「極彩色の花が見たい、花火っていうんだけどさ」

我ながらワードセンスは持ち合わせがあるとおもうんだ。いや、だれかの歌詞のメモだったっけもしかして。まあいいやこれは今の私の気持ちってことで。なんて、1年前の手帳を開いて、何をほざいているんだ。なんにも変わっていないということが頭に直撃してきてくらくらする。私が悪いんじゃない、夏がやって来るのがはやいのが悪い。つーか、あつい。

「ねー花火いきたいー」
「あーいいねー」
「ほんとに思ってる?」
「思ってるけどまだ早いじゃない」
「早くないよ」
「早いよ」

まだやる予定ないよ。と言われる。検索はめんどうだからやめたけど、確かにもうすぐ打ち上げられるとしたら、世の中がおおはしゃぎしているはずなのでたぶんまだ先なんだと思う。じゃあもう手持ち花火でもいい。とにかく見たいの。そう駄々をこねてみたけど、わかったわかった絶対だよ約束。と頭を押さえつけられた。あーあ。でも約束って言ったからなおまえ覚えてろよ。でもこのひとが約束を忘れたことはないから、まあいいやとおもう。ざまあみろ去年の私。去年の私はきっと、あの焼けつく花を見ていない。たぶん怖かったんだと思う。ひとりぼっちだときっと負けてしまう、あの心臓を震わせる大音響と、かなしくなるくらいの極彩色と、そのきらめき、そのあとの静寂と暗闇、焼け焦げたにおいたちに。花火、というものを考えついてしまったひとって相当のおおばかものだとおもう。あんなものに命懸けちゃってさ。命ごと燃やしてるよね。夏だからってさ。まあ、私はそういうばかがだいすきなんだけどさ。命はできるだけ燃やしていたいよ。燻っているのはつらいじゃない。どうせなら、打ち上げて。散らかってしまいたい。

「花火、好きなの?」
「うーん、大好きだし、大嫌いってかんじ」
「そっか」「おれは、こわいよ」

ぽつり。君が吐き出した言葉は例えるなら、落ちてしまった線香花火の灯りみたい。

「私もこわいよ」
「ほんと?」
「うん」
「そっかそっか」

すこし嬉しそうにわらう、きみとなら。こわくないかもしれないじゃない。なにもかもがさ。そう信じ続けていたい。燃やし続けていたい。おおばかものだからさ。年がら年中、花火にしてきみの目の奥に焼き付いていたいくらいのこのきもちに飲み込まれてしまいたい。
ってことで、今年も手帳に走り書きする。

「ねえねえねえ」
「なに」
「好きすぎて、爆発する」
「なにそれ」「花火か」「えー」
「やだ?」
「やだっていうかさ」「うーん」
「なに」
「伝われ」
「伝わらん」

うおーって変な声をあげて、抱きしめられた。へへ。本当は分かっている、きみは私の生き急ぐ癖をしっているからなんとかここで食い止めようとされてること。でも、私はやっぱりこの瞬間がいとおしくて仕方ないの。来年に私がいなくてもいいの。
この遺言はきっときみがみつけてくれる。




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