな傷付くだけじゃん」
≪……悪い、そこまで考えてきれてなくて≫
「お前に話した私がバカだったわ。死ぬ気であの社員の口止めしてこいよ分かってんな?」
≪…はい。ごめんなさい≫

バカばっかかここは!とブチッと電話を切った。あーーー、これでこの話店で回るな…。私居づらっ。だし、サクラがあんなになって必死に隠してた奈良との話も…。あぁあいつ何してくれてんだ。飼い犬に手噛まれた気分。言葉古いけどマジ絶好。闇に葬られろ。そんな苛々MAXでその日が終わるのがイヤで、仲直りしつつあるシカマルくんを呼んだ。

「急に呼んでごめん。明日仕事だよね?」
「あぁ。泊まってってもいいか?」
「もちのろんです!」

家にすぐ来てくれたこの人は、やっぱり嫌いになりきれない(てか好きだ)。玄関でハグ散らかして、癒やしを吸収。キバの苛々よ、飛んでいけ…。もはや抱き付いて離れない私を抱っこしたまま、部屋に移動してくれるシカマルくん。そのままベッドに押し倒して始まってもいいぞ!なんて邪な脳みそは未だに健在。

「なんかあったのか?」
「ん?いーや何でも。ただ癒やされたくて」
「なんだそれ。俺で癒やされんのかよ、」
「ええもちろん。マイナスイオン出てるー」
「やべぇな、俺」

ククク、と笑ってソファに降ろしてくれる君が好きだ。唇を突き出してお待ちかねすれば、小さく笑って塞いでくれる。ハムハムしてくるので、し返せばそのまま押し倒されて妄想が現実化している。見上げるとちょっとオス感のある彼が色の付いた目で私を見下ろしていた。

「…誘ってんのか」
「えぇ?まさか」
「嘘付け、」
「へへへ」

服に少し冷たい手が入ってきて、身体が震える。…でもあれ?首にチューとかなかったな。今回だけ飛ばされたのだろうか。まあいいや。この苛々を上書きしてくれるのなら、それで。なんて思って30分後。サクッと終わってしまって少しつまらない私だったが、まぁ明日互いに仕事だしな。と思ってお布団に二人して入った。

「あ、名前」
「なーに」

ちょっと甘い雰囲気が漂っていると思っていたその時。まさかの裏切るような言葉が飛んできて、私は軽く一回死んだのである。

「今週末、サクラとメシ行ってきてもいいか?」
「…………はい?」

今週末、
サクラと、
メシ行ってきても、イイカ?

………はい??

「……なんで?」
「いや、名前と付き合う前から約束してて。風祭と別れたってのあいつに言ったら、見かねて誘ってくれたんだと思う」

いやだからってこのタイミングで行きますか?あなたが二股事件を告白したの1週間前ですけど覚えてますか??はっ?…と混乱気味の私に、イヤだったらそう言ってくれたらいいと言う。…いや、嫌に決まってるじゃんねこのタイミングでさ!?反省してんのかなこいつ。あ〜〜〜今日何なの!?苛々させられる日なの!?

「…勝手にすれば?」
「……嫌じゃねぇんだな?」
「お好きにどうぞ。」

やっぱりこいつ、ダメだわ。