「─これで、粗方終わりかしら?」
「はい。あとはドリンクの粉末だけですね」
放課後、商店街にて。
隣を歩く秋に、買い物のリストを見ながら織乃が答えた。
「じゃあ、一回夏未さんたちのところへ戻りましょうか」
「そうですね」
荷物を持ち直した秋に、織乃も続く。
待ち合わせ場所に指定したアーケード入り口へ戻ると、丁度薬局から出てきた春奈と夏未にはち合わせた。
「あ、織乃さん木野先輩!」
飛びついてきた春奈を慣れた様子であやす織乃に笑いながら、秋が夏未の方を見る。
「どうだった?」
「ええ、必要な物はそろったわ。でも、わざわざ買いにこなくても良かったんじゃないの?」
頷いて返す夏未が首を傾げると、織乃は首根っこに春奈をぶら下げたまま「カタログで注文するより、直接見て買った方が良いこともあるんですよ」と答えた。
「あとは、ペンギーゴでドリンクの粉末を買い足すだけですね」
「はい!」
大きく答えるときまで、春奈は織乃に抱きついたままである。
そのまま手を繋いで歩く様子は、仲の良い姉妹のようだ。
「何というか…御鏡さんは、年下に好かれるわね」
「はは…それ、前に違う人にも言われた気がします」
確か、辺見あたりだっただろうか。苦笑する織乃の顔を覗き込んで、春奈がにっこり笑う。
「多分織乃さんから、お姉さんオーラが滲み出てるからだと思いますっ!」
「おね、え?」
「お姉さんオーラです!」繰り返して、春奈は自分で納得したようにうんうんと頷いた。
「木野先輩もなんですけど、何かこう、一緒にいてほっとするというか…」
「あら、じゃあ私といてもほっとしないということ?」
「夏未さんは気が引き締まるオーラが出てるんです!」
笑って皮肉った夏未に、春奈は慌てて言葉を付け足した。
クスクス笑いを零す織乃の腕にしがみついて、春奈は彼女を見上げた。
─お姉さんというより、お母さんっていった方が合ってるかな?
そんなことを心の中で独り言ちて、春奈は織乃の手をキュッと握りしめた。
ハンドクリームでも塗ってあったのか、ほんの少しペタリと肌が吸い付く。
「(良いな…もしもお姉ちゃんがいたら、こんな感じだったのかな?)」
もちろん、兄に不満があるわけではない。
だが、彼女の側にこうやって寄り添っていると、知らずと思考がそういう方向へ向かっていくのだ。
そこで春奈はハッとする。
「(と言うか、お兄ちゃんが織乃さんと結婚すれば万事解決なんじゃ!?)」
「春奈ちゃん?」ふいにこちらを覗き込んできた織乃に、春奈は「わっ」と悲鳴を上げた。
「さっきから百面相してるけど、どうかした?」
「い、いえ何もないです!」
まさか、兄と織乃の未来を想像していたとは口が裂けても言えない。
春奈は慌てて首を振った。
─その頃、部室では。
「………ふ、くしゅっ」
「あれ、風邪か?鬼道」
「いや…」