涼花ちゃんストーリーまとめサイト(改)


三つの魂


霊夢、魔理沙、そしてさとりと神奈子は、博麗神社へと向かいます。


「それにしても…」


霊夢の目の前には、妖精の大群。
神社はもうすぐそこなのですが、どうにも妖精達が邪魔をしてきます。


「構ってる暇はないし、かと言ってスペルカードは温存しておきたい…とか言ってられないわね」


妖精達の放つ弾幕の密度が、先程よりも明らかに濃くなっています。
妖精の数自体も多く、弾幕のタイプもバラバラで、霊夢から見ればいつも通りです。
レミリアとの戦闘で、スペルカードを消耗してしまった霊夢でしたが、ここでやられてしまっては元も子もないと、温存していたスペルカードを使用し、まとめて撃墜していきました。
妖精達をなんとか蹴散らし、人間の里まで戻ってきた霊夢。
神社まではもうすぐです。
しかし、ここに来て、妖精達の攻撃がピタリと止んでしまいました。
人間の里だから諦めた。と言うわけではないようです。
この先に、強い力を持つ者が待っているのでしょう。
そんな事を考えていると、辺りには何やら、怪しげな雰囲気と禍々しい魔力が漂い始めます。
しかし、その者の気配には覚えがあります。


「わざわざ、そっちから出向いてくれるなんてね。涼花ちゃん」


霊夢が呼び掛けると、辺りの魔力が集まり、漆黒の靄を作り始めます。
そして、その靄の中から現れたのは、霊夢の呼び掛け通り、涼花ちゃんでした。


「あらら、バレちゃってたんだ」
「異変解決の専門家を、侮らない事ね」
「でも、わたしだと気付いただけ。何が起ころうとしてるかなんて、分かってないんじゃない?」
「それはそうだけど…」


霊夢は札を構えます。


「涼花ちゃんを倒せば、全部解決するって事だけは知ってるわ」
「…ここは、わたしの夢なんだよ?ここではわたしは、何だって出来るんだよ?だから霊夢お姉ちゃんは、わたしには勝てないんだよ?それでも霊夢お姉ちゃんは、わたしを倒そうとする?」
「出来るか出来ないかは、私が決める事よ?」
「そう…丁度、良いオモチャも手に入った事だし、手加減なんかしてあげないよ?」


涼花ちゃんの両サイドに、先程と同じ漆黒の靄が現れました。
その靄の中から現れたのは…。




博麗神社へと向かっていた魔理沙は、いつの間にか、何処とも知れぬ場所に迷い込んでいました。


「う〜ん…里までまっすぐ進んでいた筈なんだが…ここはどこだ?」


子供が描いた絵のような世界。
別の、誰かの夢に入り込んでしまったのでしょうか?
魔理沙が思案しながら飛んでいると、この世界には不釣り合いな、教育上よろしくない見た目の悪魔、夢魔が現れました。


「まったく貴女達は…どうして、来てはいけないところに来ようとするの?」
「よう、夢魔。ここは…お前の作った夢か?」
「そう。よく気付いたわね。…と、言う事は、さっきまで居た所も、夢だって気付いてたのかしら?」
「まあな」
「そう…貴女達は、本当に勘が良いわね。伊達に異変解決してないか。…でもね?」


夢魔の体に、魔力が集まっていきます。


「何が起こっているのか。それは分かっていないんじゃない?」
「理由や原因なんてものはな?お前達を倒してから聞いたって、遅くはないんだぜ?」
「…何も隠す必要のない、全力全開の私は、か弱い人間如きに倒されるほど甘くはないわよ?」


夢魔が、集めた魔力を解放します。


「この先には進ませない。それが、あの子の意志だから」




同じく博麗神社へと向かっているさとりと神奈子。
妖精達を全て撃退した頃には、人間の里の手前まで来ていました。


「なかなかやりますね」
「手加減出来ないとか言っておきながら、お前自身は攻撃しないんだな」
「攻撃?してましたよ?あの妖精は、私が作り出したものですからね」
「そうか。では、次は何を作り出すつもりだ?」
「正直、ここまで出来るとは思ってもいませんでした。なので、ここからは…私が自らお相手しましょう!」
「お前は…倒されたいのか戦いたいのか、どっちかにしろ」
「戦った上で倒されたい。私も、神遊びと言うものに興味がありますからね。一度本気でやってみたかったのです」


