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「ナマエ、出掛けよう。準備をしておいで」

 同居人の彼に突然そう言われたのは、ほんの少し前のことだった。
 書斎に溢れる本に夢中になってしばらく経つけれど、私がこの家から出たことは今迄一度としてない。それを何気なしに強制してきていた彼が、何を思ってのことか、私を外へ連れ出そうとしている。それだけで少しびっくりしてしまったが、私がそれにマイナスなことを思うことはなかった。
 聖護さんに与えられた、ホログラムではない実物の服を選んで袖を通す。ここしばらくはシンプルなものばかり着ていたけれど、なんだか今は少し浮かれてしまって比較的可愛らしいものを選んでしまった。申し訳程度に髪を整えて彼に駆け寄って行けば、綺麗なその顔をまた、きれいにやわらげてみせる。

「よく似合っているね。さあ、行こうか」

 自然に差し出された手に、自分の手を重ねるのは何も可笑しなことではない、と思った。東洋人とは思えない白くてきれいな手に、一瞬怖気付いたけれど、自分の手を重ねる。ひかえめに置くことしかできなかった手を強く握り返されたりはしなかったけれど、彼は水のように滑らかに私の手を引いて、私を外へと連れ出したのだった。



「聖護さん!自分で買い物をするって、こんなに楽しいことだったんですね!」
↑この台詞を言わせたいが為に書き出したけど台詞に辿り着けなかった。ネットショッピングが当然の中で育ったら、自分の足での買い出しはそりゃあもう新鮮だろうね




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