≪ハハハ!お前の彼氏ヤバイね、このタイミングで元カノとご飯なんて≫ 「でしょ!?このタイミング本当ないよね!?」 ≪あり得ないね。反省もクソもないな≫ 「だよね!?あいつマジで〜〜〜」 ≪悪いことは言わないから、早く別れた方がいいんじゃない?≫ 「ごもっともでーす」 なんて携帯片手にソファで項垂れて喋るのが楽しい。電話相手はあのご飯から地味に仲良し、はたけさん。もう色々蹴飛ばして相談相手兼友達になっている。青果の店長だけれど別会社だし、上司ではないし…?なんていうノリで敬語なんて昔に死んだ。まぁ、まだ相手がシカマルくんであることは、言っていないが。 ≪まァ、話はいくらでも聞くけどさ≫ 「ありがとうはたけさん。ラブ」 ≪でも飲みに行こうって誘わないでよ≫ 「え?なんでよ行こうよ」 ≪二人だと俺の下半身が黙ってな「ねえ本当クソなの?」 ハハハと笑うはたけさんは、今現在も歩く生ゴミ継続中である。ここまで一貫していると逆に面白いが。ただ私はもう君とはしたくないね本当に。セフレにするには、もったいない。せっかく男友達になれそうなのに(もう一回間違っているので微妙かもだが)。 「でも普通に飲みに行きたいんだけど」 ≪いやぁ……。俺名前相手にそういう気持ちにならないの、無理なんだって≫ 「女として見ないで人間として見て!!」 ≪ごめんね無理かな…≫ 「チッ…」 ≪舌打ちしないの≫ だから誘わないでね。と言われて、まぁ今は誘いはしないけれど。一応シカマルくんという彼氏がいるし。はたけさんは付き合っている最中に他の女と二人でご飯とかありえない派だし、断固浮気反対派だからな。だから誘うなってことなんだと思う。だから電話なんだろうなぁ。でも私の相談なんて正直答えなんてない。愚痴りたいだけだ。それをなんだかんだと聞いてくれるはたけさんはやっぱり優しい(下半身抜きで)。 結局キバのイライラを癒やして貰おうとシカマルくんを呼んだが、結果余計に腹立って終わってしまった昨日。今日は息抜き出来てよかった、と思いながら電話を切る。 「んー……。」 二股、というか、私は浮気相手だったわけだけれど。正直信じられていないのが事実。だから他人事のように思っているし、めちゃくちゃ傷付いたけれど……ってところで。どうしてもシカマルくんを信じたいのだろう私は馬鹿だ。旗から見たら、すぐ別れた方が良い相手だと思うのに。 あの行ってきますのチューも、身体を思って作ってくれていたご飯も、誕生日のケーキも…全部ウソだとは思えない。思いたくない、の間違いかもしれないが。だからシカマルくんよ、サクラとのご飯はやっぱり止めたって言ってくれ…!今回の件もあるし、反省の意を…!そしたらまだ、救われるのに。と願いつつその日は眠った。 *** ……そしてシカマルくんと元カノ(サクラ)とのご飯の約束前日。 「名字…、今日はやけに……」 「はい?なんですかうちはさん」 「いや……。」 何でもない、と言って売り場に戻る店長を背に、バイト中である今もイライラが抑え切れていないことに気付いた。…っだってそうだろ!!キャンセルしました報告死ぬほど待ってたのに前日になっても何もありませんが!!?!?あいつマジで…マジでご飯行く気か正気か!?!こめかみに怒りマークが散乱している。 今だって水分休憩で事務所に戻ってきて、携帯を覗いても連絡なし。で、余計に腹が立っているわけだ。……こんなことも私から言わなきゃいけないのか?自分で考えて行動できないのか?あ? 「ちょっとお手洗い行ってきま〜す…」 携帯片手に、誰もいない事務所にそう呟いてトイレに潜る。そこから怒濤の長文LINEだ。もうレジ打ち中永遠と考えていた文を真顔で打った。怒ってなどいないよ、ただ、そういう思考にならなかった君がショックなんだよ、っていう文章。それを送って、すぐにレジに戻った。バイトが終わる頃には返事が来ているだろう。 「………」 そして21時すぎ。退勤を押して、ロッカーにある携帯を覗く。奴からのLINEは……来ている。しかも3件。自然ときつくなる視線を抑え、服を着替えた。帰り道、それを覗くと予想通りの返信が来ていた。 --- 【2020年6月22日(月)】 奈良さん 本当に悪かった。 ---そこまで気が回りませんでした。20:11 名前の言うことはごもっともで 俺が全部悪いです。20:13 明日のご飯は断りました。 名前を傷付けてごめん。20:17 ま、だろうな。この返信以外ないわな。これ私が言うより先に言っててくれたらなぁ。…ま、残念ながら無理だったけど。溜息を付きながら家の扉を開ける。…でもまだ腹が立って仕方ないらしい、電話を掛けていた。恐ろしや、私の右手。 「…出ないんかい。」 それは繋がることなく終わった。チッと舌打ちしながら携帯をベットに投げると、すぐに着信音が鳴った。渋々覗きに行くと奴からで、すぐ折り返してくんならさっき出ろよ!と思えるぐらい今日はイライラしているらしい。 「…はい」 ≪ごめん今メシ来てて、すぐ出れねぇで悪い≫ 「そうなんだ。じゃあ別に今じゃ無くていいし切るわ」 ≪いやいい!むしろ電話させてくれ言いたいことがある≫ 「……何?」 ベットに座ると、飲み屋のあの五月蠅さがだんだん無くなっていく。場所を移動したんだろう。まぁ、内容なんて聞いても聞かなくてもどっちでもいいのだが。あー、やっぱり相当腹立ってるみたいだ、私。自分のことばかり優先して、私の気持ちなんて考えずに行動しようとしていたあいつに。やっぱり早めに別れておくべきか。 ≪俺……、今何言っても仕方ねぇかもしんねぇけど、本当に名前が好きで≫ 「…」 ≪今回のことだって、ちゃんと名前のこと考えて行動すれば分かったはずなのに、…悪い本当に≫ 「…で?」 ≪本当に、別れたくないんだ。…名前を最後の人にしたいと思ってる≫ 「……」 最後の人、ねぇ…。結婚を考えている、の遠回しのセリフに心が動かなかったと言えば嘘になる。でも、今言えばいうほどに薄っぺらくなる。それを分かっているのだろうか、彼は。 「もういいよ。ただ、悲しかっただけだから」 ≪………悪い。本当に≫ 一番効くであろう刃のようなソレを投げ捨てて、電話を切った。…なんで私、こんな奴が良いんだろうか。 ← |