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東方学園 5月
5月。
新年度、新学期の騒がしさもようやく落ち着きを見せ始めた頃。
学園内の掲示板に、ある新聞が貼り出されました。
『謎の美少女転校生現る!?』
魔理沙「……なんだこれ?」
紫「あれって結局、ガセネタだったんじゃないの?」
文「それがそれが、そんなことは無かったのですよ〜♪」
魔理沙「うわ、出たよ…」
文「人を害虫みたいに言わないでください」
紫「5月に入る前に貴女が書いた新聞は、結局ガセだったと聞いたけど?」
文「あれは情報の行き違いと言うものです。今回こそは間違いありません♪」
魔理沙「……先生からのコメントもあるし、間違い無さそうだな」
文「で、早速霊夢さんにお話を伺いたかったのですが……」
紫「霊夢なら生徒会室に行ったわ。会議だって言ってたわね」
文「早朝から校門で張ってたのですが……いつの間に学園内に……」
魔理沙「早朝から張り込むなんて、ご苦労なことだぜ」
生徒会室。
霊夢「転校生? あれってガセネタだったんじゃ?」
映姫「ああ、何度か新聞部が騒いでいましたね。しかし、今回は本当です。貴女のクラスになる予定ですよ?」
霊夢「嘘でしょ……」
映姫「本当です。その前に先生と生徒会役員に挨拶に来るはずなのですが……」
阿求「まだ、来ていないようですね」
さとり「転校初日から遅刻でしょうか?」
映姫「……私達にも授業がありますし、授業開始五分前になったら、各々教室に戻りましょう。それはそれとして、今日の会議の議題ですが」
映姫「…以上です。質問がなければ、これで終わりにしましょう」
霊夢「ふぅ。会議も楽じゃないわね」
さとり「そして結局、転校生も来なかった」
阿求「何かあったのでしょうか?」
映姫「仕方がありません。転校生のことは先生に任せましょう」
霊夢「そうね」
映姫「先程も言いましたが、貴女のクラスになる予定です。慣れないことも多いと思いますので、生徒会長として、しっかりと面倒を見てくださいね」
霊夢「はいはい、分かってるわ」
一方その頃。
「ヤバイヤバイ! どうしようどうしよう!」
東方学園手前500m地点を全力疾走する一人の少女。
「転校初日に遅刻とか、間違いなく目立っちゃうじゃない! どうして今日に限ってアラームが鳴らなかったのよ!」
お気に入りのスマホを睨み付ける少女。
しかし、全力疾走中のよそ見は大変危険なわけで。
「きゃっ!」
「うわっ!」
曲がり角から出てきた誰かとぶつかってしまいました。
「いった〜!」
妹紅「す、すまない。よそ見をしていた」
曲がり角から出てきたのは東方学園No.2の不良娘、藤原妹紅でした。
「私の方こそよそ見をして…あ、あれ?」
そこで少女は大変なことに気づきます。
スマホはしっかりと握っていたため無事だったのですが、ぶつかった拍子に眼鏡を落としてしまったようです。
「め、眼鏡…私の眼鏡は?」
妹紅「眼鏡? ……ああ、これか」
妹紅は近くに落ちていた丸い眼鏡を拾うと、少女に手渡しました。
妹紅「ほら、これだろ?」
「あ、ありがと……」
妹紅「…おっと、そろそろ授業が始まるな。悪い、私は先に行くよ!」
「あ、待って!」
妹紅は走り去ってしまいました。
「ああ、行ってしまう! 名前も知らないあの人が行ってしまう! まだお礼も言えていないのに!」
…と、ここで少女は我に帰りました。
「いけない! 私も急がないと!」
東方学園校門前。
「はぁ、はぁ。や、やっと着いた」
ようやく東方学園に着いた少女は、校舎を見上げます。
「へえ、ここが東方学園か。楽しいJKライフが送れそうね♪」
