「なぁなぁ御鏡、ちょっと頼みがあるんだけど…」
東京を出発して数時間が経っただろうか。
休憩中、円堂が後ろの席から身を乗り出して言ってきた。
「何ですか?」
「次の特訓の時にさ、イナズマブレイクを精錬してほしいんだ」
「イナズマブレイクを?」聞き返した織乃に、その隣に座る鬼道が顔を上げる。
「円堂、何か策でも思いついたのか?」
策って言うか、と首を傾げた円堂は、身振り手振りで何か表現しながら続けた。
「ほら、攻撃は最大のナンとかって言うだろ?」
「攻撃は最大の防御、な」
「そう、それ!」付け足した豪炎寺に大きく頷きながら、円堂は拳で空を殴るような動作をする。
「だからさ、開始直後にデッカい攻撃を仕掛けたら、あいつも迂闊に動けなくなるんじゃないかなーって!」
「成る程な…」
小さく納得したように頷いて、鬼道が顎に手を添える。
「だが円堂…」豪炎寺がそれに続けた。
「それだと、逆に敵の守りが堅くなって、俺たちも攻めにくくなるんじゃないか?」
「うっ…」
円堂もこの欠点には気付いていたのだろう。
そうなんだよなぁ、と唸った彼は、腕組みをして顔をしかめた。
「まぁ、その点は鬼道や御鏡がどうにかしてくれるかもしれないがな」
「ちょ、ちょっと豪炎寺さん…!」
プレッシャー掛けないで下さいよ、と焦る織乃に対し、鬼道はあくまで冷静だ。
彼女の肩をポンと叩いて、ニタリと笑う。
「フィールドの外からのゲームメイクは頼んだぞ、御鏡」
「鬼道さん!」
人事じゃないんですからね、と唇を尖らせた織乃はツンとそっぽを向いた。
顔を上げた円堂が、もう一度前の席を覗き込む。
「で、御鏡。頼んでも良いよな?」
「それは、構いませんけど」
「けど?」キョトンと首を傾げた円堂を、織乃はジト目になって見上げた。
「…三人とも、まだ怪我が治りきってないでしょう」
ピクリと豪炎寺や鬼道の肩が動く(円堂に至ってはギクリとした)。
織乃は前に向き直り、小さく鼻を鳴らした。
「技の精錬はしますけど、無茶は禁物。怪我が完治するまではあくまでもある程度までですからね」
「えー」
「えーって言わない」鼻にしわを寄せた織乃に、「母親みたいなセリフだな」と豪炎寺が呟く。
それに鬼道が小さく笑った。
「無茶は禁物って、御鏡の口癖みたいなもんだよなぁ」
「円堂さんが無茶しなくなったら、もう言いませんよ」
「無理だな」
「ああ、到底な」
「二人まで!」嘆く円堂に、織乃や鬼道の説教が始まってしまったのは、また別の話である。