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「ロビンはさ、皮肉屋ではあるけど、それでも意外と明るいし前向きだよね」

 ふと何の脈絡もなくそう言うは、俺のマスターであるお嬢さんだ。けろりと何食わぬ顔で喫煙所に佇む彼女は、薄く色付いた唇で煙草を食みながら俺を見上げる。さらりと肩からこぼれた髪からは、煙漂う密室でもこの人の甘さが香っていた。

「まあ皮肉屋とか卑屈とかの自覚は一応ありますけどね。確かに意外とは言われますけど、諦めは結構悪い。案外しぶといですよ、俺は」
「そっか」

 ぷかー、と煙を吐いて、俺から目を離すと自分で吐いたそれをすいと追いかける。話を振ってきたくせに、大した反応は返ってこない。この人は意外と、そういうことが多い。
 この"マスター"さんが考えていることを把握するのは至難の業だ。何処ぞの王様共は知らないが、それなりの数のサーヴァントたちがそういう認識をしている。でもまあ、それが伝わっていない方々も多いのは事実だ。
 この人がみているものも、おもっていることも、考えていることも、当ててみせるのは困難を極める。喜怒哀楽の表現は人並みで乏しくなんかないが、彼女は良くも悪くも現状に囚われない人なのだ。その思考回路は勿論、現状とは無関係なことも珍しくはない。

「オタク、今何考えてます?」
「エミヤにビーフストロガノフ作って欲しいって頼もうかなと思ってた」

 いつものことながら、現状に掠りもしない。偶にタマモキャットを彷彿とさせるのは多分気のせいじゃない。しかしマスターは俺とあの赤い弓兵の間柄を知っていながら躊躇いなくそれを言うのだから、大したモンだなといつもながらに思った。

「奴さんに頼まなくても、俺がシチューでも作りますよ。ちょっくらワイバーン狩りにでも行きません?」
「今日はビーフストロガノフだからロビンのシチューはまた今度お願いするよ」
「フラれちまいましたか、そりゃ残念だ」



カルデアマスターの設定はいくつかあるけどこのマスターは普通に擬態した変わり者。喫煙所でロビンと一服しながら雑談がしたい。




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