授業中の霊夢達のクラス。
魅魔「つまり、この公式から導き出されるのは…」
魔理沙「…なあ霊夢」
霊夢「何よ?」
魔理沙「転校生って、どんな奴なんだ? お前はもう会ったんだろ?」
霊夢「その話、今じゃなきゃ駄目?」
魔理沙「だって気になるじゃないか。なあ、ちょっとだけ教えて」
ヒソヒソと話をしていた魔理沙の顔の横を、凄まじい速度でチョークが通り抜けていきました。
魅魔「次は当てるからな?」
魔理沙「は、はい! すんませんでした!」
魔理沙の姿にクスクスと笑い声が上がります。
魅魔「…では続ける。次に、この問題は公式を用いると…」
魔理沙「…はぁ」
紫「自業自得ね」
妹紅「おはよーございまーす、遅刻しましたー」
魅魔「妹紅、いま何時だと思ってるんだ」
妹紅「ったく。朝から説教かよ」
魅魔「……まあ良い。今は授業中だ、さっさと座れ。後で必ず職員室に来るように」
妹紅「はいはい、分かったよ」
妹紅は鞄を机に放り投げ、ダルそうに椅子に腰を下ろしました。
魅魔「……続けるぞ」
魅魔が授業を再開しようとした時、教室のドアをノックする音が聞こえてきました。
魅魔「今度は何だ?」
玄爺「魅魔先生、ちょっと」
魅魔「学園長? …少しだけ自習とする」
紫「……何かあったのかしら?」
魔理沙「転校生が来たか?」
霊夢「さあ、どうかしらね?」
魔理沙「霊夢、お前はもう会ってるんだろ? どんな奴なのか教えてくれよ」
霊夢「残念だけど、私もまだ会ってないわ」
魔理沙「またまた〜♪ そう言うのは良いからさ、教えてくれよ〜♪」
霊夢「だから、本当に知らないんだって」
魅魔「転校生、随分と遅かったですね」
玄爺「登校中にトラブルがあったそうじゃ」
魅魔「トラブルねぇ……」
魅魔「はい、全員注目」
騒ぎ始めていた教室が一瞬で静まり返りました。
魅魔「既に何名かは知っていると思うが、今日はこのクラスに転校生がやって来る」
魔理沙「新聞部があんな新聞を掲載したんだ。知らない奴なんて居ないんじゃないか?」
魅魔「そこ、うるさい。それでは入りなさい」
「はい」
教室のドアから、丸い眼鏡をかけた少女が入ってきました。
魅魔「転校生の宇佐見菫子だ」
妹紅「ん? ……あ、お前は今朝のメガネ女!」
菫子「あ、貴女はあの時の!」
教室内がざわめきます。
こんなベタベタな展開があるのか、と。
魅魔「なんだ、知り合いか?」
妹紅「知り合いじゃなくて顔見知り程度だよ…。弱ったな…まさか転校生だったとは…」
魅魔「…妹紅。お前まさか、彼女に何かしたんじゃないだろうな?」
妹紅「し、してない! 何もしてない!」
菫子「は、はい。別に、彼女と何かあったわけでは…」
魅魔「そうか……。まあ良いだろう。ほら、みんな静かにしろ。菫子、自己紹介を」
菫子「あ、はい。宇佐見菫子です。以前は東深見高校に通っていました。……よ、よろしくお願いします」
謎の転校生、宇佐見菫子が深々と頭を下げますが、教室のざわめきは収まりません。
魔理沙「あんなベタな展開、イマドキあるんだな」
紫「でも、こう言う展開は面白いじゃない」
霊夢「そうね、転校初日のインパクトとしては十分じゃないかしら」
魅魔「静かに! …菫子、お前の席は霊夢の隣だ。これ以上騒がしくなる前に、早く座りなさい」
菫子「は、はい」
魅魔「まったく…。それでは授業を」
キーンコーンカーンコーン…
魅魔「む…もう終わりか。今日やった所はテストに出すから、しっかりと復習しておくように。菫子は後で私の所に来るか、誰かが授業内容を教えてやってくれ」
菫子「はぁ……」
霊夢「あんた、初日からかなり目立ってたわね」
菫子「べ、別に目立ちたかった訳じゃないんだけど…。貴女は?」
