涼花ちゃんストーリーまとめサイト(改)
幻想郷 連続○○事件!
深夜の命蓮寺…。
一輪「…もうこんな時間…そろそろ休まないと、朝のおつとめが厳しいのよね…」
読書をしていた一輪は、読んでいた本にしおりを挟み床に就こうとしていた。
しかし…。
カサッ……コトッ……。
何やら隣の部屋から物音がしているのに気付いた。
一輪「誰か…いる?こんな夜中に?……まさか、賊?」
人間の賊なら、一輪だけでも対処出来るだろう。しかし、もしも賊が妖怪だったら?
一輪「流石に、もうみんな寝ちゃったかな?……仕方がない、私だけで確認しますか」
一輪は、なるべく足音を立てないように隣の部屋へと向かった。
この部屋は空き部屋となっていて、命蓮寺の備品などをしまっておく物置代わりになっている。
賊はここに?
そんなことを考えながら、一輪は部屋の襖をゆっくりと開けた。
一輪「……誰かいるの?」
消え入りそうな程小さな声で確認をしてみる。しかし応答はない。
一輪「なんだ…誰もいないじゃない…聞き間違いだったのかしら?」
一輪がその場から立ち去ろうとした時。
コトッ……。
一輪「ッ!!」
一輪は部屋の隅から聞こえた物音に、一瞬体を強ばらせた。
一輪「だ、誰!?」
一輪は物音を確認するため、一切明かりのないその部屋へと足を踏み入れた。
そして…。
一輪「きゃああぁぁ!!」
命蓮寺に響き渡る一輪の悲鳴。
その異常事態に、真っ先に駆けつけたのは聖だった。
聖「一輪!……一輪、どうしたのですか!」
部屋の前まで来た聖は、一輪の名を叫んだ。
しかし、一輪からの応答はない。
星「騒がしいですね…何事ですか?」
寝ぼけ眼を擦りながら、星もその部屋の前までやってきた。
聖「いま、一輪の悲鳴が聞こえました…何かあったのでは…」
聖は恐る恐る、その部屋の中へと足を踏み入れた。
聖「一輪…どこにいるのですか?」
一輪「う……うぅ……」
聖「一輪!」
部屋の隅に倒れていた一輪に聖は駆け寄った。
聖「一輪!何があったのですか!」
一輪は気を失っているようだった。
聖が安心したのも束の間。
星「聖!後ろ!」
聖「え?」
黒い影が聖に襲いかかる。
部屋が暗すぎるため、影の正体がつかめない。
星「聖!」
星が聖に駆け寄ろうとした時、星の目の前に黒い影が…。
そして…。
星「いやあぁぁ!」
…これが、幻想郷全土を巻き込んだ凄惨(!?)な事件の幕開けである…。
翌朝 命蓮寺
命蓮寺の入り口には、関係者以外立ち入り禁止のテープが仰々しく貼られていた。
咲夜「被害者は、命蓮寺の住職の聖白蓮、寅丸星、尼の雲居一輪の三名です」
レミリア「犯人はまだ見つかっていない…何か手掛かりは?」
咲夜「まだ何も…」
事件の起こった命蓮寺の一室では咲夜、レミリアは警察の真似事、文は鑑識の真似事をしていた。
文「おお、証拠写真証拠写真」
霊夢「何してんのよ…」
そこへ、同じく事件を聞きつけた霊夢が現れた。
霊夢はレミリア達の行動に呆れている様子だ。
咲夜「警察の真似事。事件を聞きつけたお嬢様のお戯れですわ」
レミリア「真似事じゃないわ、ちゃんと捜査しに来たのよ」
霊夢「はいはい。それで、何が起こったの?」
咲夜「まだ何も…一応、今回の被害者の方々に集まってもらってはいますが…」
霊夢「じゃあ、本人から直接話を聞きますか」
レミリア「ちょっと!勝手に仕切らないでよ!」
事件のあった部屋の隣に、今回の被害者である三名が集められていた。
三名とも酷く怯えている様子だ。
レミリア「さて、あの部屋でいったい何があったのか、聞かせてもらえるかね?」
霊夢「何なの?そのしゃべり方」
レミリア「五月蝿い、刑事風よ」
レミリアの問いかけに、一輪は唇を震わせながら呟いた。
一輪「……あ、悪魔よ……あれは……悪魔……」
レミリア「悪魔?」
霊夢「あんたの仕業か!?」
レミリア「いやいやいやいや!ちょっと待って!確かに悪魔っぽいこともしたこともあったかもだしフランも悪魔の妹とか呼ばれてるし咲夜も悪魔の犬とか呼ばれてたかもだけど私じゃないわ!」
聖「レミリアさんではないと思います」
少しは落ち着きを取り戻したのか、聖が口を開いた。
聖「あの時、一輪の悲鳴を聞きつけた私はあの部屋に行き、一輪が倒れているのを発見しました。そして…いきなり後ろから襲われて…」
星「私は聖が襲われるのを見て、急いで助けようとしたら、目の前に黒い影が…」
レミリア「つまり、誰も犯人の顔を見ていない、と…」
霊夢「やっぱりあんたか!」
レミリア「だから違うって!」
聖「レミリアさんは昨夜、パーティーを開かれたと言っていましたから…レミリアさんではないと思います」
星「何より、吸血鬼さんのような羽は生えていなかったと思う」
レミリア「ほら、アリバイ成立!」
霊夢「はいはい、いちいち叫ばない」
レミリアはふてくされた表情を浮かべるも、すぐに気を取り直して三名に質問をした。
レミリア「それで、結局のところ何をされたの?」
聖「そ、それは……」
三名は互いに顔を見合わせた後に分からないと答えた。
レミリア「分からない訳ないじゃない、貴女達は被害者なんだから」
聖「そう言われましても…すぐに気を失ってしまいましたから…何かを盗られた訳でもありませんし…」
そうは言っても、聖が何かを隠していることはその様子から明白である。
霊夢「言えないようなことをされたんじゃないの?」
確信をつく霊夢の言葉に一瞬動揺を見せた聖だったが、やはり分からないと答えるだけだった。
霊夢「……まあ良いわ。話したくなってからでも遅くはないでしょうし。それより一輪は兎も角、聖や星が簡単にやられたところを見ると…」
レミリア「犯人はかなりの手練れって事になるわね。妖怪の類なら、かなり危険な存在」
霊夢「そんな奴が、誰にも悟られずに命蓮寺侵入できるのかどうなのか疑問ではあるけどね。さて、聞き込みでもしますか」
レミリア「そうね。ここから近くとなると…やっぱり人間の里かしら」
霊夢「……ん?」
レミリア「うん?」
霊夢「え?あんたも来るの?」
レミリア「当たり前じゃない」
霊夢「なんで当たり前になるのよ…あんた達と行動する理由もないし」
レミリア「そんな冷たいこと言わないでよ♪」
咲夜「事件の捜査には人員が必要なはずよ?霊夢ひとりで、里中の人間に聞き込みなんて出来るのかしら?」
霊夢「ま、まあ確かに…今回は異変ではないから勝手も違うだろうけど…」
レミリア「決まりね♪それじゃあ人間の里へ出発♪」
霊夢はやれやれと溜め息を吐きながら、レミリア達と人間の里へ向かった。
人間の里
里に着いた霊夢達は、早速聞き込みを開始した。
しかし、妖怪が跋扈する夜中に外を出歩く人間は皆無で、謎の影の目撃情報はおろか命蓮寺で起こった事件についても初耳だと答える者が大半だった。
霊夢「…予想はしてたけど、やっぱり手がかりはなし、か…」
咲夜「被害状況が分からなければ、捜査のしようもありませんからね」
レミリア「犯人の特徴も分からないし…」
三人はため息を吐いた。
するとそこへ、血相を変えた文が飛んできた。
文「た、大変です!新たな被害者が!」
レミリア「何ですって!?」
寺子屋
レミリアから召集を受けた妖精メイド達が、寺子屋の入り口に関係者以外立ち入り禁止のテープを貼っている。
その近くでは数名の野次馬が集まっていた。
妹紅「ちょっと、いったい何の騒ぎ?」
妖精メイド「あ、いや、これは…その…」
妹紅「怪しい……ちょっと入らせてもらうよ」
妖精メイド「ああ!ちょっと!」
寺子屋 教室
咲夜「被害者は、寺子屋の教員である上白沢慧音。聞き込みを行おうとした射命丸文が、気絶している彼女を発見したとのことです」
霊夢「犯人は見なかったの?」
文「それが、私が来たときにはすでにこの状況でして…」
レミリア「目立った外傷はなし。争った形跡も荒らされた形跡もなし…」
霊夢「物取りの犯行ではないわね。命蓮寺もそうだったけど」
レミリア「命蓮寺の事件とは別人の可能性だってあるわね…まあこの場合、同一犯と考えるのが妥当でしょうけど」
四人が話し合っていると、何やら入り口の方が騒がしくなっている事に気付いた。
妖精メイド「困ります!ここは関係者以外立ち入り禁止で…」
妹紅「五月蝿い!寺子屋だったら私も関係者よ!邪魔しないで!」
妖精メイド「きゃあ!」
制止する妖精メイド達を押し退けながら、妹紅が事件現場に入ってきた。
妹紅「お前達いったい何を……け、慧音!?」
霊夢「あら〜…これは非常にまずい状況なんじゃ…」
レミリア「待ちなさい!まだ慌てる時間ではないわ!話せば絶対に分かってくれるはず!」
妹紅「お前達……慧音に……」
レミリア「ひっ!!」
妹紅「何をしたあぁぁ!!」
四人「ぎゃああぁ!」
クールダウン
妹紅「まったく…そうならそうと早く言ってよ」
レミリア「言おうとしたわよ!」
妹紅「と言うか、あんなテープを貼ったあんたたちが悪い」
霊夢「人の話を聞こうとしないあんたもね…」
妹紅「それはお互い様でしょ?」
三人が話していると、隣の部屋に慧音を運んだ咲夜と文が戻ってきた。
妹紅「慧音の様子は?」
咲夜「気を失ってただけだから、直に目を覚ますでしょう」
妹紅「よかった…」
レミリア「妹紅、少し話を聞かせてもらいたいのだけど」
妹紅「事情は分かったし、捜査には協力させてもらうつもりよ」
レミリア「そう言ってくれて助かるわ。ではまず、慧音と最後に会ったのはいつ?」
妹紅「昨日よ。寺子屋の課外授業で、迷いの竹林付近に行くって言ってたからね。その打ち合わせ」
霊夢「何時頃まで一緒にいたの?」
妹紅「子の刻前くらいかな?」
レミリア「その時の慧音に、何か変わった様子は?」
妹紅「特に何も…いつも通りだったと思う」
霊夢「そう…慧音を襲った犯人に、心当たりはある?」
妹紅「さあ?……慧音は、里の人間を守る変わった妖怪だからね。恨みを買うとしたら、それを良く思ってない低級の妖怪くらいかな?でも、そんな妖怪に慧音が後れをとるわけもないし…」
霊夢「引っ掛かるのはそこなのよね。聖や星、一輪に慧音が襲われてるってことは、犯人は相当な手練れってことになる」
レミリア「手掛かり無し、か……やっぱり、本人に直接聞くべきね」
すると、それを聞いていたかのようなタイミングで奥の襖が開き、慧音が覚束無い足取りで部屋に入ってきた。
妹紅「慧音!大丈夫なのか?」
妹紅はすぐに、慧音の下へ駆け寄った。
慧音「あ、ああ…大丈夫だ…」
レミリア「早速で悪いけど、誰があんたを襲ったのか聞かせてもらえる?」
慧音「……分からない。突然、目の前に黒い影が現れて……」
霊夢「命蓮寺の奴と同一犯ね」
レミリア「それで、いったい何をされたの?」
慧音「それは……分からない……」
命蓮寺の被害者と同様、慧音も何かを隠している様子だ。
霊夢「…言えない?」
慧音「す、すまない…」
霊夢「謝ることはないわよ。命蓮寺の連中もそうだったし」
これ以上の情報は得られないと判断した四人は、再び人間の里で聞き込みを行っていた。
しかし、何の情報も得られないまま時間だけが過ぎていく事に、霊夢とレミリアは焦りを感じていた。
そこで、一度情報を整理するために、四人は博麗神社に集まった。
レミリア「やっぱり情報が無さ過ぎよ。せめて、被害者達の共通点でも分かれば…」
咲夜「共通点…あるのでしょうか?最初の命蓮寺は状況から見れば、犯人が何かをしていて、それを目撃されたことによる口封じに見えなくもないのですが」
霊夢「確か、物音がしたから一輪はその部屋に行ったのよね。でも、物を盗られた形跡は無かった」
文「あの部屋を調べてみましたが、特に何かを動かしたような跡もありませんでした。足跡もありません」
霊夢「ってことは、犯人は律儀に靴を脱いで侵入したってこと?」
文「そうなりますね。寺子屋も同様に、足跡などは発見できませんでした」
