猫、立つ

俺は猫。
簡単に人間には泣かぬ媚びぬ、ニヒルな猫だ。

しばらく前までは雷門中学校という教育施設の片隅で暮らしていたのだが、最近のあそこはどうも陰気でいけねぇ。
というわけで現在、あそこに代わる良い寝床を探して旅をしている途中だ。

だが、腹が減っては縄張り争いは出来ねぇと先猫は言っている。
まずは腹拵えが先だな。


「…ん?」


商店街の裏手に入ると、いつものようにラーメン屋の兄ちゃんが残飯を片していた。
兄ちゃんは三白眼でこちらを見下ろし、手の汚れを払う。


「ああ、お前か。ちょっと待ってろよ」


そう告げると、兄ちゃんは店へ引っ込んだ。
が、10も数えねぇうちにまた戻ってくる。
その手に持っているのは、いつものネコまんまだ。


「ほらよ」

「ニャー(ありがとさん)」


礼を言うのは猫でも人間でもマナーの一つだ。
兄ちゃんは満足げに笑うと、膝を伸ばして店へ戻っていった。

人間には泣きも媚びもしねぇが、あの兄ちゃんは別だ。俺と同じ、目標は違えど高みを目指す同類というやつである。

このネコまんまもほんの数年前まで食えたもんじゃなかったが、今ではこうして朝一に来なければありつけないほどに成長しやがった。
人間の進化ってのは末恐ろしいな。俺は口についた飯をペロリと舐めとる。

俺はニヒルな猫。新しい居場所を探して、旅は続く。