霊夢「私は博麗霊夢。生徒会長よ」
紫「同じく、生徒会長の八雲紫よ♪」
魔理沙「″元"生徒会長な。私は霧雨魔理沙だ、よろしくな」
菫子「よ、よろしく…」
三人が挨拶を終えた頃には、菫子の周りは人だかりが出来ていました。
美鈴「前の学校ではどんなことをしてたんですか?」
聖「どうして東方学園に転校を?」
パチェ「私と…友達に…」
永琳「貴女、弓道に興味はある?」
村紗「いやいや、是非ともサッカー部に!」
幽々子「そんなことよりおうどん食べたい」
文「と言うかぶっちゃけた話、妹紅さんとはどう言ったご関係で!?」
魔理沙「お前は隣のクラスだろうが」
菫子「あ、あの……あの……」
霊夢「はいストップ。みんなの気持ちは分かるけど、そんなに一度に聞かれたらパニックになるでしょ。質問があるなら順番にしなさい」
もみくちゃにされていた菫子でしたが、霊夢の一言でその場はどうにか収まり、生徒達による質問タイムが始まりました。
そしてその日の昼食。
霊夢、魔理沙、紫の三人と菫子は、学園の屋上に来ていました。
三人はこの場所で昼食をとるのがいつもの事となっていて、そこに菫子を誘った形です。
もちろん、数名の野次馬が集まってはいるのですが…。
霊夢「落ち着いて昼食も食べられないだろうと思って屋上に誘ったのに…これじゃあ意味無いわね」
魔理沙「まあ、転校初日なんてこんなもんだろ」
菫子「………」
霊夢「菫子、お昼ご飯食べないの?」
菫子「いや、なんと言うか……誰かと一緒にお昼を食べたことがなくて」
魔理沙「なんだ、そんなことか? だったら毎日でも、私達が付き合ってやるぜ。なあ?」
紫「そうね。大勢で食べた方が楽しいわ」
菫子「あ…ありがとう…」
魔理沙「さて、食べながら少し話をしようか」
霊夢「あんたはまだ話し足りないわけ?」
魔理沙「肝心なことを聞きそびれたからな」
紫「肝心なこと?」
魔理沙「ズバリ! 妹紅と何があったんだ?」
菫子「妹紅…って誰?」
魔理沙「ほら、白髪ロングの不良だよ」
菫子「ああ…あの人は妹紅って名前なのね」
魔理沙「で?」
菫子「ん? ……いやいや、みんなが期待してるようなことは何もないから!」
魔理沙「またまた〜♪」
菫子「ホントに何もないって…。寝坊しちゃったから急いで学園に向かってて、角から出てきた妹紅さんとぶつかっちゃっただけ」
魔理沙「お前ら、マジでベタベタな出会い方してんのな…」
紫「でも、よく妹紅が因縁つけてこなかったわね」
菫子「そんなことは全然なかった。ぶつかった拍子に落とした眼鏡も拾ってくれたし…不良だって言うのが信じられないわ」
紫「いや…私達はあの妹紅が、そんなに親切にすることの方が信じられないわよ」
魔理沙「ああ。拾った眼鏡を目の前で割りそうだな」
菫子「そんな人には思えなかったけどな…」
魔理沙「……で、霊夢は黙っちゃってどうしたんだよ?」
霊夢「ん? ……別に。少し考え事をしてたのよ」
紫「妹紅のことを考えてたの?」
霊夢「残念だけど、今日の会議の事よ」
菫子「そう言えば霊夢は生徒会長だって言ってたね」
紫「私も生徒会長だったわ。まあ、霊夢に譲る形になったけどね」
魔理沙「よく言うぜ。生徒選挙でボッコボコにされたくせに」
紫「うるさい」
文「あやややや〜♪ どうもどうも、皆さんお揃いで♪」
霊夢&魔理沙&紫「帰れ!」
文「そうは問屋が卸しません♪ 新聞記事のネタのためならどこまでも密着する。それが、清く正しい我が新聞部のポリシーなのですよ♪」
霊夢「お昼くらい、ゆっくり食べさせてよ…」
文「食べながらでもお話をすることは出来ますし、イエスorノーは首を振れば済む話なのです」
霊夢「相手のことを少しは考えなさいよ。菫子だって迷惑してるんだから」
