その力、ちょっと強すぎたみたいです。


はやく、はやく……!
どこかに、逃げなきゃ…!じゃないと、わたしは――ッ!









「あるじさまみーつけた」

『あ……あ…ぁ、いま、つる……ちゃん…』


いつもと変わらぬ、無邪気な声でいまつるちゃんは言う。こんなにも早く見つかるなんて、思っていなかった。わたしの考えが甘かったのだろうか。
震えが止まらず、うまく言葉を発することさえ出来ない。小さな身体の筈なのに、地べたに座るわたしにとって、今のいまつるちゃんは、とても大きく見えた。


「あるじさま、かおいろがわるいですよ?」

『なん……で、も……な…いの……』


小さな歩幅であれど、後ろが壁で逃げ場のないわたしにとって、距離が縮むのはそう時間がかからなかった。完全に追い込まれたわたしは、冷や汗を流しながらも視線を少し上のいまつるちゃんに向けた。


「……あるじさま」

『……っ!?』

「やっと、ふたりきりになれましたね。ぼく、あるじさまとずっとこうしたかったんです」


突然のことに、一瞬息をするのを忘れてしまった。抱きついてきたいまつるちゃんに、わたしは硬直状態。指一本すら動かせなかった。


「あるじさま……あるじさま………」

『い……まつ、るちゃ……、』

「ぼくはずっとあるじさまだけのものですよ」

『……わ、た……し…は…………』

「あんしんしてください」


わたしの首に回された、いまつるちゃんの細い腕が力んだような気がした。
だけど、わたしの意識はだんだんと薄れていき頭の中は真っ白だった。
ただただ力が抜けていき、最終的にはいまつるちゃんに身を委ねていた。


「そう、それでいいんです」


月明かりに照らされたいまつるちゃんは、どこか楽しそうにしていた。


160702


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