レミリア「…訳が分からないわ…」
文「……足跡ではありませんが、被害者の共通点…無いことはないかもしれません」
咲夜「と言うと?」
文「命蓮寺、寺子屋だけを見ればですが、どちらも人間に対してはある程度友好的な立場の方々です」
霊夢「それは妹紅も近いことを言ってたわね」
文「後は、人間の里から近い場所…ですかね?」
咲夜「ですが人間の里に、今回の被害者の方々に恨みを持つような者がいるとも…」
霊夢「そもそも、あいつ等に気取られることなく襲うことの出来る人間なんかいないわよ。人間の里を活動拠点にしてる妖怪もそんなにいないし」
霊夢達が議論を交わしていると、一匹の妖精メイドが血相を変えて、博麗神社の居間に飛び込んできた。
妖精メイド「お嬢様!メイド長!大変です!」
咲夜「騒がしいわね。どうしたの?」
妖精メイド「紅魔館にも例の影が現れ、門番とパチュリー様が被害に遭われました!至急お戻りください!」
レミリア「な、なんですって!」
妖精メイドの報せを受けた四人は、紅魔館へと急行した。
紅魔館
美鈴とパチュリーは紅魔館の一室に運び込まれていた。
レミリア「パチェ!…パチェ!しっかりして!」
咲夜「美鈴!しっかりしなさい!」
二人が呼び掛けるが応答がない。どうやら、他の被害者同様、気を失っているだけのようだった。
とりあえず、取り乱しているレミリアを宥め、霊夢達はその部屋を後にした。
紅魔館 レミリア私室
文「とりあえず、お二人は気を失っているだけみたいですし、大丈夫だとは思いますが…」
咲夜「紅魔館に忍び込んで、パチェや美鈴を襲うなんて……」
レミリア「……良い度胸じゃない。これは私達に対する宣戦布告と受け取り、必ず犯人を捕まえてやるわ!そうと決まれば善は急げ!対策本部の設立よ!」
霊夢「対策本部って…」
文「と、言うことは…ちょっと失礼!」
霊夢「あ、文!どこに行くのよ!」
咲夜「…行ってしまいましたね」
レミリア「あいつの事は良いわ。それより、目撃者が居ないか調べてちょうだい」
咲夜「分かりました、すぐに行って参ります。ほら霊夢、貴女も来るのよ」
霊夢「な、なんで私まで?」
咲夜「天狗さんが居なくなってしまったのだから仕方がないでしょ?ほら、行くわよ」
霊夢は渋々、咲夜について行くことにした
聞き込みを行ったが、やはりと言うべきなのか目撃者は居なかった。その代わり事件が起こった時、近くに妖精メイドと小悪魔が居たという話を聞くことが出来た。
咲夜と霊夢は二人を呼び出し、話を聞いてみることにした。
霊夢と咲夜が戻ると文も戻っていたようで、何やら大きな紙をテーブルに広げてレミリアと話し合っていた。
レミリア「戻ったわね。目撃者はいた?」
霊夢「居なかったわ。これだけ大きなお屋敷に侵入者がいたってのに、目撃情報のひとつもないなんて…」
咲夜「その代わり、事件が起こった時に、近くに居たという者がいたので連れてきました」
レミリア「ご苦労。では、その者から話を聞いてみましょう」
霊夢「その前に、私の質問に答えてくれない?」
レミリア「なに?」
霊夢「その紙、何なの?」
文「これはあとのお楽しみです♪まずはお話を伺いましょう」
霊夢「…まあいっか。さあ、入りなさい」
レミリアの私室に、妖精メイドと小悪魔が入ってきた。
レミリア「さて、事件が起こった時、貴女達はどこでなにをしていたのか、詳しく話してちょうだい」
妖精メイド「わ、私は、お庭のお手入れをしていました。そうしたら、門の方から門番さんの悲鳴が聞こえて…それで、急いで門へ行ってみたら、門番さんが倒れてて…」
レミリアを前にして緊張しているのか、妖精メイドの喋り方はどこかたどたどしかった。
レミリア「その時、近くに怪しい人物はいなかった?」
妖精メイド「だ、誰もいませんでした…魔理沙様か、もしかしたら賊の仕業かと思って、周囲を確認したので間違いありません」
咲夜「なかなか良い対応ね」
妖精メイド「ありがとうございます」
咲夜「小悪魔は?誰か見かけなかった?」
小悪魔「パチュリー様の悲鳴が聞こえた後、黒い影が図書館の扉から出て行くのは見えましたが…パチュリー様の安否が気になったので、そちらを優先してしまいました…」
咲夜「貴女の行動は間違っていないわ」
レミリア「じゃあ、まだ犯人は紅魔館に居るって事?」
妖精メイド「門番さんをあの部屋へ連れて行く途中、門から出て行く人影らしきものが見えたので、もう逃げられたものと…その後、レミリアお嬢様の妖精メイド隊が来ていたので、そちらに報告しました」
霊夢「対応としては100点ね。こんな妖精メイドばかりだったら良いのに…」
レミリア「他に気付いたことは?」
妖精メイド「いいえ、それ以外は特には…」
レミリア「そう…小悪魔は?」
小悪魔「私の方も特にありません」
レミリア「分かった、もう下がって良いわ」
妖精メイド「失礼しました」
妖精メイドと小悪魔は部屋をあとにした。
その姿を見送った霊夢が一言。
霊夢「あの妖精メイド、あとで給料上げてやりなさいよ?」
咲夜「駄目よ。結果として犯人に逃げられてるのだから、連帯責任で±0よ」
文「妖精メイドへの待遇が酷いとは聞いていましたが、まさかこれほどとは…」
レミリア「所詮は妖精だからいいのよ。それより、パチェと美鈴の様子は?」
それを聞いていたかのような絶妙なタイミングで、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
レミリア「どうぞ」
美鈴「失礼します」
現れたのは、先程襲われた美鈴とパチュリーだった。
レミリア「パチェ!もう大丈夫なの?」
パチェ「ええ、心配かけたわね」
美鈴「全快とまではいきませんが、それでも門番の仕事を続行できるだけには体力も回復しました」
咲夜「そう。大事に至らなくて良かったわ」
レミリア「早速で悪いけど、何が起こったのか聞かせてくれる?」
美鈴「はい。私はいつも通り、門番の仕事をしていました」
霊夢「いつも通り、昼寝でもしてたんじゃないの?」
美鈴「だとしたら、私は襲われていないと思いますよ?もし私が寝ていたら、犯人は私の横を通り過ぎれば良いだけの話ですから」
霊夢「む……それもそうね……」
確かにその通りだった。そして、紅魔館に侵入するだけなら、わざわざ門から入らなくても外壁を乗り越えれば良いだけの事である。
美鈴「…話を戻します。私がいつも通り門番の仕事をしていると、背後に嫌な気配を感じました。咄嗟に振り向こうとしましたが、そのまま何も出来ずに襲われてしまい、気付いた時には…」
咲夜「つまり、顔も見ていないと?」
美鈴「面目ないです…」
レミリア「貴女ほどの者が容易に背後を取られるなんてね…。パチェはどう?」
パチェ「私は、今日読もうと思っていた本を探していたら、本棚の影に人影のようなものが見えたの。誰か居るのかと思ってそっちへ行ったら、いきなり後ろから襲われて…」
他の被害者と同様の返答に、レミリアはため息をついた。
レミリア「つまり、誰も顔を見ていないのね?」
パチェ「そうなるわ」
霊夢「じゃあ、具体的に何をされて気を失ったの?それくらいは分かるんじゃない?」
美鈴「……わ、分かりません」
レミリア「本当に分からない?」
パチェ「………」
やはり何かを隠している様子だ。
本当に言えないようなことでもされたのだろうか?
レミリアは再びため息をつくと、被害者二人を気遣い、部屋から退出させた。
レミリア「……よし。文、準備してちょうだい」
文「了解です」
文は墨と、少し太めの筆を取り出した。
レミリア「本日この時間より、この場を『幻想郷連続○○事件』の対策本部とする!」
それを聞いた文は、先程の大きな紙に筆で『幻想郷連続○○事件対策本部』と書き、部屋の外に貼ってきた。
霊夢「○○ってなによ?」
レミリア「まだ犯人も被害状況も分かってないでしょ?だから○○なのよ」
霊夢「なんかしっくりこないけど…」
レミリア「犯人はXと呼ぶようにする。いつまでも黒い影のままだと呼び辛いじゃない」
レミリアの提案には呆れていたが、ここは仕方なく乗ってやろうと思った霊夢だった。
霊夢「で?これからどうするの?」
レミリア「もちろん情報収集よ。私達には何としても、Xの情報が必要なのよ」
霊夢「そうは言ってもね…」
咲夜「あの…」
レミリア「何かね?咲夜捜査官」
咲夜「もう一度、被害者の方から話を聞いた方が良いと思います。時間も経っていますし、もしかしたら話してくれるかもしれません」
レミリア「ふむ……では、そちらは咲夜捜査官と射命丸鑑識官に任せよう。霊夢捜査官はもう少し範囲を広げて情報収集を」
霊夢「なんだかなぁ…」
レミリア「返事は?」
霊夢「はいはい…それで、あんたは何をするの?」
レミリア「私は、貴女達が情報を仕入れて戻ってくるのを紅茶でも飲みながら待つ」
霊夢「あんたも来なさい!」
レミリア「いたたたた!耳!耳は引っ張らないで!」
こうして、四人は別行動を取ることになった。
魔法の森
霊夢「で?どうしてここに来たの?」
レミリア「何故あいつが、こんな面白そうな事件に首を突っ込んでこないのか、気になってたのよね」
レミリアの言う『あいつ』とは魔理沙の事だ。
確かに、彼女の事なら最初の事件が起こった命蓮寺に、真っ先に来ていても不思議ではなかった。
その彼女が、今の今まで現れていないのは何故か。
レミリアが続けた。
レミリア「今回の犯行の手際の良さ、黒い影と言う犯人の特徴、美鈴やパチェ、慧音に聖達を襲える度胸、自宅から事件現場までの距離。これらから推測すると、あいつの可能性がないとは言い切れないのよ」
霊夢「確かに共通点は少なくないけど…魔理沙だったとして、何も盗らずに現場から逃げているのは何故?」
レミリア「そこがどうしても引っかかるけど…とりあえず、あいつを容疑者の一人として話を聞いてみましょう」
霊夢「容疑者…ねぇ…」
確かに、動きの無い魔理沙は気に掛かる。話を聞いてみるのも良いかもしれない。
霧雨邸
レミリア「さて…」
レミリアはドアをノックした。
…程なくしてドアが開き、魔理沙が顔を出した。
レミリア「こんにちは」
魔理沙「おや?珍しい顔だな」
レミリア「早速で悪いけど、貴女を容疑者として連行するわ」
魔理沙「……はい?」
レミリア「確保ぉ!」
レミリアの合図と共に、霊夢は魔理沙を縛り上げた。
魔理沙「……いきなり人の家に押し掛けた挙げ句に縛り上げやがって…真っ当な理由があってのことなんだろうな?」
霊夢「とりあえず縛っとかないと、あんたすぐ逃げるじゃない」
レミリア「何にせよ、貴女を署まで連行するわ」
魔理沙「署ってどこだよ…」
霊夢「紅魔館よ。さあ、きりきり歩きなさい」
魔理沙「いてててて!引っ張るなよ!」
最早ノリノリの霊夢に連れられ、魔理沙は渋々紅魔館へと向かった。
紅魔館 取調室
紅魔館の一室には、取調室と書かれた張り紙が貼られ、そこで魔理沙は取り調べを受けていた。
魔理沙「なあ、いい加減この縄を解いてくれよ…痕になったらどうするんだ」
レミリア「それは貴女次第よ。私達の質問にしっかり答えたら、縄を解いてあげないこともない」
魔理沙「はぁ…仕方がないな。何を聞きたいんだ?言っておくが、最近は紅魔館では何も盗って…借りてないぜ?」
レミリア「昨夜の子の刻頃、貴女はどこで何をしていたの?パーティーに来ていないみたいだったけど」
魔理沙「あ?そんな事を聞くために、わざわざこんな事をしたのか?」
レミリア「質問に答えなさい。さもないと、紅魔館流のお仕置きをするわよ?」
魔理沙「う……わ、分かったよ、言うよ。……え〜っと……子の刻頃だろ?その時は…家にいたな」
霊夢「何をしていたの?」
魔理沙「う〜ん……魔法薬の調合をしたり、箒の整備をしたり、キノコとか野草を意味もなく煮詰めたりと…まあ色々だな」
