涼花ちゃんストーリーまとめサイト(改)


雨とぬえと忘れ傘と相合い傘


涼花「うぅ〜…びしょびしょ……。急に降ってくるんだもん……」

ここは人間の里の外れ。
買い物帰りに急に雨に降られてしまい、近くの大木の下で雨宿りを余儀なくされてしまった涼花ちゃん。
ここは涼花ちゃんの家と人間の里のほぼ中間。雨足も強くなってきて、完全に立ち往生です。



涼花「どうしよう……雨が上がるまで、ここで雨宿りかな……」

雨に濡れた体は次第に冷えてきました。
寒さと言うものは、人の不安を掻き立てます。
厚い雨雲のせいで辺りはすっかり暗くなり、不安はより一層大きくなっていきます。
そして、不安は徐々に恐怖へと変わっていきます。

涼花「……暗くて嫌だなぁ……」

この雨の中、人間や獣はどこかで雨宿りをしているか、もしくは外に出ようとは思っていないでしょう。妖怪も例外ではありません。
しかし、恐怖を抱いている今の涼花ちゃんには、何の変哲もない茂みや木の凹凸などが、何者かの顔に見えたりしていることでしょう。

涼花「……………」

その場にうずくまり、自分の体を抱き締める涼花ちゃん。
早く雨が上がってほしい。そうでなければ、傘を持った知り合いに通りかかってほしい。そんなことを考えていると…。

「きゃあぁぁ!」

涼花「!?」

遠くからこちらへと近づいてくる悲鳴に、一瞬体をこわばらせる涼花ちゃんでしたが、すぐに自分と同じ状況の人がこちらへ向かってきているのだと分かりました。

ぬえ「もうなんなのよ……せっかく気持ちよく散歩してたのにぃ……」

やって来たのは封獣ぬえでした。
彼女もまた、涼花ちゃんと同じ状況でした。
ぬえはまだ涼花ちゃんに気付いていません。

ぬえ「ちょうどいい大木があったけど…これは困ったわね……。何か傘の代わりになりそうなものは………ん?」

涼花「あ……」

目が合ってしまった涼花ちゃんとぬえ。

涼花「…こんにちは」

ぬえ「あ…うん……こんにちは……」

軽く挨拶を交わす二人でしたが、お互いほとんど面識がないため、気まずい空気が流れています。

ぬえ「えっと……涼花ちゃん…だったかしら?」

涼花「う、うん…。お姉ちゃんは…ぬえお姉ちゃん……だよね?」

ぬえ「ええ……」

涼花「………」

ぬえ「…こんなところで何を…って、聞くまでもないわね」

涼花「………」

涼花ちゃんの不安と恐怖心を察知したぬえは、雨空を見ながら独り言のように、しかし涼花ちゃんにもハッキリと聞こえるようにこう言いました。

ぬえ「私は妖怪だから風邪とか引かないけど、濡れるのも嫌だし、雨が上がるまでここで雨宿りしていこうかしらね」

涼花ちゃんはぬえの方を見ませんでしたが、小さくボソッと「ありがとう」と答えました。

それから、どれほどの時間が流れたでしょうか。
雨は更に激しさを増し、一向に止む気配を見せません。

ぬえ「うわ…結構吹き掛けてきたわね…。はぁ……ニーソも脱ぐしかないわね……」

そう言って、ぬえはニーソックスを脱ぎ始めました。
すると、隣から何やら視線を感じます。

ぬえ「…ん?どうしたの?」

涼花「あ……な、何でもない……」

そう言って真っ赤になった顔を背ける涼花ちゃんに疑問を抱きながらも、ぬえはニーソックスを脱ぎ、雨水を含んだそれを絞りました。
実は、ぬえがニーソックスを脱いでいる最中、涼花ちゃんの目線からはぬえの、水を含んで若干透けている純白が丸見えだったのです。
そんな光景をいきなり見てしまった涼花ちゃんは、顔を背けることしか出来なかったのです。

ぬえ「それにしても、雨上がらないわね…」

涼花「うん…」

ぬえ「…うわっ!?」

涼花「きゃっ!?」

二人を目掛けて、いきなり強い突風が吹いてきました。
雨の激しさも相まって、二人のやっと乾き始めた服は、再びびしょ濡れになってしまいました。

涼花「うぅ〜……」

ぬえ「…何なのよ、今日の天気は……」

と、ぬえはスカートの端を絞りながら愚痴をこぼします。
涼花ちゃんも同様に、スカートの端を絞りながら、言葉には出していませんが顔は不機嫌になっていました。
スカートを絞ると言うことは、ぬえに関しては純白が丸見えな訳ですが、今となってはそこを気にするほど心に余裕はないのです。
二人に、再び襲ってきた寒さと、それに伴った不安を抱き始めたとき。

???「あ〜めが〜♪ ふりし〜き〜る〜な〜か〜♪ たたず〜んで〜いる〜♪ 少女が〜♪ ひと〜り〜♪」

こんな雨の中、場違いなほど元気な歌声で、自分の持ち曲『万年置き傘にご注意を』に合わせてオリジナルの歌を歌っている多々良小傘が、二人が雨宿りをしている大木の元までやって来ました。

