涼花ちゃんストーリーまとめサイト(改)
香雪蘭
太陽は沈み、辺りに夜の帳が下りた。
外の世界と幻想郷の狭間に戻った霊夢は、手紙とリボンの事をさとりに説明した。
さとり「つまり、そのリボンと手紙があれば…」
霊夢「幻想郷と外の世界の思い出が繋がる。…涼花ちゃんも、心を開くかも…」
さとり「…行きましょう、涼花ちゃんの夢の中へ」
霊夢「ええ」
二人は涼花の傍で胡蝶夢丸、胡蝶夢丸ナイトメアを飲み込んだ。
涼花の夢
そこは、様々な夢が入り乱れた、歪な空間だった。
そして、その夢一つ一つは、涼花の思い出の夢だった。
良い思い出も悪い思い出も全て、夢として見ている。
そう…ここは、涼花が存在していく上で、無くてはならない思い出により構成された夢。即ち、涼花そのものなのである。
霊夢「……これは、私達との思い出かしら……」
さとり「こっちは、宴会の時の思い出ですね」
霊夢「でも……」
霊夢は辺りの夢を見渡す。
霊夢「……外の世界の思い出は無いわね」
さとり「では、外の世界の思い出は、いったい何処に……?」
???「何処にあるのか、教えてあげましょうか?」
さとり「…やはり現れましたね、夢魔」
夢魔「……外の世界の思い出は、涼花ちゃんの精神体の傍にある。ここは、涼花ちゃんが拒絶した思い出達……直に全て消えるわ」
霊夢「…そして、外の世界の思い出と共に、自分自身も消えようとしているのね」
夢魔「そう……最後に残るのは、涼花ちゃんとあの子との思い出……。その思い出を抱え、涼花ちゃんは消滅する……幻想を拒絶してね。……全ては、涼花ちゃんが望んだことなのよ……」
霊夢「……………」
夢魔「……もうすぐ、ここも崩壊を始めるわ。貴女が手に入れた思い出と絆も、意味を成さなくなる」
霊夢「……例え思い出を消しても、この絆だけは消すことは出来ないわ。だから、私達はここに居る」
夢魔「そう……ならばその絆…試してみましょうか。失色『忘却の夢』」
…………誰?
……わたしに入ってきたのは……誰?
……わたしは……知ってる……?
あの人達を……知ってる……?
霊夢「回霊『夢想封印-侘-』!」
さとり「想起『ストロードールカミカゼ』!」
夢魔「くっ!紅夢色『血塗れモーラ』!」
……そうだ……あれは……
霊夢お姉ちゃんに……さとりお姉ちゃん……?
でも……どうして……?
どうして……ここに……?
さとり「勝負……ありましたね」
夢魔「ぐっ!……はぁ……はぁ……ま、まだまだ……」
待って……
夢魔「り、涼花…ちゃん……」
涼花「お願い……待って……」
夢魔「でも!」
涼花「……お願い……」
夢魔「……………」
涼花「……霊夢お姉ちゃん……さとりお姉ちゃん……どうして?……どうして、ここまで来たの?」
霊夢「貴女に、ゆーちゃんの気持ちを伝えるためよ」
涼花「ゆーちゃんの……気持ち……?」
霊夢は、紫苑からの手紙を涼花に手渡した。
涼花「これは……ゆーちゃんの……」
霊夢「…読んでみなさい」
涼花は、至音からの手紙を読み始めた。
そこに書かれていた、至音の気持ち、願い、そして、涼花への想い。その全てを涼花は受け止めた。
涼花「ゆーちゃん……ありがとう……出来れば……また、会いたかったなぁ……」
霊夢「何を言ってるのよ、また会えば良いじゃない。こんな事は、もう終わりにして。…ね?」