霊夢「そのアリバイを証明できる人は?」
魔理沙「一人だったからな。誰もいないぜ」
レミリア「ふむ……」
どうにも魔理沙の言うことは信憑性に欠ける。
普段の行いが行いなだけに、それも仕方のないことだ。
霊夢「じゃあ、私から質問」
魔理沙「どうぞ…」
霊夢「聖、星、一輪の誰かと最後にあったのはいつ?」
魔理沙「命蓮寺の連中か?そうだな…三日前だったかな?命蓮寺に行った時に、その三人に会ったな。まあ、そいつ等だけじゃないけどな」
霊夢「そう…じゃあ、慧音に最後にあったのはいつ?」
魔理沙「それも三日前だと思う。命蓮寺に行く前に里に寄ったんだが、その時に見かけた。直接会ってはいないな」
霊夢「う〜ん……」
聞けば聞くほど怪しく思えてくる。
もう、こいつを犯人にしてしまった方が早いのではないかと思ってしまうほどだ。
魔理沙「なあ、いったい何があったんだ?」
霊夢「…さっき言った四人と、ここの門番、それからパチュリーが、何者かに襲われたわ」
魔理沙「……は?」
レミリア「どの被害者も、犯人を見ていないの。見えたのは黒い影だけ」
霊夢「犯行の手際の良さ、黒い影、犯行現場とあんたの家の位置関係。これらから、あんたが容疑者になったのよ」
魔理沙「ちょ、ちょっと待て。そんな事件なんて初耳だし、第一私が襲う理由なんて無いだろ?」
霊夢「まあ実際、事件現場からは何も盗られた形跡がなかったからね」
魔理沙「ほら見ろ、だったら私じゃないじゃないか。……いや、借りてるだけ借りてるだけ」
霊夢「でもね…」
魔理沙「うん?」
霊夢「あんたの話を聞けば聞くほど、どんどん怪しく思えてきてるのよ」
魔理沙「な、なんでだよ!」
レミリア「普段の貴女の行いの所為よ」
魔理沙「くぅ!反論できない!」
咲夜「お嬢様!大変です!」
レミリアと霊夢が取り調べをしていると、血相を変えた咲夜が取調室に入ってきた。
レミリア「何事?犯人ならもう捕まえたわ」
魔理沙「おい待て!誰が犯人だ!」
咲夜「新たな被害者が!」
レミリア「え?」
霊夢「今度は誰?」
咲夜「射命丸鑑識官です!」
レミリア「な、なんですって!?」
霊夢「それっていつ?」
咲夜「お嬢様達が紅魔館に戻っていると、妖精メイドから聞いた後に…」
魔理沙「そら見たことか!アリバイ成立!」
レミリア「と言うことは、犯人は館内に?」
咲夜「い、いいえ…何と説明したら…とにかく、早く来てください!場所は人間の里です!」
レミリア「分かった、すぐに行くわ!」
魔理沙「あ!おい、待てよ!この縄を解けって!おーい!」
レミリア達は人間の里へ急行した。
道中での咲夜の説明によると、寺子屋での情報収集を終えた二人は、レミリアの妖精メイド隊と出会い、レミリアが紅魔館へ戻っていると聞いた。
何の収穫もなかった二人は一度紅魔館へ戻ろうとしたが、文はもう少し、里で情報を集めたいと言った。
そこで二人は別れたのだが、それから数分もしないうちに文の悲鳴が聞こえ、その場へ向かうと文が倒れていたらしい。
人間の里 事件現場
事件現場には、すでに数名の野次馬が集まっていた。
霊夢達はその野次馬達をかき分けていった。
霊夢「はいはい、退いて退いて。文、しっかりしなさい」
文「う…う〜ん…」
レミリア「妖精メイド隊!この野次馬を追い払いなさい!」
レミリアと霊夢が来た所為もあるのだろう、命令した時にはすでに野次馬達は居なくなっていた。
レミリア「ここだと人目もあるし、紅魔館に運びましょう」
紅魔館
文を紅魔館の一室に運ぶと、レミリア達は対策本部へと戻った。
レミリア「いよいよ、被害者の共通点が分からなくなったわね」
霊夢「紅魔館が襲われた時点で分からなくなってるわよ」
咲夜「無差別的ではありませんね…里の人間は、まだ誰も襲われていませんでした」
レミリア「と言うことは、被害者の共通点って妖怪?」
霊夢「でも、命蓮寺は三人だけ。他の奴らは襲われなかった」
咲夜「紅魔館も、パチュリー様と美鈴だけ。小悪魔や私達は襲われていない」
霊夢「ますます分からないわね…共通点は妖怪って事だけか…」
咲夜「妖怪……妖怪退治?」
レミリア「まさか?」
レミリアが霊夢に疑惑の眼差しを向けた。
霊夢「あんたねぇ…事件が起こった時、あんたも一緒にいたでしょ?」
咲夜「霊夢ではなくもう一人、最近妖怪退治を始めた……」
霊夢「早苗?でも、何のために?」
レミリア「よし、容疑者第二号として、早苗を連行しましょう。と言うわけで霊夢、後は任せたわ」
霊夢「何で私に任せるのよ?」
レミリア「歩き続けで疲れてるのよ!」
霊夢「だったら咲夜に行かせなさいよ」
咲夜「私は…射命丸鑑識官の容態を、お嬢様と紅茶でも飲みながらゆっくりと確認しなければならないので」
霊夢「あんたらねぇ…」
レミリア「じゃあ、頼んだわ」
霊夢は一際大きな溜め息を吐き、渋々守矢神社へ向かった。
守矢神社
早苗「あら、霊夢さん。神社に何か用ですか?」
霊夢「いいえ、今日はあんたに用があって来たの」
早苗「私に?」
霊夢「とりあえず来てもらうわ」
霊夢は早苗を縛り上げた。
早苗「ちょ、ちょっと!何をするんですか!」
霊夢「いいから来なさい」
紅魔館 取調室
早苗を取調室に連れてきた霊夢は、部屋にいた魔理沙の存在をすっかり忘れていたが、まあ良い薬になるだろうとそのまま放置して、早苗から話を聞くことにした。
早苗「あの…痛いです…縄を解いてもらえませんか?」
魔理沙「私のも解けよ〜…いつまでこのままにしとくつもりだ?」
霊夢「早苗、あんたに聞きたいことがある」
魔理沙「おい無視か?」
早苗「…里で起こった事件についてですか?」
霊夢「そうよ。正直なところ、あんたが容疑者第二号なの」
早苗「な、何故ですか!?」
霊夢「襲われたのは全員妖怪だし、私にはアリバイがあるからね」
魔理沙「私にもアリバイがあるんだが?」
霊夢「五月蠅いわね。黙ってないと、もうしばらくそのままよ?」
魔理沙「お口にチャックだぜ…」
霊夢「で?どうなの?」
早苗「な、何もしてません!今日はずっと守矢神社にいましたから」
霊夢「それを証明できる人は?」
早苗「神奈子様と諏訪子様です!」
早苗がそう言った途端、取調室の扉が荒々しく開き、神奈子と諏訪子が入ってきた。
神奈子「博麗の巫女!これはどういうつもりだ!」
霊夢「まったくもって良いタイミングね。打ち合わせでもしてたの?」
神奈子「何を言って…」
霊夢「早速あんた達に質問。早苗は今日一日、守矢神社に居たって言ってるけど、それを証明してくれない?」
神奈子「な、なんだ?」
霊夢「質問は受け付けない。答えないと、早苗と魔理沙はこのままよ?」
魔理沙「ちょっと待て!なんで私も入ってるんだよ!」
神奈子「…ああ、間違いない。今日、早苗はずっと守矢神社に居た」
諏訪子「出掛けるならひとこと言ってから行くはずだし、何より今日は参拝客も多かったからね」
霊夢「そう…疑って悪かったわね」
霊夢は早苗の縄を解いた。
早苗「いたた…きつく縛りすぎですよ…」
霊夢「ともあれ、事件の事を知っているのであれば、あんた達も注意する事ね。まだ、犯人の正体も分かってないんだから」
早苗「その事ですが…私も、捜査に協力させてもらえませんか?」
霊夢「え?…う〜ん…人員は多いに越したことはないけど…でも、どうして?」
神奈子「あんな事をされたのに、良いのか?」
早苗「もし、これが異変であるのなら、私の出番ですから」
霊夢「あんたじゃなくて私のね」
魔理沙「私もな」
霊夢「でも、指揮をとってるのはレミリアだから、一応確認してみるわ」
諏訪子「あんたの独断でも良いんじゃないの?」
霊夢「レミリアの事だからね…言っておかないと、あとで五月蠅いのよ。じゃあ、ちょっとここで待ってて」
早苗達を取調室に待たせ、霊夢はレミリアの部屋へ向かった。
しかし、この行動がいけなかった。
まさか、あんな事が起ころうとは、今の霊夢は知る由もなかった。
レミリア 私室
案の定レミリアと咲夜は、紅茶を飲みながらまったりとくつろいでいた。
レミリア「あら霊夢、早苗は連れてきたの?」
霊夢「連れてきたけど…どうも白っぽいわ」
レミリア「あらそう」
霊夢「くつろぎすぎよ…ちゃんと聞いてるんでしょうね?」
レミリア「聞いてるわよ。それで?」
霊夢「早苗も、捜査に参加したいって言ってるんだけど、どうする?」
レミリア「う〜ん…まあ、別に良いんじゃない?人数は多いほど良いし」
霊夢「分かった。じゃあ、早苗も捜査に協力させるわ。…話は変わるけど、文の状態はどう?」
咲夜「隣の部屋で寝ているわ。まだ話は聞けてないけどね」
霊夢「そう…文なら、何があったのか話してくれそうだけど…まあ仕方がないわね。もし目を覚ましたら、私にも教えて?」
咲夜「分かったわ」
紅魔館 取調室
霊夢が取調室に戻ったが、取調室には誰もいなかった。
霊夢「…あれ?どこに行っちゃったのかしら?」
「きゃああぁぁ!」
霊夢「!?」
紅魔館に響く早苗の悲鳴。まさか、Xがまた紅魔館現れたのか?
霊夢は声の方へ向かった。
紅魔館 二階廊下
霊夢が駆けつけると、神奈子と早苗が倒れていた。魔理沙と諏訪子の姿は見えない。
霊夢「早苗!神奈子!しっかりしなさい!」
応答はない。気を失っているようだ。
そこへ、悲鳴を聞きつけたレミリアと咲夜も到着した。
レミリア「何事?」
霊夢「…早苗と神奈子もやられたわ」
咲夜「メイド隊!至急厳戒態勢を敷きなさい!誰も紅魔館から出してはならないわ!」
妖精メイド「り、了解です!」
霊夢「…魔理沙と諏訪子は?」
レミリア「私達は見かけなかったけど?」
霊夢「この二人のすぐ近くに居たのは魔理沙と諏訪子。ここに居ないとなると…まさか、Xを追ってるんじゃ…」
咲夜「その可能性は高いわね」
それを聞き、霊夢は走り出した。
レミリア「霊夢!どこに行くのよ!」
霊夢「あいつらを探すのよ!もし見掛けたら、すぐに私に知らせなさい!」
今までの被害者は妖怪だったから、まだ対策もとることが出来たかもしれない。
しかし、今回は神が襲われた。
これが異変なのかは分からないが、もし異変だったとして、その元凶…或いはXは恐ろしく強いことになる。
そんな奴を、魔理沙と諏訪子は追っている…霊夢は焦燥感に駆られていた。
霊夢「…どこに行ったのよ…」
すると、大きな地鳴りとともに、窓の外に魔理沙のマスタースパークが空を裂いていた。
戦っている?
胸騒ぎを覚えた霊夢は窓から飛び出し、その方向へと向かった。
霊夢「魔理沙!大丈夫?!」
魔理沙「うん?何がだ?」
魔理沙はケロッとした顔をしていた。
何事もなかったのだろうか?
いや、今はそのことよりも…
霊夢「早苗を襲った犯人は?」
魔理沙「犯人?何のことだ?それに、襲われたって?」
霊夢「え?」
魔理沙「誰も襲われちゃいないぜ?お前達が探してるような奴もいなかったしな」
霊夢「どう言うこと?」
魔理沙「そこは本人に聞いた方が良いんじゃないか?聞いたところで答えてくれないと思うが…まあ何にしろ、早苗も神奈子も襲われたわけではないから安心しな」
ますます意味が分からない。
魔理沙は何を言っているのだろうか?
魔理沙「…分からないか?それでもまあ良いが、早苗と神奈子が襲われたと言うのであれば、犯人は顔見知り。霊夢もよく知ってる奴だぜ」
霊夢「誰よ?」
魔理沙「そこは自分で考えな。少なくとも、今回のは今までとは別だ。あいつが犯人とも思えないしな」
霊夢「じゃあ、なんでマスタースパークを撃ったのよ?」
魔理沙「お前がいつまでも縄を解いてくれないから、仕方なくだよ。マスタースパークになったのは…不可抗力だ」
魔理沙の足元には、元々縄だったのであろう消し炭が散らばっていた。
八卦炉で焼き切ろうとして、勢い余ったと言ったところだろうか?
