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ありがとう


三月九日。
それは、涼花の兄の誕生日でもありますが、そんな些細で些末な事はどうでもよく、実は語呂合わせで感謝の日でもあるのです。

そう、感謝。

普段使う「ありがとう」と言う言葉も、改めて気持ちを込めて言うとなると、中々に気恥ずかしくあるものです。
それでも、この「ありがとう」と言う言葉は魔法の言葉で、言った方も言われた方も、自然と笑顔になるのです。


涼花「霊夢お姉ちゃん、魔理沙お姉ちゃん♪ いつもわたし達の面倒見てくれて、ありがとう♪」
霊夢「…急にどうしたの?」
魔理沙「この悪ガキは、何か企んでやがるな?」
涼花「違うよ…。今日、三月九日は感謝の日なんだって」
霊夢「感謝の日…」
魔理沙「そう言えば、去年か一昨年にそんなこと言ってた気がするぜ」
涼花「だから、日頃の感謝を伝えようと思ってね♪」
魔理沙「それは良い心掛けだな」
涼花「と言うわけで、霊夢お姉ちゃんも魔理沙お姉ちゃんも、お互いにありがとうを言った方が良いんじゃない? 二人は古い仲だから、あまり言う機会も無いんじゃないかな?」
霊夢「そんなこと……あるわね」
魔理沙「そうだな。あまり、面と向かってありがとうと言う事は少ないぜ」
涼花「だから、ね? いっそここでありがとうって言えば良いじゃない♪」
魔理沙「やっぱり何か企んでる顔してるな」
霊夢「でも、ありがとうって言葉は、ちゃんと伝えるべきね。魔理沙」
魔理沙「うん?」
霊夢「何だかんだで腐れ縁だけど、いつもありがと」
魔理沙「おう。こちらこそだぜ。いつも退屈で愉快なひとときを過ごせて、感謝してるぜ。ありがとな」
涼花「………」
霊夢「あら、涼花ちゃん。そんな不機嫌そうな顔して、どうしたのかしら?」
涼花「わたしの期待してた展開と違うんだもん」
魔理沙「どうせお前は、私と霊夢が顔を真っ赤にしてモジモジしながら、互いにありがとうって言うのを期待してたんだろ?」
涼花「うぐ……」
霊夢「図星ね。だからこそ、一切照れずに言ってやったわ」
涼花「もう。そんなんじゃ面白くないじゃん」
霊夢「面白がるな。……ところで、涼花ちゃんはゆーちゃんに、ありがとうって伝えたの?」
涼花「あ、まだ伝えてないや」
魔理沙「ゆーちゃんは今日も幻想郷に来てるのか?」
涼花「うん。今日は紫お姉さんの所にいるはず」
霊夢「紫の?」
魔理沙「…悪巧みの予感がするぜ?」
霊夢「じゃあ、冬眠から叩き起こすついでに、涼花ちゃんを連れていきますか」
魔理沙「私も、マヨヒガに用事が出来たから、一緒に行ってやるぜ」


そんなこんなでマヨヒガ。
三月とは言えまだ肌寒く、霊夢達を出迎えたのは藍のみでした。


藍「おや、お前達の方から出向くとは珍しいな」
霊夢「ちょっと、紫を叩き起こしにね」
魔理沙「マヨヒガの、幸運を呼び込む家財道具を借りに」
涼花「ゆーちゃんに会いに」
藍「不純な動機が二名居るが…まあ良いだろう。紫様なら、庭で至音と話をしているはずだ」


ゆーちゃん「涼花ちゃんは、良い子です。それ以上は何も」
紫「そう。だったら良いんだけど。ところでゆーちゃんは、幻想郷(こちら側)に来るようになっても、能力のひとつも開花しないわね。それに関して、思うところはある?」
ゆーちゃん「……正直なところ、幻想郷の皆さんの能力は、羨ましいって思うこともあります。でも、それだけ。別に、能力が欲しいとは思いません。私は、今のままでも満足してるから」
紫「そう……。分かったわ」
ゆーちゃん「ただ……」
紫「うん?」
ゆーちゃん「涼花ちゃんには、何か不思議な力があるような気がしてます。たぶん、悪い力じゃないと思うんだけど…時々、不安にもなるんです」
紫「どういうところが不安?」
ゆーちゃん「それは…」
紫「……まあ、貴女の言いたいことも、分からないではないわ。でも、貴女が思っているほど、涼花ちゃんの能力は危険なものでも、幻想に囚われるようなものでもないの。そこは安心してほしいわ」
ゆーちゃん「………」

