休日、葵と
日曜日、葵に「プリクラ撮りに行こう」と誘われたので、商店街にあるゲームセンターに行った。
「相変わらずうるせーな、ここ」
「だってゲームセンターだもん」
そう笑った葵に、そりゃそうだ、と思う。
休日ということもあってゲームセンターは賑わっていて騒がしい。
「おい!このクレーン、きゅんメモの信乃ちゃんのフィギアあるぞ!」
「マジで!?」
そんな会話をしながら、高校生が脇を走って行く。
そのきゅんメモと言うのが恋愛シミュレーションゲームで、かつ私の従兄の会社が作ったゲームで、その上その「信乃ちゃん」というキャラが姉さんをモデルに作られたという話は、…どう考えたって蛇足だろう。
「? どうしたの?そんな遠い目になって」
「ん、ああいや…何でもない」
いかん、ちょっとトリップしてた。
葵は私の顔を覗き込みながら「そう?」と首をかしげると、目当てのプリクラの機体を探しに辺りを見回す。
「どれにしようか」と葵に尋ねられたが、私は首を捻るだけだ。
正直なとこ、私はプリクラにはあまり詳しくないから葵に任せるしかない。強いて言うなら落書きコーナーが広いとこが良いが。
「─あ、ねぇ君たち。ちょっと良いかな?」
「はい?」
ようやく葵がコレ!と決めたものに入ろうとすると、誰かに声を掛けられた。
振り返ると、そこには二十代少しといった感じの男の人が二人立っている。
「プリクラ撮るんだろう?どうだい、今日はコスプレ衣装のレンタル代が半額なんだけど」
「う〜ん、コスプレかぁ…」
困ったような苦笑いを浮かべながら、葵が私の手を握る(何か片方の男の人の鼻息が荒くなった気がしたけど見間違いだと思いたい)。
「ね、ね、どうかな」
「いや…私ら、今日はそんなに小遣い持ってきてないんで」
まぁ、嘘は言っていない。
プリクラ用の200円を除けば、残金500円くらいか。コスプレ衣装なんて借りたら今月のサッカー雑誌を買う金がなくなってしまう。
すると二人は難しい顔になると、額を寄せ合い(むさ苦しい)こそこそと何か話し始めた。
「どうする、漫画氏…!次のメインヒロイン役にはあの二人のイメージがピッタリだと言うのに!」
「むぐ…こうなったら致し方ない」
内緒話をやめたらしい二人はこちらを振り返ると、今度は胡散臭いほどの満面の笑みを顔に張り付ける。
「じゃあ今回は特別に、タダで衣装を提供しよう!」
「我々を助けると思って、頼む!」
中学生女子二人に、大の大人が頭を下げるという何とも言いがたい光景が出来上がった。
「うーん…じゃあ、ちょっとだけなら」
「おい、葵」
「だって困ってるみたいだし…」
ダメだこのお人好し。
二人は顔を輝かせると、お礼を言いながら服を何着も掛けたハンガーラックを引きずってくる。
「じゃあ、ショートカットの君はこのロリータドレスで!」
そう葵に差し出されたのはピンクのレースがごっそりついたワンピースだった。
う、ん…似合わなくはないんだろうけど。何か…何か…
「で、君はこっち!」
「は?」
え、私も着る方向なの?
思わずキョトンとしていると、帽子を被った人は得意満面の笑みでその衣装を翻した。
「モンスター・ハントの衣装、ビキニアーマー!」
「全力でお断りします」
おい中1に何てモン着せようとしてんだこの人。
私は葵の手を掴んでさっさと二人から離れた。
「ああ!何故だ!?」
「自分の胸に手ェ当てて考えてください」
「大丈夫、このビキニアーマー子供用サイズだから!」
「そういう問題じゃねーから!」
誰がいつサイズを気にしたか。
私は葵を引き連れ、変な大人を振り切ってゲーセンを飛び出した。
「…はぁ、びっくりした。流石に私も、あんなふりふりな服はちょっとなぁ、って思ったんだ」
「そうだな、そう思ってくれて良かったよ」
二人が追いかけてこない内に、素早く商店街のアーケードを目指す。
あーあ、プリクラ撮り損ねた。今度あのゲーセンに行くときは防犯ブザーと去年の誕生日に和兄さんから貰った護身用スタンガン持っていこう。
私、変態ホイホイかもしれない
「でもあの服、確かにちょっと似合いそうだったよ」
「嬉しくねぇ」