霊夢「はぁ…何なのよ…私はてっきり…」
魔理沙「お?心配してくれたのか?」
霊夢「す、するわけ無いじゃない!それより、諏訪子はどこに行ったのよ?」
魔理沙「犯人探しは早苗達に任せて、先に帰るってさ」
霊夢「そう…」
魔理沙「ま、そう言うわけだ。私も帰らせてもらうぜ」
霊夢「あ…う、うん…。まだ犯人は捕まえてないから、くれぐれも気を付けなさい」
魔理沙「はいはい。じゃあな」
魔理沙は飛び去った。
緊張が解けた霊夢に、疲労感が押し寄せていた。
霊夢は大きく溜め息を吐くと、レミリア達のもとへ戻った。
紅魔館 レミリア私室
神奈子「では、私も戻るとしよう。早苗、あまり無茶をしないように」
早苗「分かってます」
霊夢が戻ると、神奈子が守矢神社に帰ろうとしているところだった。
神奈子「霊夢、必ず犯人を捕まえてくれ?かなり噂になっているからな」
霊夢「え、ええ…」
やはり、Xの仕業ではないのだろうか?
早苗「霊夢さん、ご心配をおかけしました」
霊夢「無事で何よりだわ」
レミリア「さて、霊夢も戻ったことだし、捜査再開よ」
霊夢「そう…ね…」
レミリア「まずは…咲夜、射命丸鑑識官の容態は?」
咲夜「まだ気を失っています」
レミリア「う〜ん…話を聞けないとなると…」
早苗「あの…まずは情報を整理しませんか?私は事件があったことしか知りませんし」
霊夢「そうね…じゃあ一度、情報の整理といきますか」
レミリア「まず、最初の事件が起こったのが命蓮寺」
咲夜「一輪さんが夜中に物音に気付き、その場所へ行ったところで襲われました」
早苗「その場所と言うのは?」
霊夢「一輪の部屋の隣だったそうよ。その部屋、普段は物置代わりとして使ってたみたい」
早苗「泥棒ですか?」
咲夜「最初はそう思ってたけどね…」
レミリア「一輪が襲われた後、聖と星が悲鳴を聞きつけ、その部屋に向かったの。一輪は部屋の隅の方に倒れていて、駆け寄った聖も後ろから襲われたわ」
咲夜「その様子を見ていた星さんは、黒い影が聖を襲ったと供述しているの」
早苗「黒い影…」
霊夢「その後、星も同様に襲われたわ」
レミリア「翌朝、事件を聞いた私達が、命蓮寺に向かったのよ」
咲夜「事件現場を見る限り、物取りの犯行ではなかった。更に、襲われた聖と星の供述から、犯人にお嬢様のような翼は生えていないことが分かったけど、それ以上のことは分からなかったわ」
霊夢「一輪は酷く怯えててね…あれは悪魔だとか言っていたわ」
早苗「悪魔…ですか?」
霊夢「気が動転して、そんな事を言ったんでしょ?」
レミリア「聖達も、何をされたのか分からないって言っていたからね。仕方なく、私達は命蓮寺から近い人間の里で聞き込みを行ったわ。…収穫はなかったけど」
霊夢「そんな時、寺子屋で聞き込みを行ってた文が、血相を変えて戻ってきたわ」
早苗「第二の犯行ですね」
レミリア「そう。慧音も、黒い影しか見てないと言っていたけどね」
早苗「襲われた二カ所だけを見れば、人間に対して友好的な方々が被害にあっていますね」
咲夜「そこだけならね…」
早苗「と、言いますと?」
霊夢「次の事件現場は他でもない。ここ、紅魔館なのよ」
早苗「え?」
霊夢「ね?いよいよ分からないでしょ?」
レミリア「襲われたのは、美鈴とパチェの二人よ。どっちも背後から」
霊夢「で、こいつが対策本部を立ち上げたってわけ」
早苗「外の貼り紙はそう言うことでしたか…。紅魔館が襲われたと言うことは、目撃者がいたのでは?」
咲夜「残念ながら、目撃情報は紅魔館から立ち去る人影だけ」
早苗「そんな事って…」
レミリア「不可解でしょ?でも、この手際の良さ、黒い影、事件現場と自宅の位置関係から、私達は魔理沙を容疑者として、話を聞くことにしたわ」
早苗「だから魔理沙さんも縛られてたんですね」
霊夢「まあ…その取り調べの最中に、また事件が起こったんだけどね…」
咲夜「射命丸鑑識官が襲われたのよ。お嬢様達が魔理沙の取り調べをしている時、私達は被害者から聞き込みを行っていたの。収穫は無かったけど、射命丸鑑識官がもう少し聞き込みをしたいって言い出したの。そこで別れたんだけど、数分もしないうちに悲鳴が聞こえて…」
早苗「ふむ…ここまで聞いた感じだと、被害者の共通点って妖怪って事ですよね」
レミリア「だから、貴女が容疑者二号になったのよ」
早苗「それで…」
霊夢「後は知っての通りよ。悲鳴が聞こえたけど、あんた…いったい誰に何をされたのよ?」
早苗「い、言えませんよ!」
霊夢「言いなさい」
早苗「うぅ…じ、事件とは関係ありませんから!」
咲夜「それは私達が決める事よ」
早苗「………」
早苗は真っ赤になって俯いてしまった。
早苗「……を……れ……」
霊夢「聞こえないわよ?」
早苗「む、胸を揉まれたんです!」
霊夢「……へ?」
早苗「だ、だから!胸を揉まれたんです!」
…なんだと、そんな事かと、一同は大きな溜め息を吐いた。
霊夢「涼花ちゃんの仕業でしょ?そこは聞かなくても分かるけどさ…まさか、気絶しちゃうまで揉まれ続けたの?」
早苗「ま、まあ…そう言うことになっちゃいますけど…」
レミリア「呆れてものも言えないわ」
早苗「だ、だから最初から、事件とは関係ないって言ったじゃないですか!」
咲夜「確かに…これは事件とは無関係ですね…」
霊夢「魔理沙が言ってた意味も、ようやく分かったわ」
レミリア「でも、来ていたのなら顔を出しても良いと思うけど…」
咲夜「大方妖精メイドが、お嬢様は今忙しいとでも伝えたのでしょう」
霊夢「そっちは良いわ。それよりもXよ」
早苗「えっくす?」
レミリア「幻想郷連続○○事件の犯人を、Xと呼ぶようにしたのよ」
早苗「なるほど」
霊夢「ここまで聞いて、あんたはどう思う?」
早苗「そうですね…幻想郷の名だたる方々が被害にあっている、皆さんがその存在に気付けていないと言うことは、犯人は人間の可能性が高いかと」
霊夢「どうしてそう思う?」
早苗「何をされたかの質問に対して、魔法で…とか、妖術で…と言う話が一切出て来ない。文さんが襲われた話を聞いた感じ、犯人は一瞬のうちに犯行に及んでいる事になります。ですが、文さんや一輪さんのような方々なら分かりますが、聖さんや慧音さんも、一瞬のうちに気絶させられていると言うことになってしまいます。もし、そんな強い妖怪がいたら、それなりの妖力を発しているはず。なのに、誰もその事に気付いていない」
レミリア「確かに…」
早苗「亡霊や幽霊の仕業だとしても、人間ならまだしも妖怪を襲う理由もありませんし、そんな強い亡霊や幽霊は周囲に何かしらの影響を与えますからね」
咲夜「雷の一つも鳴っていません。今日は晴天です」
早苗「それから、妖精の可能性も…まあ無いと言っていいでしょう」
霊夢「まずあり得ないわね」
早苗「これらから推測すると、犯人は人間である可能性も出てきますね。まあ、能力を使った…と言ってしまえばそれまでですが…。能力は自己申告ですし」
咲夜「でも、貴女の推理は良い線いってると思うわ」
霊夢「何にしろ、文から話を聞かないことには…まだ目を覚まさないの?」
咲夜「ちょっと、様子を見てきます」
レミリア「お願い。さて…これからどうする?」
早苗「聞き込みしかないのでは?」
レミリア「それもそうね…人手も増えたし、もう一度聞き込みよ。咲夜は残って、射命丸鑑識官の様子を見ていてちょうだい」
咲夜「分かりました。意識が戻り次第、ご報告します」
レミリア「それじゃあ」
出発しようとした瞬間、レミリアの腹の音が鳴った。
レミリア「……まずは昼食にしましょう」
それには全員同感だった。
見ると、時計の針は午後二時を回っていた。
腹が減っては何とやら。四人は遅めの昼食をとることにした。
少女昼食中……
早苗「私達までいただいちゃって、何だか申し訳ないです…」
レミリア「良いのよ。食事は人数が多い方が楽しいし。よし、それじゃあ改めて、聞き込みに行くわよ」
人間の里
霊夢「そう言えば、文が襲われてから聞き込みしてなかったわね。新たな情報でも聞ければいいけど…」
早苗「手当たり次第に…ですか?」
レミリア「それしか方法がないでしょ?」
早苗「はぁ…以外と重労働なんですね…」
霊夢「はいはい、愚痴る暇があったら聞き込みよ」
聞き込みを開始して間もなく、文が襲われた際に黒い影の様なものが見えたという情報を得ることが出来た。しかし、それ以上の情報は得られなかった。
早苗「情報無し…皆さんが苦労されるのも分かります…」
霊夢「異変だったら、妖怪達を倒していけば自然と黒幕に辿り着いたけど…こういう事件はそうもいかないわね…」
レミリア「う〜ん……あら?」
レミリアの視線の先には、里に薬を売りに来た優曇華が、こちらの様子を不思議そうに見ていた。
優曇華「皆さんお揃いで、何をしているの?」
霊夢「事件の捜査よ」
優曇華「事件って…今噂になってる?」
レミリア「そうよ。何か聞いてる?」
優曇華「寺子屋と命蓮寺が襲撃されたとは聞いてるわ。それ以外は何も」
早苗「そうですか…ちなみに、優曇華さんはいつから里に?」
優曇華「お昼前かしら?今日は売り上げも上々でね。もう帰るところよ」
霊夢「そう…犯人の正体も分かってないから、あんたも気を付けなさい?」
優曇華「大丈夫、そんな奴にやられたりしないわ」
霊夢「だと良いんだけどね…」
優曇華「じゃあ、私はこれで」
三人は優曇華を見送り、紅魔館へ戻ろうとした時…。
優曇華「きゃああぁぁ!」
優曇華の悲鳴が里中に響いた。
霊夢「ああ、もう!だから言ったのに!」
三人は優曇華のもとへ駆け寄った。
悲鳴を聞いた数名の野次馬が、すでに集まっていた。
霊夢「優曇華、大丈夫?」
優曇華「………」
優曇華は気を失っているようだ。
レミリア「私と早苗は、そこの野次馬から情報収集をするわ。霊夢は優曇華を運んで」
早苗「分かりました」
霊夢「…仕方がないわね」
霊夢は気絶している優曇華を、永遠亭へと運んだ。
永遠亭
霊夢「永琳、いる?」
永琳「居ないことの方が少ないと思うけど。…って優曇華!どうしたの!?」
霊夢「安心して、気を失ってるだけよ。とりあえず、こいつを寝かせたいんだけど」
永琳「え、ええ…」
永遠亭 診察室
優曇華を診察室のベッドに寝かせた霊夢は、永琳に事情を説明した。
永琳「そう…里ではそんな事が…」
霊夢「私達が目を離したのが、一分も経たないうちだったからね…今のところは、里周辺で被害が出てるだけだけど、あんた達も十分気を付けなさい」
永琳「ええ、分かったわ。兎達にも、注意するよう呼び掛けておく」
霊夢「それから、もし優曇華が目を覚ましたら、紅魔館に来るように伝えて」
永琳「分かったわ」
霊夢は永遠亭を後にし、紅魔館へと戻った。
紅魔館 レミリア私室
霊夢「戻ったわ」
早苗「おかえりなさい」
レミリア「優曇華の様子は?」
霊夢「とりあえず、永琳に任せたわ。気を失ってるだけだし、すぐに目を覚ますだろうって。それより、あんた達の方は?収穫はあったの?」
早苗「襲われた瞬間を目撃した人はいませんでしたね…」
レミリア「今回は黒い影を見たって情報も無しよ」
霊夢「でも、Xの犯行と見て間違いないでしょ」
早苗「あんな短時間で、誰にも気取られることなく犯行に及ぶなんて…皆さんが真剣になる理由が分かった気がします…」
三人が話し合っていると、扉をノックする音が聞こえた。
レミリア「どうぞ」
咲夜「失礼します。天狗さんが目を覚ましました」
霊夢「これでやっと、有益な情報が手に入りそうね」
早苗「文さんは、まだ部屋ですか?」
咲夜「いいえ、もう来ると思いますけど…」
すると、再び扉をノックする音が聞こえた。
レミリア「どうぞ」
文「失礼します」
霊夢「やっと目を覚ましたわね」
文「皆さん、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした…」
早苗「大事にならなくて良かったです」
文「あやや?何で早苗さんが?」
咲夜「そう言えば、貴女は居なかったから知らないのよね。色々あって、今は捜査に協力してもらってるのよ」
文「そうでしたか。よろしくお願いします♪」
早苗「よ、よろしくお願いします」
霊夢「文、起きて早々で悪いけど、何をされたのか教えて?」
文「え……」
霊夢「だから、何をされたのか」
文「あやや〜…それはちょっと…」
レミリア「言えないような事をされた?」
文「なんと言いましょうか…被害者の方々の気持ちが分かりました。と言っておきましょうか…私の口からは何をされたのかなんてとてもとても…」
霊夢「あんたなら言ってくれると思ってたのに……」
文「あ、でも、襲われた時に写真を撮っていたので、もしかしたら何か写ってるかも」
レミリア「それを早く言いなさいよ…すぐに現像してきなさい!」
文「了解です!」
文は凄い速度で、部屋の窓から飛び出していった。
早苗「さて、写真を現像するのに時間が掛かるはずですし、その間どうします?」
文「と、思うじゃないですか?」
早苗「きゃあっ!」