菫子「取材なんてされたことないから、私は別に構わないけど」
魔理沙「おいおい、知らないぜ? こいつは本当に根掘り葉掘り聞きやがるからな」
文「それが取材と言うものです♪」
霊夢「少しは遠慮しなさいよ」
文「遠慮なんてしたら記者は務まりません! と言うわけで菫子さん、色々とお聞かせ願えますね?」
菫子「ま、まぁ……」
魔理沙「あ〜ぁ……私は忠告したからな?」
文「では早速。ズバリ! 東方学園に転校してきた理由とは!?」
霊夢「そんなの、親の都合でしょうに」
文「霊夢さんには聞いてません」
菫子「えっと……親の都合と言うのは半分正解かな?」
文「と、言いますと?」
菫子「この学園、SNSでも結構話題になってるのよ。興味があったから転校した。それだけね」
魔理沙「なんだ、話題になってるのか?」
紫「初耳だわ」
霊夢「でも、小中高一貫と言うのは珍しいのかもね」
文「では次に、趣味や特技はありますか?」
菫子「趣味……あまり声を大にして言えるようなものじゃないけど、オカルトは結構好きよ。特技は、特に無い……かな?」
文「ふむふむ、なるほど。…では次です。部活は何をされていたのですか?」
菫子「オカルト研究部。…と、言いたいところだけど、転校前は部を作れなくてね。専ら帰宅部だったわ」
文「つまり運動は苦手…と」
菫子「そんなこと言ってない!」
文「では得意なのですか?」
菫子「…苦手だけど」
文「やっぱり苦手じゃないですか。次、いきますよ。彼氏or彼女はいるんでしょうか?」
菫子「彼氏なら分かるけど、彼女って……」
紫「ここ東方学園は一応、男女共学なんだけど、何故か女子生徒しかいないのよ。つまり…分かるわね?」
菫子「あ、そう言う……」
霊夢「ちなみに魔理沙は女たらしだから、菫子も気を付けなさい?」
魔理沙「だれが女たらしだ!」
紫「そう言うの霊夢は人たらしね」
霊夢「そうでもないわよ」
文「で、実際のところはどうなのですか?」
菫子「そ、それは……」
キーンコーンカーンコーン…
霊夢「ほら、予鈴が鳴ったわ。密着取材は終わりよ」
文「うぐ……ではまた後程」
菫子「……はぁ」
魔理沙「だから言っただろ?」
紫「引き受けたからには最後まで付き合ってあげなさい?」
菫子「ま、まあ、さっきのようなプライベートな事でなければ」
霊夢「あんたも物好きね。まあ、あまりしつこいようなら言いなさい? 私が何とかしてあげるから」
菫子「あ、ありがとう」
その日の放課後。
紫「魔理沙は部活。霊夢も生徒会の仕事。家に帰ってもやること無いし、退屈だわ」
菫子「ち、ちょっと、それ以上は……」
紫「ん? 菫子?」
文「良いじゃないですか、減るものでもありませんし♪」
菫子「プライベートな事はお断りするって言ったじゃない!」
文「いやいや、これは取材と言うよりは私の趣味の方が強いと言いますか」
菫子「もう、本当に勘弁して…」
紫「何をしているの?」
文「おっと、これは元生徒会長。現生徒会長にチクられても困りますし、私はこれで退散しますね♪」
紫「あ、こら待ちなさい!」
文は走り去っていきました。
紫「逃げ足だけは速いんだから」
菫子「はぁ……」
紫「大丈夫?」
菫子「ん……まぁ……」
紫「何を聞かれたのかは詮索しないけど、あまり新聞部とは関わらない方が良いわ。……私から霊夢に言っておきましょうか?」
菫子「いや、霊夢には私が直接言う。少し、話したいこともあるし」
紫「そう。ところで、菫子はどこに住んでるの?」
菫子「え?」
紫「ほら、これから長い付き合いになりそうだし、登下校で一緒になれたら…なんて思ったからね」
菫子「……駅の近くにあるアパートに住んでるわ」
