ドロケイ ◇◆ 2017/04/24 18:50

「っ、くそったれ…!」
 意図せず荒くなる口調に同調するかのように心拍数が上がる。ぜぇはぁと耳につく息遣いをそのままに尻からへたり込むと、まだ春だというのに有り余る勢いで太陽の光が木下を突き刺した。
 暑い、否、熱い?最早、どっちでもいいか。
 落ち着きを取り戻していく鼓動とは対照的に、足はもう駄目だと言わんばかりに重たかった。思わずちっと舌打ちをして立ち上がるも、膝がガクガクと笑っている。ああもう、と苛々していると横に影が伸びた。
「あれま。顔覆ってるから泣いてるのかと思ったのに」
「…いっそ泣きたい」
「死相が出てるよ、木下」
 お前らのせいだ、という言葉はのみ込んだ。体力作りの名目でドロケイをやろうと言い出したのは誰だっただろう。あっちもこっちも化け物染みた体力の持ち主で付き合いきれない。
 脱走できたかと思えばすぐに追われ、一歩も譲らぬ攻防を繰り広げた末にまた檻のラインに入るハメになる。これ幸いと気を抜くと西谷と田中が「助けにきたぞ!久志!」「まだまだ行けるぜ、木下!」と使命感に煌めく目で触ってくるせいで、もうフラフラだった。月島なんてベンチに座って優雅にドリンクに口つけてるし。あれ、1回も捕まってないとか不公平すぎる。
「流石に日向くんは速いね」
 感嘆まじりの声に視線を上げれば、日向と影山がギャアギャア言い合いながら攻防を繰り広げていた。これでしばらくは休めるかと息をつくと、ぽすりと肩に手が乗った。は?何で?
「私、捕まってないし」
 助けに来たんだよ、と意地悪く歪んだ口端に言葉を失う。そんな木下をよそに灰崎はラインを飛び越えて走っていく。ふざけんな!なんて叫びが届くはずもなく。
「あ、コラ!灰崎!」
 それを追いかけて走る縁下。 そして。
「木下、逃がさないぞー」
 笑顔全開で迫ってきた菅原にせり上がってきた衝動を抑え込み、木下は勢いよく地を蹴った。

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