文「河童達の最先端技術はこう言う時に役に立ちますね」
霊夢「いや、そうは言っても早すぎでしょ!」
文「ご都合主義と言うことでここはひとつ♪」
レミリア「何でも良いから、現像した写真を見せなさい!」
文「これは失礼。こちらが写真です」
文はテーブルに写真を並べた。
霊夢「…ピンボケしまくりで何が写ってるのか分からないじゃない…」
文「あやや〜……」
レミリア「あやや〜…じゃないわよ!期待させておいて!」
文「そうは言ってもしょうがないじゃないですか…襲われたのは一瞬だったんですから…」
霊夢「結局振り出しね…こんな事してる間にも、Xの被害者が増えてるかもしれないってのに…」
咲夜「焦ったところでどうしようもありませんけど…」
早苗「もうすぐ夜になりますし…今日のところは、この辺で切り上げませんか?」
霊夢「でもね…優曇華が目を覚ましたら、ここに来るように言ってあるし…」
と言ったところで、扉をノックする音が聞こえた。
レミリア「どうぞ」
妖精メイド「失礼します。お嬢様、お客様です」
レミリア「客…?」
優曇華「どうも。昼間は世話になったみたいで」
霊夢「もう大丈夫なの?」
優曇華「師匠の薬のおかげで、すぐに良くなったわ」
霊夢「あいつの薬は、効果は認めるけど信憑性がね…」
優曇華「そこは私も同意するわ…それより師匠に、目を覚ましたらここに来るように言われたんだけど?」
レミリア「単刀直入に聞く。貴女、いったい何をされたの?」
優曇華「え!?う、う〜ん……分からないわ」
レミリア「分からないわけないんじゃない?」
優曇華「そう言われても…一瞬だったし…」
早苗「捜査に協力すると思って、話してくれませんか?」
優曇華「分からないものは分からないわよ……」
文「本人が分からないと答えているのだから、それで良いじゃないですか」
霊夢「でも、このままじゃ本当に手掛かり無しなのよ?」
優曇華「悪いけど、貴女達の力にはなれないわ。……他に用がないのなら帰るけど?」
霊夢「待ちなさい、まだ」
文「いやいや、ご足労いただきありがとうございました」
霊夢「ちょっと文!」
優曇華「じゃあね。あまり無理しないようにね」
霊夢「待ちなさい!」
早苗「…行っちゃいましたね」
霊夢「文!どういうつもりよ!」
文「では私も、日が落ちてきたのでこの辺で♪」
霊夢「ち、ちょっと!」
文と優曇華は部屋から出ていった。
レミリア「そこまで人に話せないことなのかしら?…まあ、行ってしまったものは仕方がないわ。今日はもう切り上げましょう」
霊夢「………」
腑に落ちない霊夢ではあったが、すでに辺りには夜の帳が落ちていた。
こうなってしまっては情報収集も出来ないし、話し合ったところで机上の空論になってしまう。
かと言って、夜の幻想郷の見回りをする気も無かった霊夢は、レミリアの提案に渋々賛成した。
夕食をいただいた霊夢は、レミリアが貸してくれた空き部屋のベッドに横になり、Xの犯行の手口や被害者達の事について考えていた。
しかし、いくら考えたところで、浮かび上がった疑問に対する答えを導き出すことは出来なかった。
いつしか霊夢は、そのまま眠ってしまっていた。
その頃 人間の里のとある居酒屋
人間の里には、妖怪相手に商いを行っている店も少なくなく、この居酒屋もそんな店のひとつだった。
勇儀「まさか、こんな店があるなんてな。誘ってくれて感謝するよ」
萃香「たまにはあんたと、ゆっくり呑みたかったからね。それにしても、店員も客もビビりまくりだったね」
勇儀「そりゃあ鬼が来てるからな。あいつらの反応、なかなか面白かったよ」
萃香「あんたも人が…いや、鬼が悪いね」
勇儀「お前程じゃないさ」
萃香「なんだと〜」
勇儀「ははは……うん?」
言いようのない気配に、勇儀は振り返った。
萃香「ん?どうしたの?」
勇儀「……いや、気のせいみたいだ」
二人が再び歩き始めた時…。
勇儀「……!!」
萃香「勇儀、さっきからどうしたの?」
と、声をかけた瞬間、勇儀はその場に倒れてしまった。
萃香「ちょっと…そんなに呑んでないでしょ?……勇儀?」
応答はない。
肩を揺すってみるが、反応もない。
萃香「勇儀?…ねぇ、勇儀?」
いくら声を掛けてみても起きる気配がない。
萃香「……ま、まさか、いま噂になってるって言う……」
萃香は不安に駆られた。
今、里を騒がせている奴が、あろう事か鬼を襲うとは思ってもいなかったからだ。
萃香「勇儀!…勇儀!しっかりして!勇儀!」
永遠亭
勇儀を担ぎ、なんとか永遠亭まで着いた萃香だったが、永遠亭の入り口に貼られた貼り紙を見て力が抜けてしまった。
“ただいま留守にしています。ご用のある方は紅魔館まで”
萃香「…なんで紅魔館?」
仕方なく、萃香は紅魔館に向かうことにした。
萃香が永遠亭に着いた頃、紅魔館では。
優曇華「た、大変です!」
咲夜「あら優曇華。どうしたの?そんなに慌てて」
優曇華「師匠が!師匠が襲われました!」
咲夜「何ですって!?」
萃香「おーい!誰か居ないの?」
早苗「あ、萃香さん」
萃香「あれ?守矢の巫女じゃん。何してんの?」
早苗「萃香さんこそ、どうして紅魔館に?」
萃香「あ、そうだった!勇儀が誰かに襲われたんだよ!」
早苗「え!?」
紅魔館の一室に、永琳と勇儀は運び込まれた。
霊夢達はすぐに、レミリアの私室へと集まった。
紅魔館 レミリア私室
レミリア「…では、貴女達が被害者を発見した時の事を話してちょうだい」
優曇華「では私から…紅魔館から帰った私は、師匠の製薬の手伝いをしていたわ。辺りも暗くなった頃、私は夕飯の支度をしに部屋から出たんだけど、それから数分後に師匠の悲鳴が聞こえて…」
レミリア「なるほどね…その時、何か変わったことは?」
優曇華「特に何も…てゐや兎達も、怪しい人物は見かけなかったと言っていたわ…」
霊夢「そう、分かったわ。問題はこっち」
霊夢は萃香の方に視線を移した。
霊夢「今までの犯行ならまだしも、遂に鬼まで襲われた。それも、山の四天王の一角をよ?」
萃香「いくらほろ酔い状態だったからと言って、そんな奴に後れをとるなんてあり得ないよ」
レミリアの私室が緊張感に包まれた。
鬼を倒す。そんな事が出来る者が幻想郷に居るのだろうか?
もし居たとして、果たして捕まえることが出来るのだろうか?
霊夢「ちなみに、勇儀が襲われた時、何か見た?」
萃香「私は何も見てないけど…勇儀は何かに気付いたのか、襲われる前に一回振り向いたんだよね。何もなかったけど、その後すぐに襲われて…」
霊夢「…勇儀と永琳だったら、他の被害者と違って、何をされたのか話してくれるかしら?」
文「そこは目が覚めてみないと分かりませんが…言ってくれないんじゃないですかね?」
霊夢「と言うか、あんたが何をされたか言えば、それで済む話なのよ?」
文「言えるわけないじゃないですか」
霊夢「………」
それでは埒があかないと思った霊夢であったが、それよりも永琳と勇儀の方が話してくれる可能性が高いと思い、それ以上の詮索をしなかった。
霊夢「まあ良いわ」
萃香「ところで、私も捜査に協力させてもらえないかな?」
レミリア「え?」
萃香「勇儀が襲われたとき、側にいたのに何にも気付けなかったのが悔しくてね」
優曇華「私も、師匠を襲った相手に勝てるかどうかは分からないけど、やられっぱなしは嫌なのよ」
レミリア「それは、こちらとしても願ったり叶ったりだけど…」
萃香「じゃあ決まりだね」
レミリアはどうにも釈然としない様子だが、今は猫の手も借りたいほどだ。
実際、この二人の能力だけでも心強い。
萃香「それで、まずは何から手をつけるの?」
霊夢「あんたの能力で何とかならない?」
萃香「私?う〜ん…まあ、チビ萃香達を使ったり霧散すれば何とかならなくもないかもだけど…幻想郷中を見張るなんて出来ないし、チビ萃香達を使ったところで襲われる瞬間を見れるかどうかは運だからね。次に誰が襲われるか分かれば、話は別だけどね」
霊夢「それが分かりゃ苦労しないわよ」
早苗「一輪さん、星さん、聖さん、慧音さん、美鈴さん、パチュリーさん、文さん、優曇華さん。そして、今回新たに勇儀さんと永琳さんの計十名。永琳さんが襲われた時点で、被害者の共通点が完全に分からなくなってしまいましたね…」
優曇華「と言うと?」
文「優曇華さんまでは、被害者の共通点は妖怪でした。しかし、永琳さんは妖怪ではない」
優曇華「言われてみれば…」
咲夜「今までの状況から、犯人は里、もしくは里の周辺が拠点だと推理していたわ。しかし、迷いの竹林は里からそこそこ離れている」
霊夢「もしかしたら、今までの犯行と、永琳の犯行は別なのかしら?」
早苗「つまり、模倣犯…?」
レミリア「その可能性はないと思うわ。だって、頭に傷があったり、体にアザが出来ていたり、被弾痕でもあれば、そこからXの犯行を模倣をする事は出来るでしょうけど、被害者に外傷は無いのよ?」
萃香「えっくす?」
霊夢「犯人の事を、そう呼ぶようにしてるのよ」
優曇華「………」
霊夢「そう言えば、優曇華も襲われてたわね。何をされたのか、そろそろ話してくれても良いんじゃない?」
優曇華「分からな言っていったじゃない」
やはり文、優曇華の両名は何かを隠している。
その隠している何かが、この事件の核心を突くものだと、霊夢の勘が訴えていた。
被害者がひた隠しにしている何か…それさえ分かれば…。
早苗「被害者の方々から聞き出すのが無理であれば、やはり我々で調べ上げるしかありませんね」
霊夢「そうは言っても、現状どうしようもないじゃない」
早苗「そうとも言い切れませんよ?」
霊夢「どう言うこと?」
早苗「そうですね…それを説明するためにも今後のためにも、ホワイトボードが欲しいところですが…」
咲夜「ホワイトボード?」
霊夢「白板?」
早苗「ありませんよね、分かってました。では、大判の紙とペンを用意していただけませんか?」
咲夜「メイド隊」
妖精メイド「お呼びでしょうか?」
咲夜「大判の画用紙か何かとペンを持ってきなさい」
妖精メイド「分かりました」
数分後、妖精メイドが紙のロールと、ペンを数本持ってきた。
早苗はそれを受け取ると、レミリアに許可を得て紙を壁に貼った。
早苗「それでは…。我々は今まで、被害者の共通点ばかりに目が向いていました。しかし、永琳さんが襲われた事で、唯一とも言える手掛かりが無くなってしまいました」
霊夢「まあ、そうね…」
早苗「そこで、考え方を変えてみましょう」
そう言って早苗は、壁に貼られた紙に被害者達が襲われた場所を書き出し、命蓮寺にペンを指して続けた。
早苗「まず、最初の犯行が行われた命蓮寺。ここの被害者は、一輪さん、星さん、聖さんの三名」
レミリア「そうね」
早苗「何故、この三名なのか?何故、村紗さんや雲山さん、ナズーリンさんやぬえさんや響子さんは襲われなかったのか?」
咲夜「そう言えば…調べてみましたが、ナズーリンさんと村紗さんは悲鳴を聞きつけ、あの部屋に行ったと言っていました。なのに、その方達は襲われていませんね…」
早苗「他の場所でも同様の事が言えます。紅魔館で…特に図書館で犯行に及んだXは、何故パチュリーさんを襲い、小悪魔さんを襲わなかったのか?」
レミリア「その通りだわ…何故、パチェだけ狙われたのかしら?」
早苗「この様に、紅魔館のような大きな施設で被害に遭われた方、被害に遭われなかった方をピックアップしてみましょう」
そう言って早苗は、犯行現場の名前の下に、被害に遭った者、遭わなかった者を書き出した。
早苗「さて…被害者が妖怪だと言う共通点だけを見ると、他にも妖怪が居るのに…と言う矛盾が生じるわけです」
萃香「確かに、一緒にいた私が襲われなかったのは何でだろ?」
早苗「では、被害に遭われなかった方達の共通点とは、いったい何なのでしょうか?」
霊夢「む…それは考えたこともなかったわね」
レミリア「それで、その共通点って?」
早苗「そこはまだ分かりませんが…それさえ分かれば、少しは犯人に近づけると思うんです」
霊夢「う〜ん…」
早苗が書いた紙とにらめっこだ。
しかし、すでに丑三つ時を過ぎ、全員の思考能力は無いに等しかった。
優曇華「…夜更かしは体に毒だし、みんなもう休んだ方が良いんじゃないかしら?」
萃香「すー…すー…」
霊夢「ひとり寝てるし…」
レミリア「仕方がない、ひとまず切り上げましょう」
霊夢「私はもう少し、ここで考えてるわ」
早苗「大丈夫ですか?」
霊夢「さっき叩き起こされて、目が覚めちゃってるのよね。私は大丈夫だからみんなは休みなさい」
優曇華「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうけど、あまり無理しないようにね」
霊夢とレミリアを部屋に残し、各々部屋へと戻っていった。
レミリア「じゃあ、私も寝るわ。おやすみ」
霊夢「おやすみ。さて…」
霊夢は壁に貼られた紙を眺めた。
優曇華のパターンを考えると、永琳が襲われた際に優曇華は襲われなかった。
一度襲った者は襲わないのだろうか?
