涼花ちゃんストーリーまとめサイト(改)
クリスマスケーキは大きいほど愛がある
12月24日。そう、クリスマスイブです。
大きなイベントである為、霊夢は問題を起こす輩が居ないか、人間の里の見回りをしていました。
霊夢「…里もクリスマス一色ね。あまり羽目を外しすぎなきゃ良いけど」
魔理沙「まあ、年に一度のお祭り騒ぎだ。そりゃあ有象無象も浮かれるさ」
霊夢の見回りに同行した魔理沙が答えます。
霊夢「別に、ついてこなくても良かったのに」
魔理沙「何か面白いことでも起こるかと思ったが…宛が外れたか?」
霊夢「見回りだけだし、大したことも起こらないわよ」
そんな話をしながら歩いていると、霊夢はクリスマスケーキの見本が並べられた店の前で立ち止まりました。
大小さまざまなケーキが並べられ、どれも目を引くほど美味しそうに仕上がっています。
どうやら今年は、一人用の小さいケーキが主流のようです。
魔理沙「ケーキか。今年も紅魔館のは豪勢なんだろうな」
霊夢「そうね……」
霊夢はそう言いながら、袖の中に入れて持ち歩いていたある物に、そっと手を触れました。
そして神妙な面持ちで魔理沙に問い掛けます。
霊夢「ねえ、魔理沙?」
魔理沙「ん?」
霊夢「クリスマスケーキを相手に渡すって、どういう意味があると思う?」
魔理沙「なんで、それを私に聞く?」
霊夢「あんたはよく物を貰うでしょ? 貰う専門と言っても過言ではないわ。だから、参考程度に聞いておこうかと」
魔理沙「ほう」
霊夢「ほら、今年は小さいケーキが主流みたいだからさ」
魔理沙「そうだな……」
魔理沙は店先に並べられたケーキを見ながら、こう答えました。
魔理沙「好意を寄せてる相手だったら、間違いなくそう言う意味だろうな。バレンタインのチョコと違って簡単に作れるものでもないし、買うとしても値が張る物だからな」
霊夢「そう……」
魔理沙「……まあ、霊夢が今、袖の中に隠してるケーキを誰から貰ったのかは詮索しないが」
霊夢「!?」
魔理沙は何でもお見通しのようです。
魔理沙「ケーキを渡したと言うことは、そう言う意味合いだと思って間違いないと思うぜ?」
霊夢「本当に、そう思う?」
魔理沙「多分…な?」
霊夢「そう……ありがと、参考になったわ」
魔理沙「さて……」
魔理沙は箒に跨がりました。
霊夢「どこか行くの? 紅魔館のパーティーまで、まだ時間があるわよ?」
魔理沙「まあ、私も色々と用事があってな。ちょうど良い暇潰しも出来たし、私はそろそろ行くぜ?」
そう言い残し、魔理沙は飛び去って行きました。
霊夢「あいつはいつも忙しないわね……」
そう言って霊夢は、見本のケーキに視線を移します。
可愛らしくデコレーションされたクリスマスケーキは、それだけでクリスマスを感じさせる仕上がりです。
霊夢は袖の中から、小さな箱を取り出しました。
赤く綺麗なリボンで結ばれた、小さな白い箱。
その中には、小さなクリスマスケーキが入っています。
魔理沙「ちなみに」
霊夢「うゎっ!?」
不意に声を掛けられ、霊夢は箱を落としそうになりました。
慌てて振り返ると、飛び去ったはずの魔理沙がそこに居ました。
霊夢「び、びっくりさせるんじゃないわよ!」
魔理沙「すまんすまん。ちなみになんだが、プレゼントとして送るケーキは、大きいほど愛があるぜ。これは経験談だ」
霊夢「そ、そう。……それを言うために、わざわざ戻ってきたの?」
魔理沙「ああ」
霊夢「あんたは本当に……」
魔理沙「じゃ、今度こそ本当に行くぜ? またパーティーでな」
霊夢「あ、うん……」
そう言い残し、魔理沙は再度飛び去りました。
霊夢は再び、小さな箱に視線を移します。
そして、何かを決心したかのような表情を浮かべると、霊夢は足早にその場所へと向かいました。
寺子屋。
クリスマスと言うこともあり、授業は午前中で終わっていました。
慧音も早々に帰ってしまい、この場所に居るのは霊夢と……。
霊夢「………」
霊夢の目の前に居るのは、人間の里に住む男の子でした。
歳は涼花ちゃんと同じくらいでしょうか。
