「可哀想だね」「そうだね」
ふつう、男女の双子は二卵性らしい。本来ひとつになるはずだった受精卵がふたつに別れて産まれるのが一卵性の双子で、二卵性は同じときに胎の中に宿った兄弟。だから、見分けをつけるのが難しい一卵性の双子と違って、二卵性は瓜二つまでとはいかないのが一般的、らしい。正確なことも詳しいことも知らないけれど、私と綴を見るなり皇くんがそのようなことを言っていたから、そうなんだろうと思う。一般論だとか、生物学的にどうとか、細胞が、DNAが、遺伝子が、どうのこうのという話は私には難しくてよくわからないし、どうだっていいとすら思う。私と綴が双子であることが変わることなんてあり得ないのだし、一卵性とか二卵性とか、どっちだったとしても今更私と綴が変わるわけじゃない。
「でも、同一であろうとする君たちからすると、度外視することのできない問題じゃないかい?」
「どうして?」
「どうして?だって、一卵性であるのなら君たちは一つだけれど、二卵性だったとしたら全く別の個体になるわけだろう?」
「……もっとわかりやすく言って」
廊下の窓から見下ろす裏庭には、私とよく似た顔の男の子と、私ではない女の子が並んで座っている。二人に顔を向けたまま視線だけを皇くんに向けると、彼も二人を見ているようだった。弧を描いた唇に、細められた瞳。楽しそうに、愉しそうに、愉快そうに笑う皇くんは、私の視線に気が付くと此方を見て、ますます笑みを深めた。
「これこそが、君たちが別個体であることの証明で、紛れもない事実だよ」
隣り合って座るだけの二人が何を話しているのかなんて、私のところまでは聞こえない。綴も倉子ちゃんも、表情の変化が乏しいから想像することすら難しい。何より、話しているのかだって、私にはわからない。何も、わからないし、知ることはない。
私と綴は双子の兄弟で、産まれたときから当たり前にふたつでひとつだった。女と男だったけど、顔も、体格も、声も、動作も、気味が悪いくらい同じだと言われていたし、今だって、そうあるはずだ。
だけど、綴は私ではないし、私も綴ではない。双子だって、別の人間で、ひとつになんてなれやしない。当たり前で、ふつうで、誰もが知っていること。
それでも、ひとつであること以外、私は何も知らないのだ。私と違っていく綴と違って、私はそうするだけの方法を、知らない。
「可哀想だね」
笑いながら告げられた言葉に、私は「そうだね」だなんて、他人事みたいに返した。 ふつう、男女の双子は二卵性らしい。本来ひとつになるはずだった受精卵がふたつに別れて産まれるのが一卵性の双子で、二卵性は同じときに胎の中に宿った兄弟。だから、見分けをつけるのが難しい一卵性の双子と違って、二卵性は瓜二つまでとはいかないのが一般的、らしい。正確なことも詳しいことも知らないけれど、私と綴を見るなり皇くんがそのようなことを言っていたから、そうなんだろうと思う。一般論だとか、生物学的にどうとか、細胞が、DNAが、遺伝子が、どうのこうのという話は私には難しくてよくわからないし、どうだっていいとすら思う。私と綴が双子であることが変わることなんてあり得ないのだし、一卵性とか二卵性とか、どっちだったとしても今更私と綴が変わるわけじゃない。
「でも、同一であろうとする君たちからすると、度外視することのできない問題じゃないかい?」
「どうして?」
「どうして?だって、一卵性であるのなら君たちは一つだけれど、二卵性だったとしたら全く別の個体になるわけだろう?」
「……もっとわかりやすく言って」
廊下の窓から見下ろす裏庭には、私とよく似た顔の男の子と、私ではない女の子が並んで座っている。二人に顔を向けたまま視線だけを皇くんに向けると、彼も二人を見ているようだった。弧を描いた唇に、細められた瞳。楽しそうに、愉しそうに、愉快そうに笑う皇くんは、私の視線に気が付くと此方を見て、ますます笑みを深めた。
「これこそが、君たちが別個体であることの証明で、紛れもない事実だよ」
隣り合って座るだけの二人が何を話しているのかなんて、私のところまでは聞こえない。綴も倉子ちゃんも、表情の変化が乏しいから想像することすら難しい。何より、話しているのかだって、私にはわからない。何も、わからないし、知ることはない。
私と綴は双子の兄弟で、産まれたときから当たり前にふたつでひとつだった。女と男だったけど、顔も、体格も、声も、動作も、気味が悪いくらい同じだと言われていたし、今だって、そうあるはずだ。
だけど、綴は私ではないし、私も綴ではない。双子だって、別の人間で、ひとつになんてなれやしない。当たり前で、ふつうで、誰もが知っていること。
それでも、ひとつであること以外、私は何も知らないのだ。私と違っていく綴と違って、私はそうするだけの方法を、知らない。
「可哀想だね」
笑いながら告げられた言葉に、私は「そうだね」だなんて、他人事みたいに返した。
back