勇儀のパターンを考えると、隣で歩いていた萃香ではなく勇儀が襲われた。
Xが被害者を選んでいる事は明らかだが…何故、萃香ではなかったのか?
そこは紅魔館での犯行にも同じ事が言える。
霊夢が色々と思案していると、咲夜がコーヒーとメモを持って、部屋に入ってきた。
咲夜「どう?捗ってる?」
霊夢「早苗のお陰で、色々と考えることが出来てるわ。それより、何の用?」
咲夜「差し入れよ。眠気覚ましのコーヒーとメモ帳」
霊夢「ありがとう」
霊夢はコーヒーを受け取り、一口啜った。
霊夢「っ!?」
しかし、すぐに咽せてしまった。
霊夢「にがっ!何よこれ…」
咲夜「コーヒーだから苦いのは当たり前でしょ?それに、砂糖とミルクを渡す前に飲んだ貴女も悪い」
霊夢「………」
咲夜「ここに置いておくから、好きに飲んで。私も休ませてもらうけど、あまり無理はしないように」
霊夢「分かってるわ」
咲夜「本当に分かっていればいいけどね。おやすみなさい」
霊夢「おやすみ」
咲夜を見送ると、砂糖とミルクを入れたコーヒーを啜りながら、再び紙に視線を戻した。
パチュリー、勇儀のパターンに絞り込んで考えてみるとどうだろうか?
どちらも、すぐ近くにいた小悪魔、萃香は襲われていない。
Xが被害者を選んでいるとして、その基準とは何なのだろうか?
もしかしたら、種族ではなく別の特徴…?
更に被害者達が、人には言えないような事をされたであろうと言うことから考えると…。
霊夢「もしかしたら……」
翌朝、紅魔館の食堂での朝食中。
レミリア「霊夢、昨夜はずいぶんと頑張ってたみたいだけど、何か分かった?」
霊夢「まだ確信は持てないし、確認してみないことには分からないけど…それでも、良いところまでは来てると思う」
早苗「流石ですね」
霊夢「あんたのお陰よ。書いてあった方が考えやすかったわ。ところで、勇儀と永琳の様子は?」
咲夜「今朝方、目を覚ましました。勇儀さんは、紅魔館のような所での食事は落ち着かないと言われ、一度地底に戻ると言っていました。永琳さんは、作りかけの薬が心配だと言って同様に。しかし、すぐに戻ると言っていました」
霊夢「そう。だったら私達も、さっさと朝食を済ませちゃいましょう」
紅魔館 レミリア私室
勇儀「昨日は悪かったな。まったく、不覚だったよ…」
永琳「注意はしていたけど、あそこまで気配を消せる者がいるなんて…」
用事を済ませた勇儀と永琳が、レミリアの私室に来たところで、霊夢が口を開いた。
霊夢「あんた等ほどの奴が、いったい何をされたのよ?」
勇儀「そ、それは…」
永琳「わ、分からないわ」
霊夢「言うと思ったわよ。文、優曇華、あんた等も言えないんでしょ?」
文「言えませんよ」
優曇華「何をされたのか分からないって言ったじゃない」
霊夢「やっぱりね。それじゃあ説明するわ」
霊夢は、壁に貼られた紙を指差した。
霊夢「永琳が襲われて、私達は被害者の共通点が分からなくなってしまった」
レミリア「今でもまだ混乱してるわ」
霊夢「更に、襲われた時に近くにいた小悪魔と萃香は襲われなかった」
早苗「そこも分からないところですよね」
霊夢「つまり、Xは何を基準に被害者を選んでいるのかを考えなければならなくなる。そこで、勇儀と萃香の事件だけを考えてみるとどうなるか」
レミリア「どうなるの?」
霊夢「萃香、勇儀、ちょっと前に出て」
霊夢は紙の前に二人を立たせ、壁の方を向かせた。
霊夢「ちょっと、犯人の気持ちになって考えて?もし、背後から襲うとしたら、あんた達ならどっちを襲う?鬼と言うことを抜きにして」
早苗「え?…う〜ん…」
咲夜「身長的に見て、勇儀さんを襲おうとは思えませんね。返り討ちに遭いそうですし」
霊夢はそれを聞いて、二人に前を向かせた。
霊夢「次に、この二人を見比べて?」
レミリア「……?」
霊夢「人には言えないような事をされた…つまり、猥褻行為と見て間違いないでしょう」
文、優曇華、永琳の三名は気付いたようだが、他は気付いていないようだった。
霊夢「そして猥褻目的だった場合、勇儀にあって萃香に無いもの。犯人が襲う基準としていたもの。それはこれよ」
突如、霊夢は勇儀の豊満な胸を鷲掴みにした。
全員が驚きの表情を浮かべている。
勇儀は咄嗟に、霊夢の手を払いのけた。
勇儀「な、何をする!?」
霊夢「こう言う事をされたんでしょ?」
勇儀「………」
霊夢「もう、隠さなくても良いんじゃない?」
勇儀は無言のまま、小さく頷いた。
霊夢「あんた達もそうなんでしょ?」
被害に遭った三名も小さく頷いた。
萃香「で、でも、だったらどうして言わなかったの?そのくらい、勇儀だったら言えるでしょ?」
早苗「…痴漢被害者の心理ですね。どこをどのように触られたのか等、事細かに説明しなければなりません。そんなの、恥ずかしくて言えませんよね。しかも、それが見ず知らずの方だったら尚更です」
霊夢「実際、犯人の顔は見てないんでしょ?そんな奴に胸を揉まれたなんて、口が裂けても言えない。気を失ってる間に何かをされたかもと考えると特にね。そして、犯人の目的が胸なら、被害者にも共通点が生まれる」
咲夜「なるほど…皆さん、胸の大きい方ばかりですね」
霊夢「かなり強引な推理だけど…まあ結果オーライね」
パチェ「話は聞かせてもらったわ」
パチュリーが部屋に入ってきた。
レミリア「パチェ?どうしたの?」
パチェ「確かに、紅白の推理は素晴らしい。でも、その推理には欠陥があるわ」
レミリア「どう言う事?」
パチェ「犯人の目的が胸なら、私だけじゃなく小悪魔も襲われていたはずよ?」
レミリア「え?」
皆が顔を見合わせている。
小悪魔の胸が大きい?パチュリーが続けた。
パチェ「あら、知らなかった?あの子、私より大きいわよ?」
レミリア「ええ!?」
パチュリーもそれなりの大きさだが、それよりも大きいとは、その場にいる誰もが思わなかった。
パチェ「結構着痩せするタイプだけど、大きいことは間違いないわ」
レミリア「じゃあ……」
咲夜「捜査は振り出し…って事になりますね…」
全員が溜め息を吐いた。
永琳「…まあ、仕方がないわよ。私はそろそろ戻るけど、良いかしら?」
勇儀「私も戻る。世話かけたな」
霊夢「あ…ええ…一度襲われた奴が、また襲われる例はないけど、一応気を付けなさい?」
永琳「分かったわ。優曇華も気を付けなさい」
優曇華「はい…」
勇儀と永琳を見送ったパチュリーも、図書館に戻ると言い退室した。
霊夢「手詰まり…ね…」
早苗「仮に、霊夢さんの推理が正しかったとして、次は誰が襲われるのでしょうか?」
霊夢「そこまでは流石に…」
咲夜「やはり、聞き込みでしょうか?」
レミリア「里を中心に、今日はもっと範囲を広げましょう」
萃香「それなら私の仕事だね。霧化すれば、広い範囲の情報を仕入れやすいし」
レミリア「本当、貴女が捜査に加わってくれて助かるわ」
萃香「じゃあ早速行ってくるよ。何かあればすぐに知らせるから」
そう言って萃香は霧となり、部屋から出ていった。
早苗「私達も行きましょう」
霊夢達が人間の里で情報収集している頃、太陽の畑 幽香の家では…。
メディ「幽香〜、遊びに来たよ〜」
メディは扉をノックした。
しかし、幽香からの返事は無い。
メディ「幽香?勝手にあがっちゃうよ?」
メディは、幽香の家に足を踏み入れた。
メディ「……え?ゆ、幽香!?どうしたの!?」
魔理沙「んん〜、今日も良い天気だぜ。里ではあんな事件が起こってるというのに、こっちの方は平和だな。まあ…一応、こんな事が起こってるって、あいつにも教えておいてやるか。世間話ついでにハーブティーでもご馳走になって…」
メディ「あ!魔理沙!」
魔理沙「おや、メディか。どうしたんだ?そんなに慌てて」
メディ「幽香が…幽香が!」
魔理沙「なにっ!?」
人間の里
霊夢「やっぱり情報は無しか…」
早苗「霊夢さん、そっちはどうでした?」
霊夢「収穫無し。あんたの方もそうなんでしょ?」
早苗「はい…やはり、犯人の特徴が分からないことには…」
霊夢「誰も見てないから仕方がないんだけどね…」
魔理沙「おーい!霊夢ー!」
霊夢「あら、魔理沙じゃない。どうしたの?」
魔理沙「大変だ!幽香が襲われた!」
霊夢「何ですって!?」
幽香の家
部屋のベッドには、気絶した幽香が寝かされていた。
側ではメディが介抱している。
霊夢「状況は?」
魔理沙「朝、幽香の家に遊びに来たメディが、倒れている幽香を発見したらしい。特に怪しい人物も見なかったそうだ」
霊夢「そう…魔理沙は、どうしてここに?」
魔理沙「里で事件が起こってるって事を、幽香に教えてやろうと思ってな。そこへメディが来て、幽香が倒れてるって言ったんだ」
早苗「魔理沙さんがそんな事をするなんて…」
魔理沙「何も疑うなよ?そんな事は建て前で、幽香にハーブティーでもご馳走してもらおうと思ってただけなんだから」
早苗「やっぱり、いつもの魔理沙さんでした…」
霊夢「いつ襲われたか分からないか…メディ」
メディ「なに?」
霊夢「この周辺で、何か変わったことは無い?」
メディ「変わったこと……それと関係あるか分からないけど、向日葵畑が荒らされてなかったってことかな?」
霊夢「と言うと?」
メディ「もし、その人が歩いてきたら、向日葵達や他の花達が邪魔をするようになってるの」
魔理沙「自然の防衛システムってところだな。私も手を焼いてる」
メディ「それが、私が来た時には何事もなかったような感じだった」
霊夢「そう…他には?」
メディ「他は…特に無いかな?」
霊夢「分かったわ、ありがとう。幽香が目を覚ましたら、紅魔館に来るように伝えて?」
メディ「うん、分かった」
魔理沙「お、おいおい、もう行っちゃうのか?」
霊夢「早苗、どう?」
早苗「荒らされた形跡も争った形跡もありません」
魔理沙「いつの間に…」
霊夢「そう言う事よ。じゃあね」
太陽の畑 上空
霊夢「…どう思う?」
早苗「魔理沙さんは白だと思います」
霊夢「そうじゃなくて、太陽の畑の防衛システムよ。そんなもの私は初耳だったけど、それを掻い潜って幽香を襲う…そんな事が出来るのかしら?」
早苗「う〜ん…」
霊夢「ちなみに、早苗はその防衛システムの事を知ってた?」
早苗「あ、はい。名前は知りませんでしたが、以前涼花ちゃん達と太陽の畑に行ったときに、向日葵に邪魔をされました」
霊夢「メディのような頻繁に遊びに行くような奴じゃないと、荒らさずに進むのは難しい?」
早苗「そうですね…能力を使えば話は別ですが、無理だと思います」
霊夢「そう…」
早苗「この事は、皆さんにも教えた方が良いと思いますが?」
霊夢「戻ってからでも遅くはないわ。それに、あんただって襲われないとも限らないのよ?」
早苗「そ、それもそうですね…」
霊夢「だから、とりあえず戻るまでは一緒にいなさい」
早苗「霊夢さん、頼もしいです!」
霊夢「はいはい…」
そんな話をしながら飛んでいると…。
チビ萃香「霊夢!事件だよ!」
霊夢「どこで?」
チビ萃香「中有の道!今、天狗と兎も向かってるから、すぐに行ってあげて!」
霊夢「分かったわ。早苗、行くわよ」
中有の道
先に到着していた文と優曇華が、現場検証を行っていた。