莫奇は、大小様々な弾幕を無作為にばらまき始めました。


「お、おいおい!いきなりそんな…と言うか、さとりはさっきから何で黙ってるんだ?」
「話し掛けないでください!戦闘慣れしてない私から見れば、先程の妖精達ですらいっぱいいっぱいだったんですから!」


さとりは明らかにテンパっています。
ただでさえ、雛との戦いで消耗している上、先程の妖精の群れ。更にはこの弾幕の密度。さとりは心が折れかかっています。
流石に、さとりへのサポートのみでは限界を感じた神奈子は、自身も攻撃へ参加します。


「さっさと倒して、先へ進むぞ!」
「ふふ♪さっさと倒されるほど、私は甘くはありませんよ!」
「言ってることが滅茶苦茶になってきたな…。これも、涼花ちゃんに近付いている所為…と受け取っておくとしよう」




博麗神社。
最後の一頁を前に、小鈴の手は止まっていました。


「そっか…。もう、限界なんだね?」


背後の者が語りかけます。
小鈴はもう、涙も枯れています。


「ごめんね?無理をさせちゃって。あとは、ゆっくり休むといいよ。今まで見た悲しいことは全部忘れて、愉しい夢を見ていればいいよ」


背後の者は、小鈴の正面に回り込みます。
その姿を見た小鈴は、目を見開きます。


「そんな…どうして?」


小鈴の目の前にいるのは、紛れもなく涼花ちゃんなのです。
しかし、それは有り得ない事。
何故なら涼花ちゃんは、小鈴が今、手に持っているのですから。
そう、小鈴が読んでいた小説こそ、涼花ちゃんなのです。
小鈴の能力の影響から、涼花ちゃんは本来の姿。小説に戻ってしまっていたのです。
だから目の前に、涼花ちゃんが居る筈はないのですが。


「何故?とか、考えなくても良いよ。だってもう…全部忘れるんだから」


目の前の者は、小鈴の額に人差し指を当てます。


「戻ったら、小さな私をよろしくね?…小鈴お姉ちゃん」


小鈴の意識は、とても深い所へと堕ちていきます。
後に残ったのは小説だけ。
それを拾い上げると、その者は最後の頁を開きます。


「これが、最後の一小節。小鈴お姉ちゃんのおかげで、失われた言語の意味も分かった。後は…邪魔されないように夢に誘った筈の霊夢お姉ちゃん達。夢の中まで、私の邪魔をしようとするのなら…たとえ霊夢お姉ちゃん達でも、容赦しないよ?」




人間の里、上空。


「やれやれ。まさか、ご主人と共に戦う事になるとは」
「とか言いつつ、藍もノリノリじゃない?」


涼花ちゃんの作り出した靄から現れたのは、紫と藍でした。
この二人も、先ほどのレミリアと同様なのだろうと、弾幕を回避しながら霊夢は考えます。
二人同時に戦った事のない霊夢でしたが、手加減をしているのか弾幕の密度は荒く、神経を削る程ではありません。
と、そこで余裕を見せてか邪魔をするためか、涼花ちゃんが話し掛けてきました。


「言ったでしょ?わたしには勝てないって」
「この程度で勝ち気かしら?それに…さっき、良いオモチャが手に入ったと言っていたわね?それはこいつらの事?それとも…こいつらに宿ってる夢蛾の事かしら?」


霊夢の突然の言葉に、涼花ちゃんの顔から笑みが消えます。


「知ってたの?」
「ええ。既に何人かに取り付かせている事もね。でも、よりによって夢蛾とはね…」
「…知ってても知らなくても、わたしに勝てない事に変わりはないよ」
「そうかしら?」


霊夢は攻撃の手を止め、紫と藍に語りかけます。


「紫。あんたの夢はどうせ、私の成長を見たいとか、そんな所なんでしょ?藍は、紫と一緒に戦いたい…かしら?でも、あんた達には、これとは違う小さな夢があるはずよ?」
「…やめて」


涼花ちゃんの制止を聞かず、霊夢は続けます。


「涼花ちゃんを見守る。それが紫の、あんたの小さな夢なんじゃないの?」
「やめてよ…」
「藍。あんただって同じ筈。見守るだけじゃない、道を誤りそうなら手を引いて、涼花ちゃんを元の道へ戻す。それがあんたの、ささやかな夢なんじゃないの?」
「やめて…やめてよ…」
「それなのに、涼花ちゃんが間違った方向へ行こうとしてるのに、それを見過ごすどころか荷担するのが、あんた達の夢なの?」


