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「そんなに寂しかったのか…?」

久しぶりに四人で囲んだ夕食の席で、アルバートさんは呆れたような顔でそう言った。



「へへ……」

ここはもう笑って誤魔化すしかない。
本当に恥ずかしい…いい年して、あんなに泣いてしまうなんて。
しかも、今の私は男なのに…アルバートさん、私のこと、馬鹿にしてるだろうなぁ…
でも、それでも私は嬉しいよ。
みんなが無事に帰って来てくれて…



「まぁ、それも無理からぬことだ。
カンナは記憶を失っているのだからな。
心細い想いをさせてしまって、すまなかった。」

「えっ!?」

なんで、なんで??
私のこと、馬鹿にしてるんじゃないの?
なんで、そんな優しいこと言ってくれるの?
しかも、オルリアンの王子様が、私みたいな一般市民のことを気にかけてくれるなんて…
なんか、恐縮してしまう。



「カンナ…あれから何か思い出したことはあるのか?」

今度は、ネイサンさんが訊ねる。



「え?い、いえ…特に何も…
あ、でも、お金の価値がなんとなくわかってきました。」

「なんと、金の価値もわからなかったのか?」

「はい……でも、毎日買い物をしてるうちに、だんだんわかって来ました。」

それは嘘じゃない。
最初は本当に全くわからなかった。
でも、周りのお客さんの出すお金を見たり、お店の人に教えてもらったりしながら、ちょっとずつ理解して来た。
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