優曇華「次は小町さんか…やっぱり、犯人の目的は…」
霊夢「ふぅ…現場が近くて良かったわ」
文「あ、霊夢さん、早苗さん」
霊夢「状況は?」
文「被害者は、小野塚小町さん。中有の道で倒れているところを、出店のお姉さんが発見して、騒ぎになっているところを萃香さんが発見。そのことを私達に教えてくれました」
早苗「少しややこしいですね…」
優曇華「出店のお姉さんが発見したのが朝方。話を聞いた感じだと、私達が捜査を開始した頃になるわ」
霊夢「他には?」
文「話を聞いたのは出店のお姉さんだけで、他はこれからです」
霊夢「分かったわ。それじゃあ、聞き込みは私達が引き受ける。あんた達は小町の方をお願い。このままにしておくのは流石にね…」
文「分かりました。とりあえず、紅魔館に連れて行きます。お二人共お気を付けて」
文と優曇華は小町を担ぎ、紅魔館へと向かった。
霊夢達はその場に留まり、情報収集を開始した。
すると程なくして、人影が博麗神社の方角へ向かったと言う情報を得ることが出来た。
霊夢「Xめ…うちの神社で何をするつもりよ…」
早苗「とにかく向かってみましょう。ここから博麗神社までは距離もありますし、飛ばせばもしかしたら追い付くかも」
霊夢「そうね、急ぎましょう」
霊夢と早苗は博麗神社へ急行した。
その道中、先程から霊夢の肩に乗っているチビ萃香に、博麗神社へ応援を要請した。
チビ萃香「今は霧化しててすぐに向かえそうにないから、近くに居る奴に博麗神社へ行くように言っておくよ」
霊夢「頼んだわよ」
早苗「萃香さん、すっかり電話代わりですね」
霊夢「紫が勝手に陰陽玉を改造したあれね。って、話してる場合じゃないわ。もっと速度を上げなさい」
早苗「は、はい」
博麗神社
霊夢「はぁ…着いた……Xは?」
早苗「はぁ…はぁ…だ、誰も…居ないみたい…ですね…」
チビ萃香「霊夢!間欠泉センターだ!今、レミリアと咲夜が入っていったよ!」
霊夢「そっちか…はぁ…」
間欠泉センター入り口
普段は蓋をして隠してある間欠泉センターの入り口が開いている。
レミリアと咲夜が突入した後なのだろう、地下へと続く巨大エレベーターも見当たらない。
霊夢達は仕方なく、その巨大な縦穴へ飛び込んだ。
間欠泉センター 深部
レミリア「萃香」
チビ萃香「なに?」
レミリア「これで二人目よ?貴女、何か見てないの?」
霊夢「いいえ、三人目よ」
長い落下を終え、霊夢達が到着した。
レミリア「霊夢、三人目ってどう言う事?」
霊夢「幽香も被害に遭ってる。小町とこいつを含めて、今日は三人目よ」
そこには、間欠泉センターを任されている空が倒れていた。
咲夜「こんな短時間で三人…」
霊夢「とりあえず、こいつを運び出さなきゃね。早苗、手伝って」
早苗「はい」
レミリア「ここだと目撃者も居ないでしょう。何より熱くて適わないわ…私達も戻るわよ」
間欠泉センター入り口
地上に戻ってきた霊夢達だったが、そのタイミングで再びチビ萃香が叫んだ。
チビ萃香「大変!大変!一大事!今度は里だよ!それもほぼ同時!」
霊夢「そっちで運べない?」
チビ萃香「二人ならまだしも、被害者が三人も居るんだよ!だから誰か早く来て!」
レミリア「三人も!?」
霊夢「……分かった、私が行くわ。早苗は咲夜達と紅魔館に戻りなさい」
早苗「わ、分かりました…霊夢さん、気を付けて…」
人間の里
里の広場には人集りが出来ていた。
里の人間は、新たな被害者に不安がっている様子だ。
霊夢「萃香!」
萃香「霊夢!…この人集り、何とかしてくれない?」
霊夢「ほらほら、見世物じゃないわよ!戻りなさい!」
里の人間達は霊夢に追い払われ、蜘蛛の子を散らすように戻っていった。
萃香「助かったよ…身動きとれなくてさ…」
霊夢「別に良いわよ。それより、誰が襲われたの?」
萃香「この三人…」
萃香の側には藍、華扇、マミゾウの三名が倒れていた。
萃香「両手で三人持つのは流石にね…」
霊夢「分かった。一人担ぐから、残りをお願い」
霊夢達は三名を担ぎ、紅魔館へと急いだ。
紅魔館 レミリア私室
被害者達を客室へ寝かせた霊夢達は、レミリアの私室へと集まった。
レミリア「なんか…見境無いって感じね…」
咲夜「しかも、今回の被害者の方々も胸が大きい。やはり、霊夢の推理が当たっていたのでは?」
レミリア「でもそれだと、パチェが言っていたように小悪魔が襲われなかった理由が分からないわ」
早苗「ひょっとして、Xも小悪魔さんの胸が大きい事を知らなかったのでは?」
レミリア「え?」
早苗「ほら、パチュリーさんが、小悪魔さんの胸の方が大きいと話したとき、皆さんも驚いていたじゃないですか」
レミリア「確かに…私は気付きもしなかったわ」
咲夜「私もです」
早苗「つまり、パチュリーさん以外にその事を知る人物が居なかった。だから、小悪魔さんは襲われなかった」
文「そう考えれば、辻褄が合いますね」
優曇華「それよりも、気になったことがあるんだけど」
レミリア「なに?」
優曇華「どうして今日は、里から離れた場所で事件が起こったのかな?って」
早苗「言われてみれば…太陽の畑、中有の道は、里からかなりの距離があります」
優曇華「私はどうも…Xがわざとその場所を選んだような気がしてならないのよね」
レミリア「でも、だとしたら何のために?」
早苗「…あくまで仮説ですが、捜査の攪乱が目的だったのではないでしょうか?」
レミリア「つまりXは、こちらの動きに気付いている?」
早苗「あくまで仮説ですけどね」
霊夢「………」
文「霊夢さん、どうしました?」
霊夢「ちょっと、外の空気を吸ってくるわ」
霊夢は退室した。
文「…流石の霊夢さんも参ってるみたいですね」
レミリア「仕方がないわ。こんな短時間で六人も被害者が出たのだから」
紅魔館 外
霊夢は紅魔館の外壁の上に座り、そこから見える景色を眺めながら、今回の被害者について考えていた。
霊夢「……太陽の畑、中有の道、間欠泉センター、そして人間の里……早苗の言ったように、捜査の攪乱が目的かもしれないけど…どうにも引っかかるわね…」
と言うのも、太陽の畑から中有の道はそこまで離れていない。そして、間欠泉センターと人間の里。
仮に幽香が最初に被害に遭ったとしたら、ある意味では順番通りなのである。
被害者から話を聞いてみないと分からないが、犯人が徒歩だったとしても十分に各地を廻れるくらいの距離だ。
更に、太陽の畑の防衛システム。
知り合いである魔理沙や早苗も、防衛システムに邪魔をされている。能力でも使わない限りは、畑を荒らさずに突破は難しいと言う事実から、犯人は幽香に気に入られている人物。
そんな奴が、今回の事件を引き起こせるとなると、自ずとある人物の可能性が浮上する。
しかし、その人物だったとしても、紅魔館や永遠亭の警備を突破できるとは思えない。
……もしかしたら、最初から警備を突破する必要なんか無かったのでは?
もしそうであるのなら、太陽の畑の防衛システムが反応しなかった理由も説明がつくが…。
霊夢「…証拠もないし、誰も犯人を見ていないからなぁ…こいつにやられた?って聞いたところで、そうだとは言えないわよね…」
チビ萃香「霊夢、被害者が目を覚ましたよ」
霊夢「あんた…まだ肩に乗ってたの?」
チビ萃香「そんな事は気にしないで、早く戻りなよ」
霊夢「はいはい」
紅魔館 レミリア私室
目を覚ました被害者達が、レミリアの私室に集められていた。
レミリアの私室は広いとは言え、これだけ集まると窮屈に感じる。
レミリア「全員揃ったわね。何が起こったのか話してちょうだい」
幽香「まずは私から。…私が襲われたのが明け方だったわね。早く目を覚ました私は、畑の様子を見に行こうとした時に、背後から襲われたわ」
レミリア「襲われる前、何か変わった事はなかった?」
幽香「特にないけど…そんな奴が入ってくれば分かりそうなものだけどね」
レミリア「そう、分かったわ」
小町「次はあたいかな。魂を航し終えたあたいは、中有の道を散策しようとしたんだけど、その時背後から襲われてね…まったく、あんな事をされるなんて思いもしなかったよ」
早苗「襲われたのはいつ頃ですか?」
小町「どうだったかな?朝食を済ませた後だったから…それくらいの時間かな?」
文「幽香さんの後と見て間違いないでしょうね」
レミリア「何か変わった事はなかった?」
小町「何もないと思うよ」
レミリア「分かったわ。次は馬鹿鴉」
お空「馬鹿って言うな。え〜っと…私はいつも通り、間欠泉センターで仕事をしてたよ。何をされたか分からなかったけど、気が付いたらここに居た」
早苗「何か変わった事はありませんでしたか?」
お空「気持ちよかった以外で」
早苗「以外でお願いします!」
お空「う〜ん…特にないかな?」
萃香「多分、襲われたのは霊夢達に知らせる少し前だと思うよ」
レミリア「そう、分かったわ」
華扇「私は、里で事件が起こってるって聞いたから、怪しい妖怪が居ないか見回りをしていたわ。それなのに、急に襲われて…不覚だったわ…」
マミゾウ「儂は、小鈴の所に立ち寄った帰りに…」
藍「私は、結界の様子を見に来た帰りに、買い物をしようとした時だった。事件の噂は耳にしていたから、注意はしていたんだがな…」
レミリア「誰も犯人を見ていないのね?」
皆が頷く。分かってはいたが、ここまで誰も犯人を見ていないのもおかしな話ではある。
霊夢「萃香、あんたは霧化してたんでしょ?何か見なかったの?」
萃香「自分でも不甲斐なく思うけど、怪しい奴は居なかったよ」
霊夢「やっぱりね…あんた達は、もう帰って良いわよ」
早苗「帰しちゃうんですか?」
霊夢「これ以上の情報は得られないわ。現状ではだけど」
優曇華「と言うことは、何か分かったの?」
霊夢「確認しないことには分からないけどね。今までの事件現場でもう一度聞き込みよ」
レミリア「そんな事しても、新たな情報は得られないと思うわよ?」
霊夢「怪しい人物って聞いてるうちはね」
レミリア「どう言う事?」
霊夢「説明は後よ。どんな小さな事でも良いから、とにかく情報を集めるわよ」
早苗「霊夢さんにも考えがあるのでしょう。情報収集、行ってきます」
優曇華「てゐや兎達にでも聞いてみますか」
咲夜「私は妖精メイド達に話を聞いてきます」
レミリア「仕方ない。私は命蓮寺に行ってくるわ」
文「私は、里で情報を集めてきます」
萃香「じゃあ、私はそこ以外を聞いてみるよ」
レミリア「霊夢は?」
霊夢「私は気になることがあるから、別行動をさせてもらうわ」
萃香「それじゃあ、連絡を円滑にするために、チビ萃香をみんなに預けるよ。何かあったら、それで分かるから」
レミリア「では、各々Xに注意して、行くわよ」
レミリア達は情報収集に出掛けた。
霊夢「さて……」
霊夢はひとり、人間の里の外れに向かった。
霊夢「萃香」
チビ萃香「なに?」
霊夢「霧化してる状態で、人に張り付く事って出来る?」
チビ萃香「出来るよ」
霊夢「じゃあ…」
霊夢は一人の人物を指差し。
霊夢「あいつに張り付いて」
チビ萃香「え?でも…」
霊夢「良いから、早くしなさい」
チビ萃香「分かったよ…」
