その3、説得

雷門イレブンの特集を学校新聞組むため、円堂後輩に取材許可を求めた私こと『女史』。
彼自身は快く承諾してくれたのだが、学校を取り仕切る理事長代理兼サッカー部のマネージャーの一人である雷門夏未嬢にも意見を聞いた方が良いと助言を貰ったので、早速その日の昼休み、理事長室に足を向けた。

べっ別に早く特集を組んだ新聞を売り出して部を潤してやろうだなんて思ってないんだからねッ!!



…うん、ツンデレキャラは性に合わないな。直ちにやめることにしよう。

「矢張り学校一のツンデレキャラは雷門嬢、貴女しかいないと思うのだよ」

「……貴女はそれだけを言いに来たんですか?」

「否、違うが」

「つんでれって何よ…」一人思考に耽る雷門嬢と机を挟んで対峙した私は、こめかみを押さえて頭を振る。思考がそのまま口をつくなんて、修行不足だな。まだまだ一人前のジャーナリストの道にはほど遠いな。

ふむ、と頷く私に、やや顔をしかめた雷門嬢が「ところで」と問いかける。

「結局、貴女は一体何の用でここにいらっしゃったんですか?」

「ああそうだった。うん─そうだな。雷門嬢、最近のサッカー部はどんな様子かな?」


逆に問うと雷門嬢は首を捻った後で「大会も勝ち進んで好調ですよ」と答えてくれた。

「そうか…。いやな、今回の用件は、次の学校新聞で是非サッカー部の特集を組みたいと思って、それの許可を貰いにきたのだ」

「取材?」

まばたきをした雷門嬢はオウム返しする。そして何か考え込むような表情をしながら手元のノートパソコンを開き、言葉を続けた。

「そう─なら、お聞きしてもよろしいですか?」

「どうぞ」

「その取材とやら、サッカー部にどんなメリットがありますの?」

そら来た。
雷門嬢のことだから、必ずこの質問をぶつけてくることは分かっていたのだ。
私は用意しておいた言葉をつらつらと答える。

「勿論。サッカー部を応援してくれる生徒もいるだろうし、新聞は公民館にも置かせて貰ってるから、それを見たご近所の小学生たちが憧れを抱くこと請け合い…来年のサッカー部が安泰になること間違いなしだ」

それに、と続けると、雷門嬢はもう一つまばたきをした。

「同士が増えれば、円堂後輩達も喜ぶだろう?」

「………」

ハッと顔を赤くした雷門嬢が、睨むようにこちらを見る。
しかし少しすると、彼女は小さく咳払いをし椅子に深く腰掛けなおした。

「まっ…まぁ、そういった理由があるなら、良いでしょう、許可します」

「有難う、雷門嬢」

恋するオトメゴコロとやらを利用したようで気が引けるものはあるが、これも記事のため。私はにっこり微笑んで小腰を折る。

「そういえば、取材の日程は決めてありますの?次の試合が近いから、なるべく早く─」

「ああ、それは心配には及ばない」

え、とキーボードで文字を打ちかけた雷門嬢の手が止まった。
「どういうことですか?」首を傾げる彼女に、私は答える。

「サッカー部が忙しいというのは、十二分に承知している。だから私は、私の独自のルートで彼らを調べさせて貰うよ」

「独自のルート、ね…。貴女がいうなら、きっと徹底的に調べられるんでしょうね」

「流石、分かっておられるな雷門嬢」

私が口角を上げると、雷門嬢は逆に疲れたように溜息を吐く。

「では、今日の活動でみんなに伝えておきます。次の学校新聞で特集が組まれるけど、いつも通り自然体でいるようにと」

「そうだな。頼むよ」

私は踵を返し理事長室を出ると、ぐっと握り拳を作った。
これで自由に動けるようになった。あとは部員を動員して、そうだな、音無後輩や幼なじみにも強力を仰ごうか。
さあ、楽しくなってきた!