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紅葉狩り

紅葉狩り。それは紅葉を楽しむ、日本古来からの行楽。
しかし、ある者にとっては災難な一日となる行楽でもあるのです。

椛「………」

そう、犬走椛。
彼女の名も『椛(もみじ)』。もみじを狩る。
紅葉狩りと言う言葉が出る度に、椛はそのもふもふの耳をピクピクと動かし、警戒行動や威嚇をしたりしてしまうのです。

文「も〜み〜じ♪」

声を掛けられた椛は、刀を文に向けました。

文「あ、危ないな…。急に刃物を向けないでよ」
椛「何の用ですか?」
文「なにピリピリしてるのよ?」
椛「別に? ただ、盗撮魔を警戒してるだけですよ」
文「盗撮魔とは聞き捨てならないけど…まあ良いか。今日は妖怪の山に、人間のお客様がやって来るわ。だから人間を見掛けても、噛みついちゃダメよ?」
椛「人間ね…。守矢神社に参拝ですか?」
文「いや、紅葉狩りだそうよ」
椛「そうですか」

椛は平静を装っていますが、耳や尻尾の毛は逆立ち、明らかに何かを警戒してる様子です。

文「…もう一度言うけど、絶対に噛み付かないように。良いわね?」
椛「はいはい、善処しますよ」
文「どうしたの? 反抗期?」
椛「気のせいです」
文「…まさか、はつじょ」
椛「斬りますよ?」
文「ちょっとした冗談じゃない…。それじゃあ私はお出迎えしてくるから、絶対に噛み付かないようにね?」

そう言い残し、文は目にも止まらぬ速さで下山していきました。

椛「…文さんの知り合いの人間となれば、アイツかアイツだけど…そいつらが紅葉狩りね…。そんなことをするような奴等じゃないし、嫌な予感しかしないわ」

そして紅葉狩り。
文が連れてきたのは霊夢と魔理沙。
その後ろには、涼花ちゃんとゆーちゃんの姿もあります。

文「さあ♪ 今日は心行くまで楽しんでいってくださいね♪」
霊夢「相変わらず、ここの紅葉は圧巻ね」
魔理沙「まあ、私達は後ろのエロガキ共を連れていくだけだが」
ゆーちゃん「エッチなのは涼花ちゃんだけです」
涼花「わたしはエッチじゃないよ!」
魔理沙「はいはいテンプレテンプレ」

椛「…この四人か。問題を起こしそうな約二名が居るけど、関わらなければ何の問題もないはず」

霊夢「しかし、今年は冷えるわね…」
魔理沙「ガキ共は防寒対策バッチリだな。ちなみに私も冬仕様だ」
文「私も、以前お二人が山に来た時と同じ服装です。いつも通りなのは霊夢さんだけですね」
魔理沙「いい加減、脇をしまえよ」
霊夢「このスタイルを変えるつもりはないわ」
涼花「風邪引くよ?」
霊夢「お腹だけは暖めてるから大丈夫よ」
ゆーちゃん「お腹?」

と、ゆーちゃんはおもむろに、霊夢の服のなかに手を入れました。

霊夢「はうっ!! ゆ、ゆーちゃん!?」
ゆーちゃん「…あー、これは小さな湯たんぽが入ってますね」
霊夢「いや、確認のためとは言え、服のなかに手を突っ込むのはどうなのよ!?」
ゆーちゃん「だって、こうしないと分からないから」
文「…ゆーちゃんは大胆ですねぇ♪ そう言うところも好きですよ♪」

