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納涼!


まずは納涼と避暑の違いを説明しましょう。
避暑とは読んで字の如し、暑い場所から涼しい場所へ避難することを意味します。
次に納涼とは、かき氷などを食べたり風鈴の音を聞きながらうちわで扇いだり怪談を聞いてゾッとしたりと、どちらかと言うと暑さを忘れるよう工夫することを言うそうです。



魔理沙「あ゛〜つ゛〜い゛〜」
霊夢「五月蝿い…余計に暑くなるじゃない…」
魔理沙「何とかならんのか?」
霊夢「何をどうしろってのよ…打ち水しようにも、したところから蒸発しちゃって逆効果だし…」
魔理沙「水場も蒸すだろうな…まったく、今年の暑さは異常だぜ…異変か何かじゃないのか?」
霊夢「現実を見なさいよ…」
魔理沙「言ってみただけだよ…それにしても暑い…暑くて溶けてしまいそうだ…雨乞いとか出来ないのか?」
霊夢「出来ない」
魔理沙「…即答するなよ…しっかし暑い…暑い暑い、暑すぎて思考回路はショート寸前だぜ」
霊夢「魔理沙、今度暑いって言ったら罰金ね」
魔理沙「鬼かよ…」
霊夢「良いじゃない。お賽銭を入れると思えば」
魔理沙「だから嫌なんだって…」
霊夢「はぁ…それにしてもあつ…」
魔理沙「だったらお前も罰金だぜ?」
霊夢「うぐ……」
早苗「霊夢さん、魔理沙さん。やっぱりここに居ましたか」
霊夢「早苗?何か用?」
早苗「今、里で納涼祭をしているんです。お二人の姿が見当たらなかったので、もしかしたらと思ったんですが…お二人は参加されないんですか?」
霊夢「いや、参加しないも何も…私、初耳何だけど…」
魔理沙「私も知らなかったぜ。…本当に里でやってるのか?」
早苗「本当ですよ。今見てきたんですから間違いありません」
霊夢「………」
魔理沙「とりあえず行って見ようぜ?この暑さにもうんざりしていたところだ」


人間の里


霊夢「へぇ、結構賑わってるじゃない」
魔理沙「だな」
早苗「だから言ったじゃないですか。本当に知らなかったんですか?」
魔理沙「ああ」
霊夢「同じく」
早苗「魔理沙さんはともかく、霊夢さんが知らないというのはおかしな話ですよね」
霊夢「そうね…里での事なら、話だけでも来ると思うけど…」
魔理沙「まあまあ、詮索は後だ。今は楽しもうじゃないか」
霊夢「これで妖怪の仕業だったらどうするのよ?」
魔理沙「その時はその時だ」
霊夢「あんたね…」
早苗「まあ、良いじゃないですか?私達が居るんですし、何とかなりますよ」
霊夢「…はぁ」


霊夢「あら、かき氷…」
チルノ「へいいらっしゃい!何にする?」
霊夢「お前か…と言うか、何やってんのよ…」
大妖精「見ての通りだと思いますけど…」
霊夢「見ての通りだから聞いてるのよ」
大妖精「い、意味が分かりません…」
霊夢「…まあいいわ。イチゴ味ひとつ」
大妖精「あ、お買い上げですね?ありがとうございます!イチゴ味一丁♪」
チルノ「練乳一丁!」
霊夢「言ってないし…こいつに作らせて大丈夫なの?」
大妖精「そのための私ですから。ほら、チルノちゃん。こっちのシロップだよ」
チルノ「あいよ!へいおまち!」
霊夢「ありがと」
大妖精「ありがとうございました♪」
霊夢「ん〜♪冷たくて美味しいわ♪…チルノの無駄な元気と、なんであいつ等がかき氷屋やってんのかは謎だけど…」


魔理沙「お、ラムネじゃないか」
レティ「一本どう?」
魔理沙「は!?なんでお前が居るんだよ!!お前は冬限定じゃないのかよ!!」
レティ「なんでって聞きたいのはこっちよ?あのスキマ、いきなり出てきたと思ったら」
魔理沙「ああ、皆まで言うな。だいたい分かるから」
レティ「そう。それでどうする?買ってく?」
魔理沙「そうだな…一本貰うか」
レティ「毎度♪」
魔理沙「…おおっ!…キンキンに冷えてやがるっ!あ、ありがてぇ!」
レティ「そりゃあ、私がキンキンに冷やしといたからね」
魔理沙「…これ冷やすのと寒気って、あまり関係なくないか?」
レティ「細かいことは良いのよ」
魔理沙「そうかい。そう言えばお前、寒気を操る妖怪のくせに、よくこの気温でバテないな…」
レティ「それは、私の側に来れば分かるわよ」
魔理沙「?……うぉっ!涼しい!と言うか寒いくらいだ!」
レティ「能力も使いようなのよ」
魔理沙「ほえ〜。ほんのちょっとだが見直した」
レティ「出来れば盛大に…って、あんまりベタベタしないでくれない?」
魔理沙「良いじゃないか、涼しいんだから」
レティ「ああもう!暑苦しいわね!離れなさい!」



