その6、情報収集

前回までのあらすじ。
学校新聞で雷門サッカー部の特集を組むことにした私こと新聞部部長『女史』。
幼なじみである帝国学園の恵那和樹からも情報を得た翌日、私は部室に部員を集めた。



「皆の者、抜かりはないな?情報不足により組まれた特集は群衆の批判を買い、我らの矜持も損なわれることになるぞ!」

「今日は武士風なんですね、女史部長!」

ああ、最近時代物にはまってな、ちなみに矜持とはプライドの意で…って違う。主題はそれじゃない。
私は咳払いをひとつする。

「よし、まずは一年班から!なるべく簡潔にな!」

「はいっ」

一歩前に出た一年の後輩が、ホワイトボードに四枚の紙を張り付けた。

「各位勉学において抜きん出た者はいませんが、見た目のインパクトは有り。特に三組の壁山くんは、給食を毎日三回はおかわりする猛者であります」

「成る程、見た目を裏切らない大食漢だな」

うん、と頷きながら、ホワイトボードの紙を眺める。
一緒にくっついてる写真は授業中に取ったものだろうか。四人中三人が居眠りしているという大惨事だ。

「よし次、二年!」

「了解!」

次に前に出たのは、副部長の二年生。彼女も同じようにボードに紙を張り、言葉を続ける。

「まず、サッカー部を発足した円堂ですが…彼はいつ何時でもサッカーのことを考えているということを再認識しました」

「というと?」

「休み時間中の居眠りの寝言が、「サッカーやろうぜ!」でした」

それはもう病気の域じゃないのか。思わずそう思ったが、それも彼の大事な個性である。

「元転校生の豪炎寺のファンクラブの人数は、つい先日二十人を達成したそうです」

「大きな学校ではあるが、それはすごいな。いつかそっちの方も取材したいものだ」

その他は書類の通りです、と述べた彼女はそのまま元の位置に戻った。

「ふむ、中々上出来だ。よくやったなみんな」

これであとは、部の誰か─出来れば音無後輩以外の誰かに、話を聞ければ万々歳なのだが。
そう呟いた時だった。

「失礼しまーす…」

ゆっくりと控えめに、部室の扉が開く。
目をやると、中を伺うようにしてそこから頭を覗かせていたのは、選手である半田後輩と、マネージャーの御鏡後輩だった。
神速と言っても過言ではないくらいのスピードで、副部長がホワイトボードの書類を確保するや否や。

「情報源、確保ォッ!!」

「アイマム!!」

「「うわああああ!?」」




二人を確保し椅子に座らせ、尋も…取材体制に入る。

「や、すまなかったな。いきなり手荒なまねをして」

「ゾンビの群に襲われた気分でしたよ、ホント…」

「びっくりしました…」

そう胸をなで下ろしながら溜め息をつく二人。
しかしこれは、どう言った人選なんだろう。というかそもそも、彼らは何故ここに来たんだろうか?
尋ねると、「それを言う前に先輩が確保とか言うから」と半田後輩が文句を垂れた。

「私たち、雷門さんに記事の進行具合がどうなってくるか訊いてくるよう頼まれたんです」

「人選はただのジャンケンですよ」

「ジャンケンとな。それではなんだか、新聞部にくるのがまるで罰ゲームのようにも聞こえるが」

「違いますって!」ブンブン首を激しく振る半田後輩と、そんな彼をやや引きつった顔で見やる御鏡後輩。どうやら、ジャンケンが行われたのは選手間だけらしい。

「まぁ、良いが。進行具合はというと、丁度今日情報収集が粗方終わったところだ。あとは記事にすれば、来週には出来上がる」

「あ、そうですか…」

ならこれ以上お邪魔にならない内に、と立ち上がる二人の肩をがしりと押さえつける。
そしてそのまま、椅子に押し戻した。

「まぁ、そう焦るな。仕上げというわけではないが、丁度サッカー部員から話を聞きたいと思っていたんだ」

にっこり笑う私に、冷や汗のようなものを一筋垂らす二人。
副部長がいつのまにか用意した粗茶を手渡しつつ、笑顔で言った。

「大丈夫、自白剤なんか入れてないから」

彼女のジョークに、彼らの顔がサーッと蒼くなったのは言うまでもない。