涼花「……でもね?……もう、遅いんだ……」
時刻は無情にも、午前零時を回ってしまった。
そう、あの宴会から、一週間が経過してしまった。
夢の空間が崩壊を始める。
涼花の消滅が始まってしまったのだ。
夢魔「涼花ちゃん……」
涼花「夢魔……今までわたしを守ってくれて……本当にありがとう……」
夢魔「う……うぅ……」
涼花のその言葉に、夢魔は声を上げ、泣きながらその場に崩れ落ちた。
涼花「……霊夢お姉ちゃん……さとりお姉ちゃん……ここまで来てくれて……ゆーちゃんの気持ちを伝えてくれて……わたしの為に悲しんでくれて……ありがとう……。本当に……ありがとう……」
涼花の体が足元から、光の粒となって消えていく。
嬉しかったこと、悲しかったこと、楽しかったこと、怒ったり、泣いたり、笑ったり……幻想郷でのことや、外の世界でのこと、霊夢やさとり、紫や四季映姫、幻想郷に住む者達、RYO、RYOの弟、リラ、外の世界で出会った者達……そして……ゆーちゃん……。
あらゆる記憶が…思い出が今、消えようとしている。
そう思った時……。
……やだ……
涼花「……!!」
……いやだ……
……消えたくない……
……忘れたくない……
それは、無意識の内に涼花の口から発せられた、嘘偽りの無い本当の気持ちだった。
いやだ……いやだ……
……仕方がない……?
みんなのことを……忘れたくない……
それも……仕方がない……?
……違う……
いやだ……消えたくない……忘れたくない……
助けて……助けて……!
消えたくない!
涼花「いやあぁぁぁ!!」
涼花は頭を抱え、その場にうずくまった。
涼花「いやだ!…消えたくない!……忘れたくない!助けて……!助けて……!」
涼花が初めて見せた弱さ。心からの叫び。それを受け止めたさとりは、霊夢からリボンを受け取ると、ゆっくりと涼花の方へと歩み寄った。
そして、涼花の前へひざまずくと、優しく言い聞かせるようにこう言った。
さとり「大丈夫。私達が必ず助けます。だから、その気持ちを強く持って、放さないでください。そして、信じてください。……私達を。……その気持ちを……」
そしてさとりは、紫苑のリボンを涼花に手渡した。
さとり「思い出してください。涼花ちゃんの大切な人達を……大切な思い出を……」
涼花は、紫苑のリボンを強く握り締めた。
消えたくない。もう、かけがえの無い思い出を忘れたくない。もう一度、みんなに会いたい。……もっと生きたい。
そんな思いを、二度と離してしまわないように。
霊夢「さあ、帰ろう?」
霊夢はそっと手を差し伸べた。
涼花「……うん!」
涼花は、霊夢の差し伸べたその手を掴もうとした。
しかし……。
霊夢「えっ……?」
霊夢は涼花の手を掴むことが出来なかった。
涼花の手はすでに、光の粒となって消えていたのだ。
涼花の消滅は……終わっていなかった。
霊夢「涼花ちゃん!」
涼花「霊夢お姉ちゃん……助けて……助けて……」
霊夢は、涼花の体を抱き締めようとした。
しかし、涼花の体は霊夢の体をすり抜けた。
抱き締める事も出来ない……。触れることさえ出来ない……。
……どうすることも出来ないのか……?
涼花「いや……いやだ……消えたくない……消えたく……な……」
霊夢「涼花ちゃん、だめ!消えないで!」
涼花ちゃん!
