涼花ちゃんストーリーまとめサイト(改)
オータム・スカイ
白玉桜
涼花「秋だね…」
幽々子「秋ね…」
妖夢「秋ですね…」
ゆーちゃん「そう、秋なのです。なので、幻想郷の紅葉スポットを教えてください」
妖夢「紅葉スポットですか。それなら、良い場所を知ってますよ」
幽々子「ああ、あそこね」
涼花「あそこだね」
ゆーちゃん「どこ…?」
妖夢「妖怪の山です。特に、この時期の九天の滝の絶景は格別で、一見の価値アリですよ」
涼花「じゃあ、行っちゃおうか」
ゆーちゃん「そんな、簡単に行ける場所でもないんじゃないの?」
幽々子「そこは大丈夫。幻想郷一の護衛が、ここにいるからね」
妖夢「ん……わ、私ですか!?」
幽々子「他に誰がいるの?」
妖夢「し、しかし…」
幽々子「白玉桜なら大丈夫よ。だから行ってきなさい」
妖夢「は、はあ……。幽々子様がそう仰るのなら…」
と言うわけで妖怪の山の麓。
妖夢「着きました。ここが妖怪の山です」
麓から見上げる妖怪の山は、秋一色に染まっています。
涼花「相変わらず大きいね」
ゆーちゃん「うん…」
「あら、珍しい顔ぶれが揃ってるじゃない。それとも、いつもの事かしら?」
そこへやって来たのは咲夜でした。
涼花「あ、咲夜お姉ちゃん♪」
ゆーちゃん「こんにちは」
妖夢「咲夜さん、こんなところへ何の用です?」
咲夜「ちょっと、山菜採りにね。貴女達は?」
涼花「紅葉を見に来たの♪」
咲夜「…感心しないわね。この山は、ただの人間が登るには危険すぎるわ」
涼花「とか何とか言って、前は一緒に登ってくれたじゃん♪」
咲夜「誘い方が雑なのよ。それに、私は山菜採りに来ただけ。貴女達に付き合ってる暇は…」
ふと見ると、涼花ちゃんもゆーちゃんも、目に涙を浮かべています。
咲夜「う……」
妖夢「咲夜さん、観念してください」
咲夜「……はぁ、分かった。私もついていってあげる」
言い終わるのが早いか、涼花ちゃんとゆーちゃんは満面の笑顔になりました。
涼花「ありがとう、咲夜お姉ちゃん♪」
ゆーちゃん「ありがとうございます♪」
咲夜「この子達はほんとに…」
咲夜はもう一度ため息をつくと、渋々と言った様子で三人に同行することにしました。
しばらく歩いて妖怪の樹海。
相変わらず重い空気が、辺りに立ち込めています。
咲夜「留まっても良いことはないし、早く樹海を抜けてしまいましょう」
妖夢「そうですね」
「くるりくるくる想いは廻り、くるりくるくる厄は巡る。私のテリトリーへようこそ」
突如、四人の前に立ちはだかったのは、いつも以上に厄を溜め込んだ雛でした。
涼花「雛…お姉ちゃん?」
ゆーちゃん「…涼花ちゃん。あの人、嫌な感じがするよ…。涼花ちゃんの知り合い?」
雛「はじめまして、白くて可愛い人間さん。私の名は鍵山雛よ」
雛はにこやかな笑顔を浮かべながら、ゆーちゃんにそっと手を差し出します。
それに反応して、ゆーちゃんは自然と手を差し出そうとしましたが、それは妖夢と咲夜に制止されました。
咲夜「ゆーちゃん、今の雛に触らない方が良いわ」
妖夢「そうですね。どんな悪影響が出るか…」
雛「酷い言い様ですね。…まあ、あながち間違ってはいませんが」
咲夜「私達はこの先に行きたいだけ。厄神の貴女に、迷惑はかけないわ」
妖夢「穏便に済ませるのが、お互いのためだと思います」
雛「はいそうですか。と、通すわけにもいかないわね。この先は妖怪が跋扈する妖怪の山。人間が易々と立ち入って良い場所ではないのよ」
涼花「でも、妖怪の山の紅葉を見に行きたいし…」
雛「戻る気は無いと?」
涼花「そうなるかな」
雛「そうですか……。では、少々手荒になりますが、力ずくで貴女達を追い返します。覚悟してくださいね?」
雛に厄が集まっていき、いざ弾幕ごっこ。…と言うときでした。
突如現れた弾丸が雛の後頭部に直撃。
雛はその場に伸びてしまいました。
優曇華「まったく……。子供もいるんだから、少しは加減しなさいよ」