椛「…千里眼で見てる分には、ただのエロガキなんだよなぁ」

文「さて、今日はどこまで?」
涼花「もちろん、九天の滝の上まで♪」
文「涼花ちゃんはすっかりお気に入りですね。では、早速案内しますよ♪」
魔理沙「滝を登るのか!?」
文「おや? 魔理沙さんはご存知ない?」
霊夢「九天の滝って、そんなに絶景だったかな?」
文「あやや? 霊夢さんもご存知ないのですか?」
魔理沙「と言うか、このガキ共はどうして、そこの景色を知ってるんだ?」
涼花「ああ…そう言えば、前もその前も、妖夢お姉ちゃんと早苗お姉ちゃんに連れてきてもらったんだった」
ゆーちゃん「そうだね。霊夢さんと魔理沙さんに連れてきてもらうのは、これが初めてだね」
霊夢「…子供二人を妖怪の山に連れてくるなんて、あいつらに危険意識は無いのかしら?」
魔理沙「どうせあいつらも、今回みたいに泣き落としされたんだろ?」
涼花「大人ってチョロいよね」
魔理沙「こいつは本当に…」
文「しかし今回は、涼花ちゃんとゆーちゃんから予めお話を伺っていたので、山の天狗達が襲ってくることはありませんよ」
霊夢「だと良いんだけどね…」

こうして霊夢達は九天の滝へと向かいました。

魔理沙「いやぁ、すげぇ轟音だな」
霊夢「スケベ訪問?」
魔理沙「すげぇ轟音って言ったんだよ! どんな耳してんだよ!」
文「魔理沙さん。子供もいるので、変なこと言わないでください?」
魔理沙「私じゃないぜ!?」

そんな愉快な話をしながら滝を登っていきます。

ゆーちゃん「この滝は本当に凄いですね。少し冷たいけど、それも風情があります」
魔理沙「これだけの滝なのに、妖精共はこの滝から飛び出して攻撃してきたんだぜ?」
霊夢「ああ、そんなこともあったわね」
涼花「それって、こんな冷たい滝の中に、ずっと潜んでたってこと?」
魔理沙「いや、私達と同じ速度で登ってきてたからな。もしかしたら、裏に空間があるのかもしれないぜ?」
ゆーちゃん「だとしても、滝から飛び出すって勇気が要りますよね…」
霊夢「…言ってる側から来たみたいよ」
ゆーちゃん「え?」

ゆーちゃんが顔を上げると、滝の中から数匹の妖精が飛び出し、弾幕をばら蒔いていきました。

ゆーちゃん「きゃっ!」
魔理沙「おい霊夢、どうする?」
霊夢「当然。邪魔者は迎撃よ」
文「その必要はありません」

そう言うと、文は天狗の団扇を一振りしました。
団扇の風は小さな竜巻となり、妖精達をまとめて吹き飛ばします。

文「せっかく山を訪れてくれたお客様に、危険なことはさせませんよ」
魔理沙「お、頼もしいな」
霊夢「何か裏がありそうな気がするけど…今だけは感謝するわ」
文「感謝ついでに定期購読を」
霊夢&魔理沙「断る」
文「むぅ……」

椛「妖精が騒がしいな。私は指示を出した覚えは無いし…珍しい登山者で浮かれてる?」

文「そろそろ半分ですね」
涼花「妖精さんの攻撃が激しくなってきてるんだけど!?」
霊夢「ゆーちゃん、しっかり掴まってなさい?」
ゆーちゃん「は、はい!」
魔理沙「涼花ちゃんも、死ぬ気で掴まってないと振り落とすぜ?」
涼花「が、頑張るよ!」
文「しかし…おかしいですね」
魔理沙「何がだ?」
文「いや…二、三匹程度の妖精なら、浮かれて攻撃してくるのも分かるのですが…そもそものところで、私は攻撃命令を出していないんですよね」
霊夢「でも、これだけの攻撃よ? この先にボスが居ると言ってるようなものじゃない」
文「ですが、4面のボスだった私はここに居ますよ?」
魔理沙「他に心当たりは?」
文「う〜ん……」

