三郎と過ごすとある寒い日

くしゅん、とくしゃみを溢すと、隣でそれを聞いた三郎くんが、はあと大きくため息を吐いた。

「そんな格好してるから」
「む、だってこのスカート可愛いんだもん」

確かに、自分でも真冬にミニスカは気合い入ってるなあ、と思うけど。いやでも、冬のお洒落は寒さとの戦いなんだ。

「だからって限度があるだろ。見てるこっちが寒くなる。なんか履くなりなんなりしなよ」
「やだ、ダサい」
「はあ?学校じゃ制服のしたにジャージ履いてるくせに」
「学校はみんなやってるからいいの!でも外はやだ!可愛くなくなる!」
「そんな気合いいれなくても、地元ブラついてるだけなんだし。毎回そんなだと疲れるんじゃないの」

三郎くんの言っていることも分かる。これはデートだけど、それでもどこか遠出というわけじゃない。
住み慣れた街をうろついて、たまに目についたお店を冷やかしたり、小腹が空いたらファーストフードでお腹を満たしたりする程度のもので、つまり気負いすぎる必要はないのだと、そう三郎くんは言いたいんだろう。それでも、外で三郎くんと会う以上、私には絶対譲れない一線があった。

「ううん、ちゃんとしてないと駄目なの。三郎くんカッコいいから、これぐらいしないと釣り合わないし」

私の自慢の彼氏である三郎くんが、ダサい女を連れてる、なんて思われたくない。精一杯背伸びをしないと、三郎くんの隣を堂々と歩けない。
そう言うと、三郎くんは眉をしかめてまじまじと私を見てから、心底呆れたといった表情で口を開いた。

「馬鹿?」
「ひ、ひどい…!」

ストレートな罵倒に思わず涙目になる。たしかにお世辞にも頭が良いとは言えないし、三郎くんに比べたらそれこそ月とすっぽんだろうけど、それでも言っていいことと悪いことがあると思う!
そんな私を気にすることなく、三郎くんは言葉を続けた。

「僕が名前を選んだんだから、他人がなんと言おうと関係ないだろ」

それだけ言うと、ふいっとそっぽを向いてしまう。けれどちらりと見えた耳は赤く染まっていて、きっとそれは、私の自惚れでなければ、寒さのせいだけではないようだった。

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