霊夢「それからもう一つ、別件を頼まれてくれない?」
チビ萃香「良いけど…」
しばらくして、霊夢が紅魔館に戻った。
レミリア達も戻っていたようで、情報の交換を行おうとしているところだった。
レミリア「霊夢、戻ったわね」
優曇華「どこに行っていたの?」
霊夢「ちょっとね。まずは、あんた達から聞かせてくれない?」
レミリア「命蓮寺は何もなかったわ」
咲夜「紅魔館も特には……ただ」
レミリア「ただ?」
咲夜「…どんな小さな事でも良いんですよね?」
霊夢「ええ」
咲夜「…涼花ちゃんが来ていたようです」
レミリア「それは聞いたわ」
咲夜「いえ、そうではなく、美鈴が襲われた前後にも、一度来ていたそうです」
レミリア「Xが居たかもしれないと言うのに…まあ、涼花ちゃんなら大丈夫だったでしょうけど」
霊夢「………」
文「里の方は、慧音さんが襲われる前に、人間の子供達が寺子屋に向かったとの情報がありました。恐らく、妹紅さんの言っていた課外授業に関することで、寺子屋に向かったのではないかと」
霊夢「他には?」
文「何しろ里には、人が大勢居ますからね。その他の目撃情報はありません」
霊夢「問題ないわ。優曇華は?」
優曇華「こっちは竹林に、里の子供達が来ていたって事が分かったわ。涼花ちゃんが一緒にいたから、竹林を抜けて永遠亭まで来たみたいだったけど、その後すぐに帰ったって言ってたわ」
霊夢「他には?」
優曇華「特に無いわね」
霊夢「そう、ありがとう。早苗はどうだった?」
早苗「間欠泉センターに行ってみましたが、特に何もありませんでしたね」
霊夢「そっちはあまり期待してなかったけど…レミリア」
レミリア「うん?」
霊夢「あんた達が間欠泉センターに入る時、どうやって降りていった?」
レミリア「どうって…普通にエレベーターに乗ってよ」
霊夢「エレベーターは有ったのね?」
レミリア「え、ええ…」
霊夢「なるほど…これでかなり繋がったわ」
レミリア「霊夢、そろそろ何が知りたかったのか、教えてくれない?」
霊夢「まあ待ちなさい。多分、そろそろだと思うから」
レミリア「…?」
レミリアが首を傾げていると、チビ萃香から連絡が入った。
チビ萃香「霊夢、あんたの読みは正しかったよ。たった今、Xの犯行現場を押さえたところ」
レミリア「え!?」
霊夢「場所は?」
チビ萃香「妖怪の山の麓だけど、紅魔館に向かうように伝えたから、もう少ししたらそっちに着くんじゃない?」
霊夢「ありがとう、戻って良いわ」
チビ萃香「はいはい♪」
霊夢「と言う訳よ。犯人が自ら来てくれるみたいだから、お茶でも飲みながらゆっくり待ちましょう」
無理もないが、レミリア達は分からないことだらけで混乱している様子だ。
そんなレミリア達を後目に、霊夢は咲夜にお茶を催促している。
しばらくして…。
妖精メイド「失礼します。お客様です」
レミリア「客?」
聖「ど、どうも…」
レミリア「ひ、聖!?」
聖「あの…萃香さんに、ここに来るように言われたのですけど…」
霊夢「よく来たわね。まあくつろいで」
妖精メイド「あと、もう一人お客様です」
レミリア「だれ?」
涼花「やっほー♪遊びに来たよ♪」
早苗「あら、涼花ちゃん」
霊夢「涼花ちゃんもいらっしゃい」
涼花「あれ?みんな集まってどうしたの?」
レミリア「はぁ…涼花ちゃん、悪いけど今は」
霊夢「別に良いじゃない。昨日はここに来たのに、早苗と神奈子以外は遭ってなかったんだから」
レミリア「で、でも…」
霊夢「涼花ちゃん、里を騒がせている事件、知ってるわよね?」
涼花「う、うん」
霊夢「その犯人が分かったのよ。里を騒がせ、数々の乙女を襲った犯人は…」
霊夢がゆっくりと人差し指を向ける。
全員が息をのんだ。
霊夢「あんたよ!」
霊夢が指を差したのは聖……の隣にいる涼花だった。
霊夢「まさか、あんただったなんてね。小さな犯人さん」
涼花「え?…え?」
皆が驚愕しているのを後目に、霊夢は続けた。
霊夢「多分涼花ちゃん自身、そう言うつもりはなかったんでしょうけどね」
レミリア「霊夢!どう言う事よ!涼花ちゃんが犯人って!」
霊夢「それを今から説明するわ。その前に、涼花ちゃんと聖に確認したいんだけど、聖が襲われた日、涼花ちゃんはもしかしたら命蓮寺に泊まってたんじゃない?」
聖「え、ええ…」
涼花「泊まったよ…」
霊夢「やっぱりね、それが分かれば良いわ。今回の一連の事件…事件と呼ぶのも大袈裟だったのかもしれないわ」
レミリア「どう言う事?」
霊夢「最初の事件があった夜。何で泊まったかは置いといて、その夜、涼花ちゃんは尿意から目を覚ましたはずよ。多分、一輪の部屋か、その近くの部屋を借りていたんでしょう。でも、涼花ちゃんが厠から戻った時、涼花ちゃんは部屋を間違えてしまった。それが、事件現場となったあの部屋よ」
レミリア「ま、まあ確かに、あり得ない話ではないけど…」
早苗「実際のところ、涼花ちゃんは何故、命蓮寺に泊まっていたのですか?」
涼花「そ、それは…」
聖「涼花ちゃんの悪癖を治す為よ」
涼花「ひ、聖お姉さん…」
霊夢「なるほどね、だからか。…話を続けるわ。事件が起こったあの部屋に迷い込んだ時、一輪が物音に気付いてその部屋にやってきた。一輪は遅くまで読書をしていたと言っていたわね。そして、涼花ちゃんは厠からの帰り。多分、涼花ちゃんの方が暗闇に目が慣れていたんでしょう。そこへ一輪がやってきた。涼花ちゃんは、自分の事が見えてないと気付いて悪戯心が芽生えた。ちょっと脅かしてやろうってね」
聖「涼花ちゃん、本当?」
涼花「………」
霊夢「でも一輪は、涼花ちゃんの予想以上の反応を示し、悲鳴を上げて倒れてしまった。それで気を良くしたのかしら?一輪が悲鳴を上げたから、必ず誰かがあの部屋に来る。同じように脅かしてやろうと思ったんじゃない?」
早苗「でも、それならどうして皆さんの胸を?」
聖「そ、そうよ。涼花ちゃんは泊まってる間、一度も胸を揉まなかったのよ?」
霊夢「それが原因よ。泊まってる間、ずっと我慢してたんでしょ?それが、あるキッカケでタガが外れてしまった」
早苗「一輪さんが気を失った時…」
優曇華「…話は分かった。ただ、ひとつの疑問があるわ。星が見た黒い影って何だったの?」
霊夢「これは、実際見た方が早いわね」
そう言うと霊夢は、レミリアの部屋のカーテンを引いた。
部屋は薄暗くなり、人影がぼんやりと浮かぶ程度である。
霊夢「あんた達に聞くわ。普段、目線ってどこに向けてる?」
早苗「どこって…真っ直ぐですけど…」
霊夢「じゃあ、私はどこにいるか分かる?」
レミリア「もちろん……あれ?」
早苗「ど、どこに行ったんですか?」
霊夢「居る場所は変わらないわ。ただ、少しだけしゃがんでる。ちょうど涼花ちゃんの背丈くらいかな?」
早苗「…あ、ほんとだ」
霊夢はカーテンを開けた。
霊夢「私にはリボンとかあるから私だって分かったでしょうけど、これが涼花ちゃんだったら?」
早苗「…区別がつきませんね…」
霊夢「これで、暗闇の中で涼花ちゃんが動いてみなさい?黒い影の誕生よ」
レミリア「なるほど…」
霊夢「更に言うと、勇儀のように身長の高い奴が振り向いたところで、涼花ちゃんくらいの背丈は視界に入らないわ」
涼花「………」
霊夢「続けるわね。星の胸を揉んだあたりで、騒ぎが大きくなったのね。涼花ちゃんは借りている部屋に戻って、眠りに就いた。翌朝、私達が来る前に、涼花ちゃんは寺子屋に向かった。課外授業があるって言ってたから、そのためでしょう。まさか涼花ちゃんも、あんな騒ぎになるとは思ってなかったし、自分の所為だとも思わなかった。そう考えれば、他は大体察しが付くでしょ?」
咲夜「怪しい人物なんか見かけないわけね…涼花ちゃんが里を歩いていても不思議ではないし」
優曇華「兎達が警戒しなかったのも、それが原因ね…」
早苗「太陽の畑の防衛システムも、涼花ちゃんが行ったから反応しなかった。涼花ちゃんは幽香さんに好かれてますからね…」
萃香「でも、命蓮寺の場合は気を失っちゃうのも分かるけど、他の被害者はどうやって気絶させたの?」
霊夢「それは、早苗がよく分かってるはずよ?」
早苗「そ、それは…ノーコメントで…」
萃香「…まさか?揉まれただけで気を失っちゃったの?」
早苗「………」
萃香「呆れた…じゃあ、勇儀や永琳も?」
霊夢「そう言うことなんでしょうね」
文「しかし、涼花ちゃんが揉んだと言う証拠がありませんよ?」
霊夢「だから聖を呼んだのよ。さあ涼花ちゃん、聖の胸を揉んでみなさい?」
聖「なっ!?」
霊夢「実況検分よ」
聖「うぅ…」
涼花「じ、じゃあ…」
涼花は聖の胸を軽く揉んでみた。
霊夢「…どう?」
聖「ま、間違いないわ…」
涼花「………」
レミリア「…涼花ちゃん!」
涼花「ひぅっ!」
レミリア「こんな騒動を起こして私達を散々振り回して!覚悟は出来てるんでしょうね!」
涼花「だ、だって…こんな大事になってるなんて思わなかったし…」
霊夢「まあまあ、あまり怒らないの。これだけ大騒ぎした私達も悪いと思うわ。でも、罰は受けてもらわないとね」
涼花「ば、罰って…?」
後日 博麗神社
涼花「霊夢お姉ちゃ〜ん…疲れたよ〜…休みたいよ〜…」
霊夢「駄目よ。まだこんなに落ち葉が残ってるじゃない。それを綺麗にするまで、休憩は無しよ」
涼花「うぅ〜……」
紫「まさか、私がちょっと寝てる間にそんな事が起こってたなんて…あははwこれは傑作だわw」
霊夢「笑い事じゃないわよ…どれだけ大変だったか…」
紫「で?今涼花ちゃんがやってるのが罰ってわけねw」
霊夢「そうよ。他の所だと、隙をついて胸を揉んだりサボったりするでしょ?言いたかないけど、私が揉まれるはずもないし、私が見張ってればサボりもしないでしょ」
紫「確かに、霊夢はおっぱい小さいからねw」
霊夢「笑いながら言うな!」
紫「はぁ、可笑しいw…ところで、貴女の話を聞いて一つだけ分からないことが」
霊夢「何よ?」
紫「小悪魔はどうして襲われなかったの?」
霊夢「確認してみたんだけど、小悪魔って本当に着痩せするのね。あれは分からなくても仕方がないわ。多分、涼花ちゃんも気付かなかったんでしょ」
文「号外!号外!」
紫「新聞屋さん、一枚貰える?」
文「はいどうぞ♪」
紫「……ふふw」
人間の里を震撼させた事件、遂に犯人逮捕
先日未明より里を騒がせていた事件は、紅魔館の主であるレミリア・スカーレット氏の活躍により見事、犯人逮捕へと繋がった。
現在は犯人の余罪を追究しており…
紫「レミリアが解決したことになってるし…記事の内容も甚だしいわね」
霊夢「あまり目立つのもね…それに、涼花ちゃんがやったなんて書けないから、当然の措置よ」
涼花「終わったぁ〜…」
霊夢「ご苦労。それじゃあ休憩にしましょう」
涼花「やった♪」
紫「だったら良い物があるわ」
霊夢「良い物?」
紫「さつまいもよ♪落ち葉を焚いて、焼き芋にしましょう♪」
涼花「賛成♪」
今でこそ喜んでいるが、この後一週間は霊夢にこき使われることを、この時の涼花はまだ知らなかった。
これだけ迷惑をかけたのだから当然の報いだと、霊夢は思っていた。
涼花「おいしい〜♪」
終わり