涼花ちゃんストーリーまとめサイト(改)
霊夢と男の子
バレンタイン。
普段から特に意識している行事ではありませんでしたが、今年は妙にソワソワしているのが霊夢です。
霊夢はクリスマスのあの一件から、今年のバレンタインはどうしようかと悩んでいたのです。
そこで霊夢は、そう言った類いのことに精通している魔理沙に、助言を求めていました。
魔理沙「なるほど。やっぱり霊夢はショタコンだったか」
霊夢「殴るわよ?」
魔理沙「しかし霊夢よ。これは私より、お前の方が精通しているのではないか?」
霊夢「どういう意味?」
魔理沙「そのままの意味だぜ。レミリア、紫、早苗等々。バレンタインでお前が貰ったチョコの数だけ、そう言った経験があったはずだ」
霊夢「全員、幻想少女でしょ? 私だって相手が女の子だったら、それなりの対応が出来るけど…」
魔理沙「男が相手だと勝手が違うか」
霊夢「そう言うこと。こんなこと、魔理沙には絶っっっ対に頼みたくなかったけど」
魔理沙「本当に頼みたくなかったんだな…」
霊夢「でも、他に頼れる奴も居ないのよ。だからお願い。力を貸して?」
魔理沙「まあ、他ならぬ霊夢の頼みだ。引き受けてやるさ」
霊夢「…あんたが安請け合いするなんて、何か企んでるわね?」
魔理沙「当たり前だよなぁ?」
霊夢「何が望み?」
魔理沙「そうだな…。納戸の奥に隠してるつもりの、甘い甘〜いモノを所望するぜ♪」
霊夢「な、なんであんたが、あれの事を知ってるのよ」
魔理沙「何で私が知ってるかより、お前がそれを差し出してくれるかどうかだぜ?」
霊夢「くっ! …分かったわ。こちらも、背に腹は代えられないからね」
魔理沙「交渉成立だな。それじゃあまずは、そのショタを確認してくるぜ」
霊夢「確認?」
魔理沙「安心しろ。別に変なことは聞かないし言わないぜ」
霊夢「そうじゃなくて、何を確認するのよ?」
魔理沙「色々とな。そのショタの事が少しでも分かれば、お前が取るべき行動も分かるだろ」
霊夢「そういうこと…。あと、ショタって言うな」
魔理沙「今の時間なら寺子屋か。じゃあ、ちょっと行ってくるぜ」
魔理沙は寺子屋へと飛んでいきました。
霊夢「あいつ、大丈夫かしら? ……今更ながら、不安になってきたわね」
寺子屋。
ここでもバレンタイン特有の賑わいを見せています。
…が、そこは子供なので、どこか微笑ましいものがあります。
魔理沙「…お、あいつだな?」
霊夢から男の子の特徴を聞いていた魔理沙は、すぐに見つけ出すことが出来ました。
そして男の子の腕を掴むと、寺子屋の裏手へと強引に連れていきました。
魔理沙「さて。お前が、霊夢を篭落しようとしてるガキだな?」
男の子「ろ、ろうらく?」
魔理沙「まずは…」
魔理沙は、男の子の目が前髪で隠れていることが気になりました。
…いいえ、気に入らなかったと言った方が正しいでしょう。
魔理沙「お前、男の癖に前髪伸ばすなよ。ほら、こうやって」
男の子「なっ!? や、やめてください!」
魔理沙は強引に、男の子の前髪を左右に分けました。
魔理沙「…はぁ!?」
男の子のその顔は、女の子と見間違うほどに可愛らしく…いや、どこからどう見ても女の子です。
男の子「やめてください!」
男の子は呆気に取られている魔理沙の手を振りほどくと、再び目を前髪で隠しました。
そこで魔理沙は、ある疑念を抱きます。
魔理沙(こいつ、服装は男の子だけど、本当は女の子なんじゃないか? …だとしたら、クリスマスの時にケーキを作って渡したのも頷ける話だ。……確かめるか?)
