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「アンジェラ…ふたりだけで話したいとは、何なのだ?」

アンジェラは、余の問いに美しい微笑みを返した。



宴が終わってから、アンジェラは再び、余に謁見を求めた。
それは、他の者には秘密の非公式な謁見だ。
夜更けの薔薇園で、余はアンジェラと密会した。



「陛下……覚えてらっしゃいますか?あの約束のことを…」

空に浮かぶ丸い月を眺めながら、アンジェラはどこか夢見がちな口調でそう言った。



「約…束…?」

忘れたふりをしたが、もちろん、ちゃんと覚えていた。
アンジェラは叶えて欲しい望みがあると言った。
その願いについては、懐妊したら話す、と。



「陛下…私の望みを叶えていただけますか?
それとも、そのような約束は記憶にない、と…?」

「おぉ、そうであったな。
うっかりしていた。今、思い出した。
余は嘘は吐かぬ。
必ずや、そなたの望みを叶えよう。」

「どうもありがとうございます。
陛下ならそうおっしゃって下さると、信じておりました。」

アンジェラは恭しくお辞儀をした。



この女…一体、何を言い出すのだろう?
余は、心の中の動揺を悟られないよう、懸命に平静を装った。
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