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 星詠みの力というのは、一種の超能力である。
 人智の及ばない、人の理では解き明かすことができない力。それが、超能力。
 人は誰もが魔法に憧れたことがあるように、超能力には憧憬と羨望が向けられる。特別な人間が持つ、特別な力。超能力者は選ばれし人間であると、世の中の風潮は長く語ってきた。
 その語りの中にあるのは、それで成功した者の栄光を詰め込んだばかりのものでしかない。そのことを知っている人がどれだけ存在するのかなんて私は知りもしないし、そんなものは今更どうでもいいことだった。
 わたしにとって星詠みの力とは、ただの"異常"だ。そう、心の底から思う。
 星詠みの力。私にある、産まれながらのマイノリティ。否応なく身に植え込まれたその異常がどれだけ私を、私の家族を苦しめ、傷付け、悩ませ、怒らせ、哀しませてきたことか。......なんて、そんなことは当事者たちしか知り得ないことだとわかっている。
 ただ、虚しかった。きらきらと輝く特別のように見られながら、地を這い泥を啜る現実が。世の中の偶像が伸し掛る息苦しさが、ただ、どうしようもなく惨かった。

「木ノ瀬くんみたいな人が星詠みの力を持っていたら、世界が変わる気がする」

 そう思ったのは、これが初めてではない。今までにも何度か考えたことがある事柄だった。
 共通課題にある星詠みについての項目で彼が教えを乞うてくるのは珍しくもない。宇宙科という現実的な未知に向かう科に所属する彼にとって、星詠み科というのはより未知で不可思議に溢れているらしい。
 私の正面に座って課題を解いていた彼は、私の脈絡のない言葉に手を止めるときょとりと目を瞬かせる。

「僕が星詠みの力を持っていたら、ですか」



自分で続きが読みたいのにもう書けなくなってしまった悲しい産物。梓のきらきらした瞳に星詠みの宇宙が広がるのはロマン。




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