紫「ああ、あそこね? だったら、私や霊夢、魔理沙とも方角は同じね。どう? 霊夢との話が終わったら、一緒に帰らない?」
菫子「ま、まあ、迷惑じゃなければ」
紫「迷惑ではないわよ。それじゃあ私は校門で……部活を眺めて暇を潰してるわ」
菫子「わ、わかった」
生徒会室前。
霊夢「ふぅ。今日は早く終わって良かったわ。…ん?」
菫子「あ、ども」
霊夢「菫子、どうしたの?」
菫子「話があるの。ちょっと付き合ってくれる? 紫にはもう話してあるから」
霊夢「構わないけど…」
東方学園の屋上。
風の音に混じって、色々な部活の掛け声が聞こえてきます。
そして何故か屋上には、サッカーボールがカゴごと置いてありました。
霊夢「…サッカー部め。屋上で練習するなって言っておいたのに」
どうやら東方学園では日常茶飯事のようでした。
霊夢「で、話って?」
菫子「まずは報告から」
霊夢「報告?」
菫子「あの新聞部、プライベートな事まで根掘り葉掘り聞きすぎ。正直な話、あれは迷惑なのよね」
霊夢「ああ…。あんたが取材を許可したとは言え、さすがにそれはやり過ぎね。私から強く言っておくわ」
菫子「そうしてもらえると助かるわ」
霊夢「…話はそれだけ?」
菫子「まさか。それだけなら、わざわざこんな所に呼ばないよ」
霊夢「それもそうね。じゃあなに? 私に告白でもする?」
菫子「そうだって言ったらどうするつもり?」
霊夢「もちろん断るわ。私はソッチじゃないし」
菫子「私だって違うわよ」
霊夢「だったら何なのよ?」
菫子「霊夢」
霊夢「ん?」
菫子「霊夢は生徒会長…なんだよね?」
霊夢「ええ、そうよ」
菫子「この学園の生徒会長は、先生以上の権力を持ってる。それも間違いではないわね?」
霊夢「ええ。生徒が主体となる教育の場。それが東方学園よ」
菫子「つまり生徒会長になれば、この学園を牛耳ることが出来る」
霊夢「……ん?」
菫子「そして霊夢を倒せば、私が生徒会長になれる」
霊夢「ちょっと待て、その理屈はおかしい!」
菫子「問答無用。さあ、私の野望のための礎となりなさい! サイコキネシス!」
菫子が手を突き出すと、カゴの中のサッカーボールが浮かび上がりました。
そして菫子が手を上にあげると、サッカーボールもそれに従って更に上へと浮かび上がります。
霊夢「………」
菫子「転校初日にこんな事をするのは気が引けるけど、これも私の野望のため。悪く思わないでね?」
霊夢「雑な手品ね。テグスが見えてるわよ?」
菫子「うぐ……。さ、さすがに普通の釣糸じゃあバレるわね。でも、バレたところで!」
霊夢「まあ待ちなさい。あんた、東方学園がSNSで話題になってるって言ってたけど、その理由って生徒会のことでしょ?」
菫子「そ、そうよ」
説明しなければなりません。
ここ東方学園では、現生徒会長を“どのような方法を使ってでもも”倒すと、倒した者が生徒会長になれると言う変わった風習がありました。
生徒会を志す者が生徒会長に挑むことを生徒会選挙と呼んでいたのです。
菫子「だから、私が霊夢を倒して生徒会長になるのよ!」
霊夢「だからそれを待てと言ってるのよ。生徒会長を倒すなんて風習、私が生徒会長になった時点で撤廃してやったのよ」
菫子「そんな! ……いや、だからと言ってあとには引けない!」
霊夢「私を倒したいのなら受けてたつわ。……それで、あんたの気が済むのならね」
菫子と霊夢は勝負を始めましたが、二人には圧倒的なまでに経験値の差があっようです。
菫子「……霊夢強すぎ」
霊夢「あんたみたいな輩を毎日返り討ちにしてたからね」
菫子「これじゃあ私の野望が……」
霊夢「…あんたの野望って何なのよ? どうにも、学園を牛耳るだけが目的とは思えないのよね。差し支えなければ教えてくれない?」