涼花「う、優曇華お姉ちゃん?」
そう。先程の弾丸を放ったのは、優曇華だったのです。
優曇華「涼花ちゃん、ゆーちゃん。怪我はない?」
ゆーちゃん「は、はい。私は大丈夫です」
涼花「わたしも何ともないよ」
優曇華「それは良かったわ。……でも、どうしてこんな所に? 危ないわよ?」
妖夢「滝の方まで、紅葉を見に来たんです」
咲夜「私はそれに、無理矢理誘われたわ。貴女は?」
優曇華「私は師匠に頼まれて、薬の材料探しよ」
咲夜「そう。まあ、旅は道連れって言うしね。貴女も私達に付き合いなさい」
優曇華「お断りしま……」
優曇華がふと涼花ちゃんとゆーちゃんを見ると、二人は目に涙を浮かべていました。
咲夜「まだ断る?」
優曇華「…ずるいです」
咲夜「貴女の気持ちも分からないではないわ。私も同じだもの」
優曇華「…分かった、分かりました。私も付き合います」
それを聞いて、二人は満面の笑顔になりました。
涼花「ありがとう、優曇華お姉ちゃん♪」
ゆーちゃん「ありがとうございます♪」
優曇華「やれやれ…厄介なのに巻き込まれたわ…」
愚痴を漏らしながらも、優曇華は四人に同行することにしました。
しばらく歩くと重苦しい空気に包まれていた樹海は晴れ、四人の目の前に未踏の渓谷が姿を現しました。
紅葉に囲まれた渓谷は美しく、五人はしばしの間、その景色に見とれていました。
ゆーちゃん「すごい…」
妖夢「はい、とても」
妖夢は近くの岩場に腰を下ろすと、涼花ちゃんとゆーちゃんを手招きしました。
妖夢「二人ともこちらへ来て、川を覗いてみてください」
涼花ちゃんとゆーちゃんは妖夢に寄り添い、川を覗き込みました。
透き通った川の上を、赤く染まった紅葉が流れていきます。
涼花「わぁ〜♪」
ゆーちゃん「きれい」
妖夢「見上げてばかりでなく、たまには視線を落とすのも良いものですよ」
優曇華「確かに。これはこれで風情があって良いわね」
川を眺めていると、近くから爆発音が響いてきました。
ゆーちゃん「きゃっ!?」
涼花「な、なに!?」
その方向を見てみると、何やら黒煙が上がっています。
咲夜「弾幕やスペルカードの爆発とは違うようだけど…」
妖夢「気になりますし、確認してみましょう」
四人は黒煙の元へと向かいました。
「ゲホッゲホッ! ん〜……失敗失敗」
何に使うものなのか。大きな機械が黒煙を上げ、その前ではにとりが悩ましい表情を浮かべていました。
にとりの体はすすまみれになっており、服は焦げてぼろぼろになっています。
涼花「にとりお姉ちゃん?」
にとり「ん? …おや、珍しい面子だね」
ゆーちゃん「…何があったんですか?」
にとり「ああ…。こいつを組み立ててたんだけど、どうやら配線を間違えたようでね。見ての通りって訳さ…」
咲夜「…これ、何なのよ」
ゆーちゃん「何だか…車のエンジンのようにも見えるけど…?」
にとり「その通り、これはエンジンさ。自動車の物とは違うけどね。こいつは…」
妖夢「その前に、体のすすを落としたらどうですか?」
にとり「ん? …それもそうだね」
そう言うとにとりは、躊躇なく近くの川に飛び込みました。
秋も深まり、冬の足音が聞こえてきそうな肌寒さですが…。
にとり「んん〜♪ 冷たくて気持ちいい〜♪ みんなもどう?」
優曇華「風邪を引きたくないし、遠慮しておくわ」
にとり「気持ちいいのに…」
ぶつぶつ言いながら、にとりは水から上がります。
体に付いたすすは落ちましたが…服の焦げた部分も落ちてしまったようで、所々に穴が開いています。
妖夢「…上がったら、早々に服を着替えてください」
にとり「ん〜? 女同士だし、別に問題ないでしょ?」
妖夢「不快です。それに、子供も見ています。早く着替えてください」
にとり「……はいはい、分かったよ」
少女更衣中……
にとり「お待たせ。それで、こんな珍しい面子が、妖怪の山に何の用があるのかな?」
涼花「紅葉を見に来たの」
にとり「そっか。でも…どうかな?」
優曇華「何が?」
