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(あっ!)



私は思わず、物陰に隠れた。
ネイサンさんの姿はすぐに見失ってしまったのだけど、音のする方に向かって行けば会えるはずだと思って走って行ったら、なんと、そこでは男の人たちが剣を振り回していて…
血を流している人を見て、私の足はガタガタと震え始めた。



斬り合いをしているのは、けっこうな人数の人たち。
上等そうな服装をした男性ふたりに、ネイサンさんが加勢している。
つまり、三対七の戦いで、ネイサンさんたちは圧倒的に不利だけど、この三人がえらく腕が立つ。



「畜生!ずらかるぜ!」

傷付いた男たちは、悪態を吐きながら逃げ出した。



「……ありがとう。君のおかげで助かった。」

「いえ、私等いなくても、きっとお二人で倒されたでしょうが…」

「いや、そんなことはない。
君が加勢してくれなければ、ふたりでは危なかったと思う。」

「……しかし、なぜ、傷を負わせるだけで止めを刺されないのです?」

ネイサンさんの言葉に、男性は穏やかに微笑んだ。



「……ん?」

もう一人の男性が、私の方を見て、私と目が合ってしまった。



「あ…あの……」

なんて言おうかとどぎまぎしていたら、ネイサンさんが振り向いて……



「あ、あの者は私の弟のカンナです。
カンナ、こちらへ。」

「は、はい。」

私はおずおずと三人の傍へ歩き出した。
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