その2、直談判

前回のあらすじ。
最近人気が鰻登りな雷門サッカー部。そんな彼らをネタに学校新聞で特集を組めば新聞も売れまくるはず!と予想した私こと『女史』は、さっそくサッカー部キャプテン・円堂後輩に許可を得ることにした。
新聞部を潤すため、部長がんばっちゃうゾ☆


……さて、右斜め上に異様に高いテンションはここまでにしよう。血圧が上がる。あと、自分に対してイラッときた。

とにもかくにも、いざ直談判。私は今、円堂後輩の在籍する二年一組の教室の前にいる。
廊下を歩く生徒が少しいぶかしげな目でこちらをちら見してくるのが分かるが、仕方ないだろう。三年生の教室があるのは別の校舎、故にこんな何てことない中休み時間に先輩がこの校舎にいることはめったにないのだから。

おっと話が逸れた。とりあえず私はその一組の引き戸をガラリと開けるわけだ。
すると存外大きな音が出て、中にいた生徒が驚いたようにこちらを振り向く。中でも目に付くのが豪炎寺後輩だ。彼はどこから見ても目に付く容姿をしているから。くっ、しかし誰か一人お供を連れてくるんだった。彼の驚いた顔は一般生徒からすると貴重なのに、シャッターチャンスを逃してしまった。
また話が逸れた。私はひとまず「お邪魔するよ」と声を掛け、教室を突っ切る。
「女史先輩だ」「何で内の教室に?」ざわざわと囁き合う声は、ここは敢えて無視させてもらう。私の今回の標的…ああ否、目的は円堂後輩だ。

…そう、この目の前で、机に突っ伏しノートによだれを垂らして気持ちよさげに居眠りをしている奴である。
眠っているところを起こすのはいささか心苦しいが、部活のためだ。私は心を鬼にして、円堂後輩に思いっきり、渾身の人差し指による頭蓋骨クラッシュをぶつけた。ようはただのデコピンである。

「いで―――ッ!!…って、先輩!?」

「やぁ、お早う円堂後輩」

つとめてにこやかに言うと、円堂後輩はしどろもどろしながらそれに返してくれた。

「あれ、おかしいな…今、おでこにもの凄い痛みが来た気がするんだけど」

「やや、それは逆夢というやつだな。きっと近い内、部活で君のヘディングが活躍するんだろう」

勿論うそである。しかし円堂後輩は、成る程!と明るい笑顔を見せてくれた。素直なことはまことに良いことだが、いつか怪しいショタコン犯罪者に「おじさんと一緒にサッカーやろうぜはあはあ」とか言われたらあっさりついて行ってしまいそうだ。彼の幼なじみとかいう風丸後輩に、それとなく注意を促すよう言っておいた方が良いかもしれない。

「それで先輩、俺になんか用ですか?」

「ああそうだった」

いかんいかん、彼の危機管理能力について考えていたら、すっかり当初の目的を忘れていた。
私が居住まいを正して取材の件を話し終えると、意外や意外、円堂後輩は難色の表情を浮かべた。

「取材かー…俺は別に良いんだけど、夏未は何て言うかな…」

「確かに、彼女にも聞いた方が良さそうだな」

とりあえず円堂後輩から許可をもらったことは確かだ。
もうすぐ中休みも終わるから、行くとしたら昼休みの方がいいだろう。

「分かった。じゃあ私は、そちらにも掛け合うことにするよ。それではまたな円堂後輩」

「あ、はい…」

自分で言うのも何だが、こういうのを嵐のようとでも言うのだろう。
去り際、向こうの廊下から仲良さげに歩いてきたマネージャー二人(確かどちらとも円堂後輩のクラスメイトだったはずだ)にちらりと目をやったあと、私は三年校舎に戻った。

さて、雷門嬢は一筋縄ではいくまい。うまい理由を考えておかねば。