霊夢の口調が強くなります。


「あんな事を引き起こさせない為にも、あんた達は見守ってきたんでしょう!それが涼花ちゃんに良いように操られて、いい加減目を覚ましなさい!」
「やめて!」


霊夢の言葉を聞いた紫と藍から、先程見た美しい羽根の蝶が飛び出しました。


「…そうね、霊夢の言うとおりだわ」


それと同時に、紫と藍は正気を取り戻したようです。


「霊夢、迷惑を掛けたわね」
「まさか、霊夢に助けられるとはな…。私がもっとしっかりしていれば…面目ない」
「過ぎた事よ。あまり気にしてないわ。それより…」


三人は涼花ちゃんの方を向きます。
涼花ちゃんは、そっと人差し指を差し出すと、その指に、先程の蝶がとまりました。
涼花ちゃんはその蝶を眺め、三人へ視線を向けずに話し始めました。


「まさか、紫お姉さん以外にも、夢蛾の事を知ってる人がいるなんて」
「さあ、どうする?あんたのオモチャは、もう無いわよ?」


涼花ちゃんは空を仰ぎます。
その表情は、どこか切なそう。


「…霊夢お姉ちゃんは、どこまでわたしの邪魔をすれば気が済むの?」
「え?」


何の事かと問おうとする前に、涼花ちゃんの背後に黒い靄が現れました。


「これ以上、わたしの邪魔はしないで」
「何を言って…」


霊夢の言葉を聞かず、涼花ちゃんはその靄の中へと入ってしまいました。
すぐに追おうとする霊夢でしたが、その靄は涼花ちゃんが入った途端に消えてしまいました。


「涼花ちゃん。あんたが何を企んでるのかは分からないけど、私はあんたを、絶対に止めてあげる」


その事を固く決意した霊夢は、紫達の方を向きます。


「正直、あんた達にも来てもらいたい所だけど、もう時間なんでしょ?」


紫と藍の体は、足元から光の粒となって消え始めています。


「どうやら、その様ね。私達の小さな夢を、霊夢に託したから」
「ある意味、それで夢を叶えた訳だからな。夢蛾の見せる吉夢は終わったようだ」
「だから私達は、これから目を覚ましてしまう。霊夢の手伝いは出来ないわ」
「お前に全て託してしまうのは気が引けるが…どうか、涼花ちゃんの事を頼む」


二人は、その場から消えてしまいました。
残された霊夢は、涼花ちゃんに事の真相を確かめる為、博麗神社へと向かうのでした。




夢魔の夢。
魔理沙と夢魔は、この空間で激しい弾幕戦を繰り広げていました。
全力と言っていた夢魔の言葉に偽りはなく、魔理沙は夢魔の攻撃に押されています。


「ここまで強いとは、正直思ってもいなかったぜ。…だがな」


弾幕の隙間で、魔理沙は八卦炉を構えます。


「もう時間は掛けられないんだ。これで終わりにしてやるぜ!」
「させないわ!撃たれる前に当てさえすれば!」
「遅いぜ!恋符『マスタースパーク』!」


八卦炉から放たれたレーザーは、辺りの弾幕を巻き込みながら、夢魔へと襲い掛かります。
避けられないと判断した夢魔は、咄嗟に障壁のようなものを展開して、レーザーを防ごうとします。
しかし、そんなものなど意に介さないかのように、レーザーは障壁を破壊し、弾幕もろとも夢魔を飲み込みます。


「流石に堪えたんじゃないか?」


マスタースパークを撃ち終えた先には、体の節々から煙を上げている夢魔が、何とかその場に浮いている状態です。
魔理沙は余裕の表情を作ると、夢魔の近くまで来ました。


「どうする?まだ続けるか?」


魔理沙は夢魔目掛けて、八卦炉を構えます。
正直魔理沙は、ここまでの連戦でヘトヘトな為、これ以上の戦闘は避けたいところです。


「はぁ…流石に強いわね。でも、私にだって意地があるし、夢だと気付いてるあんたを、この先へ行かせる訳にはいかないのよ」
「事情があるみたいだな。それとも、ただ単純に主を守っているだけか?」
「両方よ。これは、あの子が望んでいること。しかも、能力を全開で使用してるから、私はあの子の命令に抗う事が出来ないのよ」
「つまり、そこまでして近付かれたくない理由があるってことか。いったい、何を企んでいるんだか」
「さあ、お喋りは終わり。さっきの続きといきましょうか」


夢魔は弾幕を展開します。
それに合わせて魔理沙は、数発の魔法弾を撃ち込むと、そのまま上空へと急上昇していきました。
そして魔理沙は、その場所から複数の薬瓶を放り投げました。