目が前髪で隠れた、いわゆる目隠れ系の可愛らしい男の子。
その男の子からケーキを貰ったのは、今日の朝の事でした。
博麗神社にやって来た男の子は少し照れながら、霊夢にクリスマスケーキを手渡したのです。
それから魔理沙と里の見回りをするまで、霊夢はずっと悶々としていました。
旧知の間柄なら、こう言ったプレゼントを貰うことも少なくありませんでしたが、これが里の人間となると話は別です。
霊夢は、先代と比べて人望が厚いと言うわけでもありませんし、何よりこのようなプレゼントを、里の人間から貰うことも滅多にありませんでした。
確かに、博麗霊夢は異変解決の専門家で英雄かもしれません。
しかし、それとこれとは話が別なのです。
霊夢はすっかり慣れていた事でしたが、今回のように唐突にプレゼント攻撃をされると、どうして良いのか分からなかったのです。
本当に貰って良いのか。貰う資格が、自分にあるのか。いっそのこと返してしまおうか。
霊夢はその事ばかりを考え、ずっと悶々としていたのです。
…しかし、目の前には男の子。
このまま黙っていては埒が明きません。
霊夢が男の子に声をかけようとしましたが、先に言葉を発したのは男の子の方でした。
男の子「霊夢さん。ケーキはもう、食べてくれましたか?」
霊夢「え? ああ……」
霊夢は無意識に、箱の入った袖を後ろに隠していました。
本当の事を言うか、嘘をついてしまおうか。
霊夢「……まだ、食べてないわ」
男の子「そうですか…。あのケーキは自信作なので、必ず食べてほしいんです」
霊夢「あれ、自分で作ったの?」
男の子「はい。どうしても霊夢さんに食べてほしくて」
霊夢「………」
いつも通りに、いつも通りに。
いつも通り、里の人間に接する態度で良いのよ。
霊夢は自分にそう言い聞かせました。
霊夢「食べてほしいって、どういう意図があっての事なの?」
男の子「そ、それは…」
男の子は俯いてしまいました。
しまった、少し冷たく言い過ぎただろうか。
霊夢はふと後悔しましたが、男の子は冷たい態度に対して俯いたわけではないようです。
それはむしろ、彼なりの決意の現れだったのかもしれません。
男の子「僕……霊夢さんが好きです!」
霊夢「っ!!」
男の子「強くて、格好良くて、それでいて綺麗で……僕たち人間を妖怪達から守ってくれて……僕、そんな霊夢さんが好きなんです!!」
霊夢「………」
ある程度予想していた答え。
でも、そんな事はないだろうと高を括っていた霊夢にとって、男の子の純粋な気持ちはとても眩しく。
男の子「いつも守ってくれる霊夢さんに、何かお礼が出来ないかと思って……クリスマスだし…ケーキを作ろうと思って……それで……それで……」
今にも泣き出してしまいそうな男の子の頭を、霊夢はそっと撫でました。
霊夢「ありがと。その気持ちだけで、とても嬉しいわ。あのケーキは、大切に食べるわね」
その言葉を聞いて、男の子は涙を拭き、満面の笑みを浮かべました。
薄雲覆う幻想郷は、降雪を予感させるほどの寒さでした。
しかし、男の子を見送った霊夢の心は、そんな寒さを感じさせないほど、暖かくなっていました。
こんな心の暖かさはいつ以来だろうかと、霊夢はふと思い返していました。
そんな霊夢の背後から。
魔理沙「早苗とか菫子かと思ったが、まさか里の子だったとはな」
ニヤけた顔の魔理沙が、声を掛けてきました。
おそらく、用事があると言うのは嘘で、今まで霊夢の様子を見守っていたのでしょう。
魔理沙「しかし、まさか霊夢がショタコンだったとはな」
霊夢「ショ、ショタコン言うな!」
顔を真っ赤にした霊夢は魔理沙を捕まえると、それは見事なコブラツイストを決めて見せました。
魔理沙「イテテテッ!! ギブ! ギブ!!」
霊夢「と言うか覗き見なんて、良い趣味してるじゃない?」
魔理沙「霊夢のショタコンよりは良い趣味かと…イタタタタッ!!」
たまには人間の、純真無垢な想いを受け止めるのも悪くないと、コブラツイストを決めながら霊夢は思うのでした。
そして霊夢は、今後しばらく、魔理沙からショタコンと弄られる日々を送ることとなるのでした。
終わり