と、文が考えていると、急に妖精達の攻撃が止みました。

文「おや? この場所は…椛のテリトリーですね」
魔理沙「この場所で攻撃が止んだってことは」

魔理沙と霊夢が辺りを見渡すと、こそこそとその場を去ろうとする椛の姿がありました。

文「…椛っ!!」
椛「ひっ!!」

文は椛を捕まえます。

文「椛、噛みつくなって言っておいたはずよね?」
椛「ち、ちょっと待って! 私は妖精が騒いでたから、その原因を突き止めに来ただけよ!」
涼花「…って言ってるけど?」
霊夢「まあ、紅葉狩りだし」
魔理沙「そうだな、椛狩りだな」
ゆーちゃん「椛狩りですか、楽しそうですね」
椛「わざわざ紅葉を椛に言い換えないで!」
文「あんたはここの管轄でしょ! そしてここの妖精が騒いでる!」
椛「だから調べに来たのよ! 私は何もしてないし、何かするつもりもないわ!」
魔理沙「…まあ諦めろ。どのみち椛狩りだ」
椛「あんまり疑うと、本当に噛みつくわよ!」
霊夢「まあ待ちなさい。あんたじゃないって言うなら、だれが原因だと思う?」
椛「そこまでは分からないわよ…。でも今日は、ちゃんと文さんの言いつけを守ってたわ!」
涼花「ねぇ…何でも良いから、早く登ろうよ」
ゆーちゃん「すや……」
霊夢「椛」
椛「なによ?」
霊夢「私達と戦う意思がある?」
椛「無いわ。だって、今日は文さんが同伴だし、あんた達はお客様として通せって言われてるからね」
霊夢「じゃあ、私から言うことは何もない。今日は妖怪退治に来たわけじゃないからね」
文「いやいや、ここはビシッと躾をですね」
霊夢「文。私達は紅葉狩りをしに来たの。あんたは案内してくれれば、それで良いのよ。躾にしろ何にしろ、今じゃなくても問題ないでしょ?」
魔理沙「そう言うわけだ。それに、後ろの二人が退屈してるしな」
文「…分かりました。お二人に免じて、今回は見逃してあげましょう。さあ、滝の上までもう少しですよ♪」

霊夢達は更に滝を登っていきました。
それを見送った椛は、安堵のため息をもらします。

椛「やれやれ。生きた心地がしなかったわ…。それにしても、誰が妖精達をけしかけたのかしら?」
「あ〜ぁ、面白くない」

そう言いながら現れたのは、はたてでした。

椛「何が面白くないのよ?」
はたて「だって、せっかく椛狩りを撮影できると思ったのに、巫女も魔法使いもスルーしちゃうんだもん」
椛「まさか…妖精をけしかけたのは」
はたて「そう、私。こうすれば、派手な椛狩りを記事に出来るって期待してたんだけ…ど……」

怒ってます。椛は明らかに怒っています。

はたて「で、でもさ、見逃してもらえたわけだし、椛狩りの被害にも遭わなかったんだし、結果的には良かったってことで…」
椛「狗符『レイビーズバイト』!!」
はたて「ちょっ! 待って! 噛みつかないで!!」

魔理沙「うひゃー! これはまた絶景だぜ!」
霊夢「普段は通りすぎるだけだったけど、たまにはこうやって景色を堪能するのも、悪くないものね」
涼花「でしょ?」
ゆーちゃん「やっぱり秋は、ここからの眺めが最高です」
涼花「……あれ? あそこに居るのって、はたてお姉ちゃんじゃない?」
ゆーちゃん「あ、本当だ」
霊夢「何だかボロボロだけど…」
魔理沙「おーい、はたてー!」
はたて「あ、どうも…」
涼花「…なんか、噛み痕みたいなのがいっぱいあるけど、大丈夫?」
はたて「大丈夫よ。このくらいではへこたれないわ」
文「ははーん。さては椛に噛みつかれたわね?」
はたて「ぅ……」
文「図星ね」
はたて「五月蝿い」
文「まあ、椛狩りだ何だで、あまり椛をいじらないことね」
はたて「ふん!」
霊夢「…何なの?」
文「何でもありません。さあ、我々はもう少し、この紅葉を堪能しましょう」
涼花「そうだね♪」

こうして紅葉狩りを堪能した涼花ちゃん達。
椛も椛狩りに遭わずに済みました。
しかし、帰り際にゆーちゃんに、毛がボサボサになるまでもふもふされてしまうことを、このときは誰も予想していませんでした。

椛「これって結局、椛狩りじゃない!」

終わり