涼花「紫お姉さん♪ ゆーちゃん♪」

紫「あら、噂をすれば。この話はここまでにしましょう。また、時間をおいてから、この続きを話しましょうか」
ゆーちゃん「はい……」
紫「…そう言えば、今日は感謝の日だそうよ。貴女のお友達がどんな能力を持っているにせよ、貴女は彼女にとって大親友でしょう? だったら、そんな暗い顔しないで、笑顔で感謝の言葉を伝えなさい」
ゆーちゃん「そう…ですね…」

涼花「ゆーちゃん。紫お姉さんと、何の話をしてたの?」
ゆーちゃん「色々とね。涼花ちゃんは、どうしてここに?」
涼花「今日は感謝の日だから、ゆーちゃんにありがとうを言いに来たの♪」
ゆーちゃん「そっか」
涼花「ゆーちゃん。わたしの友達でいてくれて、ありがとう♪ これからもずっと、わたしと友達でいてください♪」
ゆーちゃん「こちらこそ、いつも笑顔をくれて、ありがとう。涼花ちゃん、大好きだよ」
涼花「えへへ♪」

魔理沙「仲睦まじいな。ほんと、二人は良い親友だぜ」
霊夢「ところで紫。ゆーちゃんと、何を話してたの?」
紫「彼女の能力と、今後についてよ」
魔理沙「お? ついにゆーちゃんも、能力に目覚めたか?」
紫「逆よ。幻想郷に来るようになってからそれなりに経つけど、能力開花の兆しが全く無いの。だから、能力の事で話をしていたのよ」
霊夢「で? ゆーちゃんは何て?」
紫「自分の能力の開花については、特に気にしていないそうよ。無くても困らないって。ただ、涼花ちゃんの能力については、少し不安に思ってるみたい」
魔理沙「そう言えば、ゆーちゃんは涼花ちゃんの能力を知ってるのか?」
紫「不思議な力がある程度には認識してるわ。それが、どの様な能力かは知らないみたいだけど」
霊夢「知らない方が良いわ」
魔理沙「涼花ちゃんも、話すつもりは無いだろうからな」
紫「この事については、もう少しゆーちゃんと話をしたいところね」
霊夢「変なこと口走らないでよ?」
紫「大丈夫。二人の友情を引き裂くような真似はしないわ」
霊夢「だと良いんだけど」
紫「……さて、貴女達も、私に何か言いたいことがあるんじゃない?」
魔理沙「まるで子供のような目で言ってきやがった」
霊夢「そうね…幸運を呼び込む家財道具を二人分用意しなさい」
紫「あんたは…」
霊夢「と言うのは半分冗談」
魔理沙「半分本気なんだよなぁ」
霊夢「あんたは本当に、余計なことしかしないけど…それでも一応、異変とかの助言には感謝はしてるわ。ありがとう」
魔理沙「迷惑を被ることも多々あるが、それでもやる時はやるからな。私も一応、感謝してるぜ」
紫「………」
霊夢「何よ?」
紫「いや、素直にありがとうと言ってくれるとはとは思わなくて」
霊夢「こんな日じゃなきゃ、まず言わないわね」
魔理沙「だな」
霊夢「それに、感謝してるってのは嘘じゃないからさ。普段は迷惑極まりないけど、それでもあんたには感謝してる」
紫「も、もう。そんなに言っても、何も出ないわよ?」
涼花「あ、紫お姉さんが照れてる〜♪」
ゆーちゃん「珍しいね〜♪ それでもってかわいいね〜♪」
紫「ちょっと…からかわないで?///」


ありがとう。
それは魔法の言葉。
自ずと笑顔になれる、素敵な魔法。
大好きなあの人へ、お世話になってるあの人へ、そして親しい友人へ。
ありがとうを送る。それはとても素敵なことなのです。



終わり