魔理沙は男の子に近付きました。
危険を察知した男の子は魔理沙から距離を取ろうとしますが、後ろは寺子屋の壁。
逃げ場はありません。
男の子「ち、近付かないでください」
魔理沙「お前が男か女か確かめるだけだ。なに、別に痛いことをするわけでもない。むしろ気持ちいいかもな」
男の子「な、何をするつもりですか!? 近付かないでください!!」
もはや暴走状態の魔理沙は、男の子の服に手を掛け…。
「夢想封印!!」
刹那、魔理沙の後頭部に弾丸が直撃。
伸びてしまった魔理沙を、夢想封印を放った霊夢が回収します。
霊夢「まったく…何やってんのよ」
男の子「あ、あの……」
霊夢「ああ、こいつはただの人間モドキよ。気にしないで」
男の子「は、はあ……」
霊夢は魔理沙を神社まで連行しました。
目を覚ました魔理沙を待っていたのは、やはり霊夢からの説教です。
魔理沙「いやぁ、スマンスマン。霊夢より先に、あの男の子を食っちまうところだったぜ」
あっけらかんとする魔理沙に、霊夢はデコピンをお見舞いしました。
魔理沙「いってぇ!!」
霊夢「冗談も度が過ぎると笑えないわよ?」
魔理沙「可愛いもんだろ?」
霊夢「今度は鼻ね」
魔理沙「まっ!! 鼻にデコピンはマジで泣くからやめろ!!」
霊夢「やっぱり、あんたに相談したのが間違いだったわね」
魔理沙「そうは言うが、私は有益な情報をだな」
霊夢「どんな情報よ」
魔理沙「その前に確認するが、霊夢はあの男の子の素顔を見たことあるか?」
霊夢「ああ……前髪で目を隠してるから、素顔は見たこと無いわ」
魔理沙「私は確認したんだが、あれは女の子と間違えられるレベルの可愛い顔をしてたぜ。いや、むしろ女の子だ」
霊夢「へえ」
魔理沙「…それだけか? もしかしたら本当は女の子なのかもしれないぜ?」
霊夢「女の子みたいな顔がコンプレックスだから、前髪で隠してるんでしょ?」
魔理沙「ん? …………ああ、そう言うことか」
霊夢「少しは考えなさいよ…。で?」
魔理沙「うん?」
霊夢「私は、どういう意図を持って、あの子にチョコを渡せば良い?」
魔理沙「なんだ、渡すつもりだったのか?」
霊夢「そりゃあ……クリスマスケーキ貰っちゃったから、そのお返しに。それと、こう言うのはもう終わりにするように言うつもりだった」
魔理沙「なんだ。お前の中では、もう答えは出てたんだな」
霊夢「当たり前でしょ? それに、あの子は幼すぎる」
魔理沙「愛さえあれば年の差なんて……ってわけでもないもんな」
霊夢「あら、あんたも分かってるんじゃない」
魔理沙「私達は妖怪退治を生業としてる。それは遊び(ごっこ)とは言え、私達にとっては真剣(弾幕)勝負だからな」
霊夢「深く関われば、悲しみも深くなるものよ」
魔理沙「確かにその通りだが……お前は、それで良いのか?」
霊夢「ええ」
魔理沙「そうか。やっぱりお前は非情だな」
霊夢「誰彼構わず仲良くなろうとする魔理沙も、じゅうぶん非情だと思うけどね」
魔理沙「いずれにせよ、答えが決まってるなら実行すれば良いさ。だが、これは親友としての忠告だ」
霊夢「?」
魔理沙「答えが決まっているとは言え、言葉は選べよ? じゃないと、ずっと後悔することになるからな」
霊夢「……分かったわ」
再び寺子屋。
霊夢は先ほど魔理沙が連れ出した寺子屋の裏手に、男の子を呼び出しました。
霊夢はひとつ、深呼吸をします。
そして。
霊夢「はい、これ」
男の子「これは?」
霊夢「今日はバレンタイン。と言うことで、クリスマスケーキのお返しに、このチョコをあげるわ」
男の子「あ、ありがとうございます!」
男の子は満面の笑みを浮かべています。
霊夢「言っておくけど、深い意味なんて全く無いから」
男の子「それでも、凄く嬉しいです。ありがとうございます!」
男の子の無垢な表情。
そんな笑顔を見て…霊夢は…。
翌日。
炬燵に俯せで入っている霊夢は、顔を伏せ低く唸るような声を上げていました。
見かねた魔理沙が霊夢に、昨日のことを尋ねます。
魔理沙「…渡せなかったのか」
霊夢「違う……」
魔理沙「……受け取ってもらえなかったのか」
霊夢「違うわよ……」
魔理沙「それじゃあ……まさか霊夢、男の子を食っちまったんじゃ!?」
霊夢「違うわよ!!」
魔理沙「だったら、どうしたと言うんだ? チョコを渡せたんだから、そんなうなだれる必要もないだろ?」
霊夢「それがさ? あの子の無垢な表情を見てたら…」
魔理沙「ムラムラして食っちまったのか!?」
霊夢「何でもかんでもソッチに繋げるな! ……あの子の笑顔を見てたら、何も言えなくなっちゃったのよ」
魔理沙「なんだ、そう言うことか」
霊夢「今更、私のことを好きになるな。なんて言えないしさ」
魔理沙「私は、これで良かったと思うぜ?」
霊夢「……え?」
魔理沙「言っただろ? 言葉を選べって。何も言えなくなったのなら、言わないのが正解だ。無理に言葉を探す必要もないんだぜ?」
霊夢「でも……」
魔理沙「まあ、ひとつ言えるのは…あの子は涼花ちゃん達とは違うってことだ」
霊夢「どういう意味?」
魔理沙「涼花ちゃんは普通の子供じゃない。能力持ちだからな。ゆーちゃんも、外の世界の住人だ。だから、皆があそこまで手を掛ける。だが、あの男の子はそうじゃない。幻想郷に暮らす、ただの子供だ。あの子が、霊夢にとって特別な存在になるかは霊夢次第だが、狭い幻想郷の日常からすれば、あの子はただの人間なんだぜ?」
霊夢「………」
そこまで言っても尚、腑に落ちないと言った表情をする霊夢を、魔理沙が諭します。
魔理沙「博麗霊夢。お前の能力は何だ」
霊夢「……空を飛ぶ程度の能力」
魔理沙「何者にも縛られない、自由であるための能力だ。それが、博麗の巫女であるお前の能力。そして、お前は勘が鋭い。今回も、お前自信の勘を信用するべきなんだぜ」
霊夢「……あんたに説教されるとは。私もまだまだね。気が晴れた訳じゃないけど、少しは楽になったわ。ありがと」
魔理沙「うむ。……と言うわけで、約束の報酬をいただこうか」
霊夢「あんたは……そう言うところは本当にしっかりしてるわね」
魔理沙「まあな♪」
霊夢「褒めてない」
こうして、霊夢と男の子の恋物語はひとまずこれまで。
霊夢にとっても、そして男の子にとっても、きっと、これで良かったのです。
終わり