にとり「警備の問題。ここら辺なら大丈夫だけど、滝に行くなら安全の保証は出来ないんだよね。あそこはもう天狗様の管轄だからね」
咲夜「そこは妖夢や優曇華もいるし、何より私がいるわ。この布陣なら、何の問題も起こらないわね」
にとり「だと良いけど……」
妖夢「私達の力は、貴女も良くご存じだと思いますが?」
にとり「もちろん、見くびってる訳じゃないんだけどさ」
優曇華「何を言いたいのか、ハッキリ言ったら?」
にとり「う〜ん…そこは自分の目で確認した方が早いと思うよ? とりあえず、私達は手出ししないからさ」
咲夜「…まあ良いわ。みんな、先を急ぎましょう」
にとりの態度が気になるところでしたが、五人は九天の滝へ向かうことにしました。
九天の滝
妖怪の山の大瀑布は轟々と音を立てながら、大量の水を絶え間なく注ぎ込んでいます。
それだけでも圧巻なのですが、そこに山の紅葉が映え、壮大な景色を作り上げています。
ゆーちゃん「すごーい!!」
優曇華「この滝はいつ見ても凄いけど、秋ともなるとまた圧巻ね」
咲夜「そうね。ひとつの芸術作品を見ているようだわ」
妖夢「……しかし、悠長に話をしているわけにもいかないようですよ?」
涼花「え?」
「侵入者よ! そこで止まりなさい!!」
上空から、滝の音にも負けないほどの険しい声が響いてきました。
声の方向に視線を向けると、そこには椛が剣と盾を構えて、涼花ちゃん達を見下ろしていました。
咲夜「もはやお約束ね…」
椛「お約束とか言うな! 私の哨戒中に山を登ろうとするからでしょ!」
優曇華「だったら、あんたが哨戒してない時に登ってやるからシフト表を見せなさい」
椛「そう言う問題じゃないわ! 立ち入り禁止! 登山禁止! 紅葉狩りなんてもってのほかよ!」
妖夢「なるほど『椛狩り』ですか。なかなか風情がありそうですね」
椛「……ああそう。好きなだけ馬鹿にするが良いわ。後悔しても遅いわよ!」
椛は鋭い雄叫びを上げます。
すると、滝の中や岩影から椛以外の天狗娘達が現れました。
どれも椛と同じ下っ端のようですが…。
椛「今回は私一人ではないわ! この数相手に、どこまで持つかしらね!」
優曇華「ちょっとちょっと! 人間の子供もいるのよ!」
椛「聞く耳など持たないわ! 山窩『エクスペリーズカナン』!」
「天狗のマクロバースト!」
椛「ギャフン!」
「アンド竜巻『天孫降臨の道しるべ』!」
その瞬間、椛は後頭部に風圧弾を受け、天狗娘達は竜巻により吹き飛ばされてしまいました。
涼花「び、びっくりした…」
ゆーちゃん「いきなり突風が吹くんだもん…飛ばされちゃうかと思った…」
文「こんの馬鹿椛! いったい何をやってるのよ!」
椛「何って…私は仕事を全うしてるだけじゃないですか!」
文「涼花ちゃんは私の客人としてもてなせって言ったでしょ!」
文は椛のモフモフの耳を引っ張り上げています。
椛「痛い痛い! 痛いですっ!」
文「ほら、ちゃんと謝りなさい!」
椛「あ、謝りますから、耳を引っ張らないでくださいよ!」
文から解放された椛は、愚痴を漏らし耳をさすりながら、涼花ちゃん達に謝罪をしました。
椛「…どうして私が…」
文「この度はうちの馬鹿犬がとんだご無礼を…」
咲夜「まあ、涼花ちゃんもゆーちゃんも怪我は無さそうだし」
優曇華「許してあげますか?」
ゆーちゃん「椛さんはお仕事をしていただけですし、勝手に山に入った私達が悪いから…許す許さないじゃないと思うんだけど…」
文「客人に牙を剥いた椛が悪いんです。ゆーちゃんが気にすることではありませんよ」
涼花「それより私達、この先に行きたいんだけど」
文「紅葉を見に来たんですよね?」
妖夢「どうしてその事を?」
文「ここに戻る途中、雛さんから聞いたんですよ。紅葉なら、滝の上から麓を眺めるのがおすすめですよ♪」
咲夜「ああ。あそこからの眺めは、幻想郷の絶景百選(稗田阿求著)にも選ばれてるからね」