「そんな物まで投げてくるなんて、後がなくなってきたんじゃない?」


言ってしまえばただの瓶。軌道さえ見れば、避ける必要すらありません。
しかし。


「お前の敗因は、警戒しなきゃならない筈の物を警戒しなかった事だ。光撃『シュート・ザ・ムーン』!」


魔理沙がスペルカードを発動すると、落ちていった薬瓶が割れ、その中からレーザーが、天に向かって放たれました。
当然、夢魔の近くにもレーザーが飛んできます。
飛んできたレーザーが夢魔の体を掠めていきますが、負けじと夢魔も迎撃の体勢をとります。


「レーザーは直線…パターンさえ読めれば…」


ふと、魔力の高鳴りに気付き、上空を見上げると、魔理沙は両手を高く掲げ、その手に魔力が収束しています。
まさかと冷や汗を流す夢魔を見て、ニヤリと笑みを浮かべた魔理沙は、その手を勢い良く、夢魔に向かって振り下ろしました。


「星符『ドラゴンメテオ』!」


込められた魔力から放たれたのは、特大の魔法レーザー。
それは、夢魔の放った弾幕、魔理沙の仕掛けた光撃『シュート・ザ・ムーン』のレーザー、そして夢魔。その全てを飲み込みました。
恐らく夢魔は悲鳴を上げているのでしょうが、ドラゴンメテオのレーザーの発する爆音は、そんな悲鳴すらもかき消してしまいます。




「な、なに?」


神社へと向かおうとした霊夢は、突然の爆音と、目の前を過ぎる特大の光線に身を竦めます。


「こ、これは…魔理沙の…?」


光線の発射元を見ると、そこに居たのは魔理沙でした。


「どうやら今ので、元の夢に戻ってきたみたいだな」


何が起こっているのか分からない霊夢は、とりあえず魔理沙を叱ります。


「ちょっと魔理沙!いきなりこんなの撃ったら危ないじゃない!」
「ああ…悪い。ついさっきまで、夢魔の夢に居たからな。撃った先にお前が居るとは思わなかった。それよりもだ」


魔理沙の撃ったドラゴンメテオの着弾地点は、幸運にも里の外れだったため、民家や人間達に被害は無さそうです。
着弾地点の上空に浮いている夢魔は、全身ボロボロで、今にも落下してしまいそうです。


「まさか、私の夢から出られるとはね…」
「頼むから、これで終いにしてくれないか?こっちはもうヘトヘトなんだ…」
「…良いわ。霊夢と二人掛かりで来られても厄介だし、今は退いてあげる」


そう言うと夢魔は、目の前に紫色の靄を作り出し、その中へと入っていきました。
そしてその靄は、夢魔が入ったと同時に消えてしまいます。
それを見送ると、霊夢が魔理沙に問います。


「さて、何があったのか話してくれない?」
「ま、色々とな。多分、霊夢と大差ないとは思うが」


魔理沙は、これまでの経緯を説明しました。
それを聞いて、霊夢は軽く溜め息を吐きます。


「夢魔まで妨害してくるなんてね」
「案外、あの莫奇とか言う神も、こちらを妨害してくるかもな」
「或いは、もう妨害を始めているか。どちらにせよ、あいつとも戦う事になるかもね」
「となると…残りのスペルカードが心許ないな」


それを聞いて、霊夢が呆れた表情を見せます。


「あんた、ここが夢だって忘れてない?」
「あ?忘れてないぜ?」
「だったら、スペルカードの補充くらい出来るでしょ?」
「……ああ、そうか」


霊夢の言葉に、魔理沙は軽く念じます。
すると、先ほど消費した白紙のスペルカードが、手元に戻ってきました。


「いやはや、夢って便利だな」
「でも、体力だけは回復しないみたい。痛みもあるし…。さて、少し休んだら神社に向かうけど、あんたはどうするの?」
「そうだな…私もヘトヘトだし、休んでいくか。それに、目的地は同じなんだ。たまには、二人で異変を解決するのも、悪くないんじゃないか?」
「別に悪くはないけど、私の邪魔だけはしないでよ?」
「それはこっちの台詞だぜ」




人間の里。霊夢と魔理沙よりも、もう少し離れた場所。
莫奇に誘導されながら弾幕戦を繰り広げているさとりと神奈子も、流石に疲弊しきっている様子です。
それに引き替え、莫奇は実に楽しそうで、弾幕ごっこを目一杯堪能しています。