小傘「おやおやお二人さん。こんな所で何をしているのかな?」

ぬえ「見て分からないとは言わせないわよ?」

小傘「……濡れ場」

ぬえ「濡れてるけど意味違うし顔を赤らむな!」

涼花「濡れ場…?」

ぬえ「ほら、涼花ちゃんが疑問に思っちゃったじゃない…」

小傘「濡れ場って言うのはね」

ぬえ「説明するな!」

軽い漫才を見せられているような気分になる涼花ちゃんでした。

小傘「ま、冗談は置いといて、どう見てもお困りのようね」

涼花「いきなり降られたから…」

小傘「じゃあ、近くまで送りましょうか?」

ぬえ「そうしてくれると助かるわ」

小傘「え、ぬえも?」

ぬえ「なに?私が一緒じゃダメだって言うの?」

小傘「そうじゃないけど…ひとつの傘に三人は無理じゃない?せめて二人ずつじゃないと…」

ぬえ「ああ、それなら問題ないわ」

そう言ってぬえは、涼花ちゃんのそばに座り、背を向けてこう言いました。

ぬえ「ほら、私が涼花ちゃんをおんぶすれば、ギリギリ入れるでしょ?」

涼花「で、でも…」

ぬえ「大丈夫よ、ほら」

涼花ちゃんは躊躇いながらも、ぬえの背中に身を預けました。

涼花「大丈夫?重くない?」

ぬえ「平気よ、これくらい」

そう言って笑顔を見せるぬえ。どうやらぬえは涼花ちゃんのことが気に入ったようです。

小傘「ふふ♪なんだか姉妹みたいだね、お似合いよ♪」

ぬえ「…勝手に茶化してなさいよ」

と言いつつも、まんざらでもないぬえでした。

ぬえ「ん…もうちょっとそっちに行きなさいよ。肩が濡れるわ」

小傘「あ、それならこうすれば…」

そう言いながら、小傘はぬえに抱きつきました。

ぬえ「ち、ちょっと小傘!?」

小傘「ほら、これなら濡れないでしょ?」

ぬえ「離れなさい!」

顔を真っ赤にして抵抗を試みるぬえでしたが、小傘はがっちりしがみついていて離れません。
ぬえはしぶしぶ、そのまま歩いていきました。
暫くすると、背にいる涼花ちゃんが大人しくなっていることに気付きました。

ぬえ「…涼花ちゃん?」

声を掛けてみるも反応がありません。

小傘「あらあら、寝ちゃったみたいね」

ぬえ「ちょっとどうするのよ…涼花ちゃんの家まで送らなきゃならないじゃない…」

小傘「もともと、そのつもりだったんじゃないの?」

ぬえ「いや…近くまで送るだけと思ってたんだけど…」

小傘「ま、これだけぐっすり寝てたんじゃしょうがないよ。あとは、濡れてる服も着替えさせてあげないと」

ぬえ「なんでそこまでしなきゃいけないのよ…」

小傘「だって、風邪ひいちゃうよ?」

ぬえ「………」

すやすやと寝息を立てる涼花ちゃんを見ると、ぬえは大きなため息を吐きながら、しかし嫌な顔はせずにこう言いました。

ぬえ「……わかったわよ…。ただし、家に着いた時に涼花ちゃんが寝てたらね」

またしばらく歩いていると、ふと何かに気付いたぬえは小傘に訪ねました。

ぬえ「ねぇ、小傘」

小傘「ん?」

ぬえ「涼花ちゃんの家ってどこ?」

小傘「あれ?知ってて歩いてたんじゃないの?」

ぬえ「いや…よくよく考えてみたら、家はおろか涼花ちゃんが住んでる場所すら知らなかったわ…。小傘、あんたは涼花ちゃんの家がどこにあるか知ってる?」

小傘「この場合、知らないって言った方が面白そうだから知らない」

ぬえ「あんたねぇ…」

小傘「じ、冗談よ、冗談…。ちゃんと知ってるから案内するよ」

ぬえはやれやれと言う顔を浮かべながら、小傘に案内されながら再び歩き出しました。

それからしばらく歩いていると…。

ぬえ「あら…」

小傘「雨、上がったね」

ぬえ「涼花ちゃん、起きて」

涼花「ん〜…あ、わたし、寝ちゃったんだ…」

小傘「雨、上がったよ」

涼花「ほんとだ。きれい…」

ぬえ「…綺麗?」

涼花「ほら、あそこ」

二人が涼花ちゃんの指差す方向を見ると…。

小傘「わぁ〜…」

ぬえ「これは…」

雨が上がった青空には、それは見事な虹が架かっていました。

涼花「すごいね…」

小傘「うん。こんなに綺麗な虹は見たことがないよ」

ぬえ「私もだ…」

三人はしばらくの間、時の流れも忘れ、その虹に見入っていました。

きっとさっきの雨は、私達にこの光景を見せるために、神様が用意してくれたものなのではないか?

そう、心の片隅で思う涼花ちゃんでした。


涼花「送ってくれてありがとう♪」

ぬえ「どういたしまして」

小傘「綺麗な虹も見れたし、雨の日の散歩っていうのもなかなか良いものだね」

ぬえ「それじゃあ、私達はこの辺で」

涼花「あ、あの……」

ぬえ「ん?」

涼花「また…会えるかな?」

小傘「もちろんよ♪」

ぬえ「私達は命蓮寺に住んでるから、いつでも遊びに来なさい」

涼花「う、うん!」

小傘「バイバーイ♪」

ぬえ「…またね」

涼花「バイバーイ♪」

これが、幻想郷に訪れてから初めて出来た、涼花ちゃんのお友達との出会いのお話です。


終わり