菫子「……オカルト研究部を作るためよ。それもただの同好会ではなく、ちゃんと部として機能してるオカルト研究部をね」
霊夢「なんだ、そんなこと?」
菫子「霊夢にとってはそんなことでも、私にとっては」
霊夢「いや、ごめん。そう言うの意味で言ったわけじゃないのよ。あんたの望むオカルト研究部は、もう東方学園に存在してるわ」
菫子「え?」
霊夢「しかも結構人気があるのよ。オカルト研究部……確か、秘封倶楽部と言ったかしら? そいつらが毎月発行してるオカルト新聞は新聞部の新聞より愛読者が多いからね」
菫子「秘封倶楽部……」
霊夢「あんたも興味があるなら、部長に掛け合ってあげるけど?」
菫子「ぜ、ぜひ!」
霊夢「…まあ、今日はもう遅いから明日になるけどね。さて、私は帰るけど」
菫子「…私も帰ろうかな。あ、そうだ」
霊夢「まだ何かあるの?」
菫子「……“レイムっち”って呼んでも良い?」
霊夢「呼び方は構わな……なかなかアレな呼び方ね。別に良いけど」
校門。
紫「あら魔理沙、部活終わったの?」
魔理沙「ああ。今日はなかなかハードだったぜ。と言うか、まだ帰ってなかったのか?」
紫「霊夢と菫子を待ってるのよ」
魔理沙「霊夢は分かるが、菫子もか?」
紫「霊夢と話があるって。菫子を待ってる理由は、帰る方角がおなじだから」
魔理沙「まだ聞き足りないのか?」
紫「だって転校生よ? 興味は尽きないわ」
霊夢「ごめん。待たせたわね」
魔理沙「お、噂をすれば」
紫「菫子、話は済んだ?」
菫子「もちろんよ。ね? レイムっち♪」
魔理沙「レ、レイムっち……だと?」
紫「あらあら。この短時間で、ずいぶんと仲良くなったじゃない? 少し妬けちゃうわ」
霊夢「まあ、色々とね」
文「その話を詳しくお聞かせ願います!」
霊夢&魔理沙&紫&菫子「帰れ!!」
数日後。
魔理沙「なあ、昨夜の動物特番見たか?」
霊夢「ああ、見た見た。あの変な声で鳴く猫、本当に可愛かったわ」
菫子「レイムっち、マリサっち、おはよ〜」
魔理沙「やあ菫子」
霊夢「おはよう」
魔理沙「秘封倶楽部の活動は順調か?」
菫子「ええ、レイムっちのおかげでね♪」
魔理沙「霊夢、おまえ何かしたのか?」
霊夢「別に? 秘封倶楽部の部長に掛け合ってあげただけよ」
紫「おはよう」
菫子「紫、おはよう」
紫「……貴女はいつになったら、私のことを“ユカリっち”って呼んでくれるのかしら?」
菫子「語呂が悪いからね」
魔理沙「やっぱり語呂だったのか」
霊夢「そう言えば、そろそろ中間テストだけど」
魔理沙「霊夢様〜、勉強教えてください〜…」
霊夢「それくらい自分でどうにかしなさいよ」
紫「実は…私も自信がないのよね」
菫子「私も……今回はヤバいと思ってる……」
霊夢「……はぁ。勉強会でもする?」
魔理沙「その一言を待ってました♪」
菫子「じゃあ、私はお菓子を用意するわ」
紫「缶詰めは体に悪いから、息抜きに雑誌を持っていくわ」
魔理沙「それじゃあ私も息抜きのためにゲームを持っていくぜ」
霊夢「それ、もう勉強するつもりないよね?」
こうして宇佐見菫子が転校してきたことにより、東方学園はますます賑わいを見せていくのでした。
涼花「次回予告♪ 無事に中間テストを乗り越えてシトシトの6月♪」
魔理沙「全くもって無事じゃなかったがな!」
涼花「そんなことでも全くめげないわたしの前に現れたのは、中等部の小傘お姉ちゃんとぬえお姉ちゃん♪」
霊夢「あ、今回は隠さないのね」
涼花「雨空の散歩で、三人の絆が一気に深まる♪」
紫「つまり、東方学園でもいつも通りの6月なのね」
涼花「次回、東方学園6月。アジサイの遊歩道 三人の日常 お楽しみに♪」
6月に続く