「楽しい。本当に楽しいわ。夢から作り出した紛い物ではなく、実際の相手と神遊びをするのが、こんなに楽しいものだったなんて」
「いやいや…遊びなんだから、少しは手加減してくれないか?さとりも、お前のあまりのタフさに参っているではないか…」


さとりはもう、話をする余裕もありません。
ノリにノッている莫奇は、そんな事などお構いなしに、高密度の弾幕を展開し続けます。
と、そこへ、騒ぎを聞きつけた霊夢と魔理沙がやってきました。


「あら、霊夢さんに魔理沙さん。貴女達も一緒にどうですか?ここまでだとは思っていなくて、もう楽しくて楽しくて♪」
「遠慮しておく。それよりもあんた、涼花ちゃんに何が起こっているのか、知ってるんでしょ?あの子の目的が何なのか教えなさい」
「ああ…神遊びに夢中になりすぎて、大事なことをすっかり忘れていました。しかし、涼花は私を、貴女達にけしかけた。貴女達を止める為に。それは紛れもなく、あの子の意志であり、私に拒否権は無いのです」
「だったら」


霊夢はさとりに言い放ちます。


「さとり。あんたが頑張らないと、どうしようもないみたいよ?さっさと倒しなさい」
「む、無茶を言わないでください!ここまでずっと戦ってきて、もう集中力も切れてるんです!」
「だったら神奈子。何とかしてやりなさいよ」
「簡単に言ってくれるな」


一見余裕そうな神奈子でしたが、やはりさとり同様疲弊しているようです。


「それに、スペルカードも最後の一枚なんだ。後の事を考えて、ここで使ってしまうのは…」
「その一枚。使えば倒せそう?」
「ああ。莫奇も最後の一枚だ。…時間制ではないから、押し切るしかないんだ」
「だったら使っちゃいなさい」
「しかし」
「良いから」


暫く考えた神奈子は。


「…分かった。さとり、スペルカードを使うぞ。神祭『エクスパンデッド・オンバシラ』!」
『…想起『うろおぼえの金閣寺』!』


巨大な御柱と天井の弾幕が、莫奇目掛けて襲い掛かります。
二つが眼前まで迫ると、莫奇は静かに微笑み、防ぐことなく弾幕を受け入れました。


「…やったか?」


弾幕が過ぎ去ると、ボロボロになった莫奇が佇んでいました。


「はぁ〜…楽しかった」


二人の弾幕を受けてなお、余裕な様子の莫奇ですが、弾幕ごっこのルール上、莫奇は敗北した事になります。


「これなら、あの子も納得でしょう」
「さあ、何が起こっているのか、話してもらいましょうか」
「…良いでしょう。しかし、今は時間が惜しい。貴女達に敗れたと知ったあの子は、私を引き戻そうとするでしょう。なので、今起こっている…起ころうとしている事を、簡単に説明しましょう」


莫奇は息を整えると、現在起ころうとしている事を、素早く丁寧に語り始めました。


「あの子は奥義を…夢現封遙を使おうとしているのです」


耳を疑う発言に、その場にいる全員が驚きを隠せずにいます。


「ちょっと待ちなさい。あれは封印してあるから大丈夫だって、あんたが言っていたじゃない」


霊夢の言う通り、涼花ちゃんの持つ奥義『夢現封遙』は、莫奇と夢魔が夢の深淵に封印し、またその呪文も、既に失われた言語に書き換えており、涼花ちゃんが奥義を手にすることはありえないと、涼花ちゃんの夢の中で莫奇が説明していました。


「その筈だったのですが…何をどうしたのか、あの子は奥義の封印を解き、失われた言語の解読まで終わらせています。幸いなのは、奥義の発動までに時間を要する事でしょうか」
「涼花ちゃんは奥義を使って、何をしようとしているんだ?」


魔理沙の問いに、莫奇は首を振って答えます。


「分かりません。あの子に、そこまでして叶えたい夢があるとも思えませんし…」
「何にせよ、涼花ちゃんに直接確認するしかないわね」
「涼花は今、博麗神社に居ます。お願いします。貴女達ならあの子も、理由を話してくれるはずです。どうか、あの子を止めてください」
「ええ、元よりそのつもりよ」


それを聞いて安心した莫奇は、目の前に白い靄を作り出すと、その中へと入っていきました。
四人は莫奇を見送ると、博麗神社へと急行するのでした。
涼花ちゃんから、真意を問うために。




目覚めの時まで 残り一時間


続く