優曇華「と言うわけで滝登りだけど…涼花ちゃんとゆーちゃんは誰と登りたい?」
ゆーちゃん「誰とって?」
妖夢「ここを徒歩で登るのは難しいでしょう。なので空を飛べる私達が、お二人を滝の上まで連れていってあげるってことですよ」
ゆーちゃん「なるほど……。じゃあ、私は優曇華さんと一緒に登りたい」
優曇華「あら、私で良いの?」
ゆーちゃん「はい♪」
咲夜「涼花ちゃんは?」
涼花「普段は妖夢お姉ちゃんに色々と連れていってもらってるから…たまには咲夜お姉ちゃんにお願いしよ♪」
咲夜「ええ、任されたわ♪」
妖夢「………」
咲夜「あら妖夢、選ばれなくて拗ねてるのかしら?」
妖夢「なっ!? そんなことはありません!」
優曇華「怒らなくても良いじゃない」
妖夢「怒ってません!」
妖夢はひとり、滝を登っていきました。
妖夢のその様子を見てほくそ笑んだ咲夜と優曇華は、妖夢のあとを追うように滝を登っていきました。
滝を登って数分後……。
ゆーちゃん「……優曇華さん」
優曇華「ん? どうしたの?」
ゆーちゃん「その……」
優曇華「もしかして、怖くなった?」
ゆーちゃん「いえ、そうじゃなくて……」
優曇華「?」
ゆーちゃん「その……耳、触らせてください」
優曇華「耳? ……ああ、別に構わないわ」
ゆーちゃん「やった♪」
咲夜「涼花ちゃん。ゆーちゃんって…」
涼花「うん、モフモフが好きなの。さっきの椛お姉ちゃんを見て、触りたいのを必死におさえてたし」
咲夜「…変な癖があるのは、涼花ちゃんだけだと思ってたわ」
ゆーちゃん「じゃあ…触りますね?」
優曇華「どうぞ」
ゆーちゃんは上機嫌で、優曇華の耳に触れました。
しかしその瞬間、ゆーちゃんの表情が固まりました。
ゆーちゃん「う…優曇華さん……」
優曇華「ゆーちゃん。今、貴女が思ったことは、心の中にそっとしまっておきなさい?」
ゆーちゃん「……はい」
妖夢「そんなこんなで滝の上に着きましたよ」
滝の上から見下ろす麓は秋色に染まり、それは見事な景色を作り出していました。
ゆーちゃん「す…すごい…。風で木々が揺れて、まるで赤い海が広がってるみたい」
文「赤い海……なるほど。そんな言い回しもあるのですね」
優曇華「居たんだ…」
咲夜「今年は例年以上に赤く染まったわね」
妖夢「この滝の轟音も、風情がありますね」
涼花「紅葉を見るなら、ここが一番だね♪」
文「そう言っていただくと、自分のことのように嬉しいですね」
ゆーちゃん「あ、にとりさんが手を振ってる」
優曇華「…よく見えるわね」
咲夜「……さて、そろそろ戻りましょう」
文「え? もう行ってしまうのですか?」
優曇華「もともと私は、薬の材料探しに来ただけだから」
咲夜「私も、山菜採りに来ただけだからね」
文「では、私が麓までエスコートしますよ♪ 断っても無駄ですよ? 意地でも皆さんに付いていきますから♪」
妖夢「その理由は?」
文「ネタください!」
優曇華「だろうと思ったわ」
涼花「わたしは構わないよ? 記事になることは何もなかったし」
ゆーちゃん「そうだね。新聞屋さんが聞いて面白そうなことは何もなかったよ」
文「そうなんですか?」
妖夢「はい。特に問題はありませんでした」
ゆーちゃん「……あ」
文「おや、何かありましたか!?」
ゆーちゃん「はい、色々ありました。それをお話する代わりに…」
文「交換条件ですか…ガキンチョのくせに隅に置けませんね。まあ良いでしょう。何をお望みで?」
文「はい、もう少し寄ってください」
咲夜「もっと心を込めなさいよ」
文「新聞に使ってはいけない写真を撮るとなると、モチベーションも上がりませんからね」
優曇華「こう言う写真こそ、写真らしいと思うけどね」
文「はい、それでは笑ってください」
妖夢「文さんの目が笑ってませんね」
文「はい、チーズ」
こうして、ゆーちゃんはまたひとつ、幻想郷での素敵な思い出を作ることが出来たのでした。
この写真は、ゆーちゃんにとって大切な宝物のひとつとなることでしょう。
終わり