霊夢は叫んだ。
しかし、その叫び声は涼花に届くこともなく、ただ夢の空間に虚しく木霊するだけだった。
霊夢「涼花ちゃん……涼花ちゃん……」
霊夢は、その場に崩れ落ち、そして泣いた。声にならない叫びを上げて……。
そして霊夢の手には、涼花が最後まで握り締めていたリボンだけが残されていた。
博麗神社
朝の日差しに、霊夢は目を覚ました。
幻想郷の空は澄み渡り、肌寒い風が心地好い。
博麗神社も元に戻り、またいつものように、何気ない幻想郷の一日が始まる。
しかし、その何気ない一日に、涼花の姿は無かった。
霊夢「あれから一週間か……」
さとり「あっという間でしたね」
霊夢「そうね……」
さとり「……やっぱり、寂しいですか?」
霊夢「それは…ちょっとはね……」
さとり「でも、大丈夫ですよ。涼花ちゃんは、必ず帰ってきます」
霊夢「……………」
さとり「ほら、噂をすれば……」
さとりの指差す方を見る。
そこには、涼花の姿があった。
涼花「霊夢お姉ちゃーん!さとりお姉ちゃーん!」
涼花は二人の方へと駆け寄った。
さとり「外の世界はどうでした?」
涼花「うん、久しぶりに帰れて、楽しかったよ♪ゆーちゃんの手術も成功したし♪」
さとり「それは良かったですね」
さとりは涼花の頭を優しく撫でた。
そう、涼花は消滅を免れたのだ。
あの時起こった、奇跡によって……。
一週間 涼花の夢
涼花は、光の粒となって消滅してしまった。
霊夢の手には、涼花が最後まで握り締めていたリボンだけが残されていた。
しかし、夢の空間は……涼花の思い出は、消えてはいなかった。
そしてその思い出達は、まるで走馬灯のように、霊夢の手に残されたリボンへと流れ込んだ。
全ての思い出がリボンに流れ込んだ時、リボンが眩く輝きだした。
それは、霊夢があの時、リボンを見付けたときに見た、あの暖かな光だった。
そして……。
涼花「……霊夢お姉ちゃん」
霊夢「涼花……ちゃん……?……涼花ちゃん!」
霊夢は、涼花を力強く抱き締めた。
居る…涼花は今、確かにここに居る……。それを確かめるように……。
さとり「涼花ちゃん……良かった……」
さとりは涙を拭いた。
そして、上空を見上げた。
そこには、夢魔に消された筈のRYOともう一人、見たことの無い少女の姿があった。
さとり「なるほど……貴方達が……」
少女は、RYOに何かを囁くと、何処かへと消えてしまった。
そしてRYOは、涼花の傍へと降り立つと…。
涼花「お兄ちゃん……」
RYO「……涼花」
優しく、しかし力強く、涼花を抱き締めた。
RYO「……ごめん……涼花……」
涼花「……わたしの方こそ……ごめんなさい……」
RYO「……さあ、帰ろう。……皆の所へ」
涼花「……うん」
こうして涼花は、自身の存在をこの世に留めることが出来た。
外の世界、幻想郷…全ての素敵な思い出と共に…。
そして……涼花に関わった全ての人々は、一週間に渡る長い夢から覚めた。
誰一人として、涼花の事を忘れずに。
無事、夢の空間から戻った涼花は……。
霊夢「……外の世界へ?」
涼花「うん。ゆーちゃんの事も気になるし、このリボンも返さなくちゃいけないから」
霊夢「そう……」
涼花「……そんな悲しい顔しないで?……大丈夫。もう、消えたりしないから」
紫「涼花ちゃん、そろそろ」
涼花「うん」
涼花は、紫の開いたスキマ空間の方へと駆け寄った。
そして、こう言った。
涼花「じゃあね、また戻ってくるから」
そして今……。
さとり「リボンは返せました?」
涼花「うん♪それでね?これからもずっと、友達でいようねって、約束したの♪」
さとり「そうですか。そんな友達がいて、涼花ちゃんが羨ましいです」
涼花「…わたしにとって、さとりお姉ちゃんも霊夢お姉ちゃんも…大切な友達だよ♪」
霊夢「……!!」
さとり「涼花ちゃん……」
涼花「……だめ…かな…?」
さとり「…そんなこと無いです……ありがとう……涼花ちゃん……」
涼花「…えへへ♪」
霊夢「涼花ちゃん……」
霊夢は、涼花の体をそっと抱き締めた。
涼花「霊夢……お姉ちゃん……?」
霊夢「ありがとう………そして……おかえり……幻想郷へ……」
涼花「霊夢お姉ちゃん……」
ただいま
終わり