早苗「あ、焼きそば」
勇儀「おや、守矢の巫女じゃないか」
早苗「勇儀さんは焼きそば屋さんなんですね」
萃香「おーい、さ〜な〜え〜」
早苗「あら、萃香さん」
萃香「どう?一杯買ってかない?」
早苗「お、お酒…ですか…」
萃香「早苗なら値引きするよ〜♪」
勇儀「萃香、それはルール違反だぞ?」
萃香「かたいことは言いっこなし」
早苗「ん〜…萃香さんには悪いですけど、今回は焼きそばだけいただきます」
勇儀「毎度あり♪」
早苗「それにしても…妖怪しか居ないのに、よくここまで盛り上がりますね」
勇儀「そもそも、人間の里で妖怪が大々的に店出してる時点で奇跡だからな…」
早苗「黒幕は紫さんですよね?聞かなくても分かりますけど…」
萃香「紫は今回は白だよ〜」
早苗「……え?」


霊夢「さて、黒幕は紫か…もう少し楽しんだらお灸を据えてやらないと…」
魔理沙「よお、楽しんでるみたいだな」
霊夢「まあね」
魔理沙「しっかし、妖怪だけの納涼祭とはな…よく見ると人っ子一人居ないじゃないか」
霊夢「どうせ紫の仕業でしょ?もう少し楽しんだら退治してやるつもりよ」
魔理沙「それがどうも、紫の仕業ではないみたいなんだ」
霊夢「どう言うこと?」


早苗「ふむ……紫さんも納涼祭の人員を集めるよう頼まれただけ……いったい誰の仕業なんでしょうか?」
聖「気になっているみたいね、守矢の巫女さん」
早苗「聖さん?」
聖「今回の一件、実は……」


魔理沙「…ん?何だか、妖怪共が疎らになってきたな。もう終わりか?」
霊夢「…後をつけるわよ」
魔理沙「お?尾行か?」
霊夢「人聞きの悪いこと言わないで。これは調査よ」
魔理沙「調査ねぇ…ま、奴らの鼻をあかしてやるには丁度良いか」


早苗「なるほど、そうでしたか」
聖「分かってくださいましたか?」
早苗「ええ。ですが…霊夢さんや魔理沙さんをどう説得するんですか?多分今頃、謎の妖怪納涼祭の調査をしていると思いますけど…」
聖「その時は、早苗さんにも手伝ってもらいますよ」


命蓮寺


霊夢「……命蓮寺?」
魔理沙「あいつら、いつから命蓮寺の小僧になったんだ?」
霊夢「ますます怪しい…」
魔理沙「確かにな。命蓮寺は、幻想郷の新たな勢力として力をつけつつある。そして、ここは妖怪寺だ。…よからぬ事を考えてるんじゃないだろうな?」
霊夢「調べるわよ」
魔理沙「ああ」


早苗「……上手くいきますかね?下手したら私達も退治されますよ?」
聖「博麗の巫女なら、ちゃんと事情を話せば分かってくれます」
早苗「その根拠は?」
聖「…これが、里の人間の為になるからです」


霊夢「…よし、行くわよ」
聖「その必要はありません」
魔理沙「うわっ!?ひ、聖!?」
霊夢「聖…あんた、何を企んでるの?」
聖「企むだなんてとんでもない。私はただ、里の人間のために行動しているだけです」
魔理沙「そんな事言って、自分の勢力を拡大しようとしてるんじゃないのか?」
早苗「それは誤解です。本当に聖さんは…」
霊夢「あんたもグルだったの?」
早苗「ち、ちがっ…話を聞いてください!」
魔理沙「う〜ん…とりあえず、話だけは聞いてやろうぜ?それからでも遅くないだろ?」
霊夢「……良いわ。あんた達の言い訳を聞いてやろうじゃない」


後日 人間の里


霊夢「はぁ…暑い…」
魔理沙「おい霊夢、サボるなよ。客が待ってるぜ」
ルーミア「メロン味ちょうだい♪」
霊夢「はいはい…」
ルーミア「わはー♪ありがと♪」
霊夢「かき氷なんて作ったこと無かったけど、結構重労働なのね……と言うか魔理沙、少しは変わりなさいよ……」
魔理沙「分かっていないな。ラムネの飲み頃の温度を保つのは、なかなか大変なんだぜ?」
早苗「お二人さん、順調ですか?」
霊夢「早苗!なんであんたは手伝わないのよ!」
早苗「だって、お二人が納得してやっていることですからね」
魔理沙「そうかもしれないが…」
早苗「ほら、もうじきお昼になりますよ。次の準備に移ってください」
霊夢「なんであんたが仕切ってるのよ…」
早苗「ほらほら、愚痴を言っても駄目ですよ?」
霊夢「はぁ……仕方がない」


命蓮寺



萃香「霊夢、おつかれ」
霊夢「本当に疲れたわよ…」
勇儀「疲れてるところ悪いが、次はこれを里まで運ぶぞ」
魔理沙「はぁ…しんど…」
聖「では、早速向かいましょう」


再び人間の里


魔理沙「往復はきついぜ…」
萃香「愚痴るだけキツくなるよ?」
魔理沙「分かってるよ…」
聖「…皆さん、つきましたよ」
勇儀「よし、準備しよう」
霊夢「これがまた大変そうね…」
聖「さあさあ、早く準備を終わらせましょう。もうすぐ皆さん来てしまいますよ」


数分後…


村人A「いやはや…聖さんには何度お礼を言っても足りないくらいだ」
村娘A「本当ね。まさか、河童さんの機械無しでかき氷が食べられるなんて…」
村人B「しかも無償で提供してくれるとは…よっ!太っ腹!」
村娘B「今年の納涼祭は、本当に良いものになりそうね♪」


魔理沙「妖怪共の納涼祭では有料ながら楽しませ、里の人間には妖怪共の納涼祭で余ったものを無償で提供する…よく考えたものだぜ」
聖「私達に悪意が無いことのアピールが出来れば良いのです。未だに怪しがって入信されない方も多く見受けられますから」
霊夢「………」
聖「…不服ですか?」
霊夢「まさか。今年は日照りが続いていたし、里の人達も夏バテで活気が無くなっていたから…良い機会じゃない」
魔理沙「本音は?」
霊夢「あんたの慈善活動は信用できない」
聖「きっぱり言いますね。ですが、これに関しては信じて欲しいとしかいえません」
魔理沙「まあまあ、今のところは悪意も無さそうだし、良いんじゃないか?幻想郷の避暑地なんて、危険地区ばかりだ。危険地区に行けない里の人間にとって、納涼は必要不可欠だしな」
霊夢「……保留よ」
聖「はい?」
霊夢「妖怪だけの納涼祭なんて、危険きわまりない。でも、里の人達に納涼を提供している。だから一応、今回の一件に関しては保留にしておくわ。ただし、少しでも妙な真似をしたら…分かってるわね?」
聖「何もさせませんから、安心してください」
早苗「霊夢さん、魔理沙さん。早くしないと無くなっちゃいますよ?」
魔理沙「ああ、今行くぜ」


聖「皆さん、楽しそうで何よりです」
霊夢「隣、良いかしら?」
聖「どうぞ」
霊夢「……そろそろ、本当の事を話しても良いんじゃない?」
聖「…何の事でしょうか?」
霊夢「惚けたって無駄。私の勘の良さをなめないことね」
聖「……貴女には適いませんね」
霊夢「どうせ、紫に頼まれたのは納涼祭の手配だけなんでしょ?」
聖「何でもお見通しですか……そうです。紫に頼まれたのはあくまで、この暑さを凌ぐための納涼祭の準備だけ」
霊夢「それを逆手にとって、里の人達の納涼祭に繋げたのね。でも、妖怪達の納涼祭とは言え、あれだけの騒ぎになれば、里の人間も数人は出て来そうなものだけど…」
聖「それに関しては、慧音さんや妹紅さんが里の皆さんに呼び掛けたんです。あまりの暑さだから、熱中症予防のために外出しないようにと」
霊夢「あいつらまで…」
聖「お陰で下手な誤解を生まずに、今回の納涼祭を行うことが出来ました」
霊夢「気になるのはそこ。…神奈子や神子もそうだけど、あんた達の信者集めの手段が露骨すぎるのよ」
聖「あら、自分の神社の信仰が無いからって僻んでいらっしゃるのですか?」
霊夢「そうじゃないわよ…いや、してはいるけどさ…そうじゃなくて、そんなに勢力を拡大して、何を企んでるの?」
聖「企むだなんて人聞きの悪い…私達はただ、我々の宗教の素晴らしさを、皆さんに知って欲しいだけなんです」
霊夢「どうかしらね」
聖「貴女のその高慢で横暴で強欲な性格を直せば、貴女のところにも信者が増えると思いますよ?」
霊夢「余計なお世話よ…」
聖「少なくとも、私達の目的はそれだけ。それ以上でも、それ以下でもありません」
霊夢「………」
聖「ほら、お話はこのくらいにして、私達も納涼祭を楽しみましょう」


どうにも腑に落ちない霊夢でしたが、里の人間達の楽しそうな姿を見て
「まあ良いか。何かあったら懲らしめてやるまでよ」
と、命蓮寺の行いを概ね認め、自身も納涼祭を楽しむのでした。


紫「里の人間の為になる行いなのだから、霊夢も目くじら立てずに素直になれば良いのに…」


終わり