涼花ちゃんストーリーまとめサイト(改)


Dreamer Christmas EXTRA


Stage EXTRA 鏡合わせの無垢な悪夢 〜Purity Nightmare〜


クリスマスイブが無事に終わり、クリスマス当日。
霊夢は再び、夢の世界の玩具の城を訪れていました。
理由は、本当にブラックサンタが封印されたのかを確認するためです。


霊夢「こんな城、いつから夢の世界(こちら側)にあったのかしら? 厄介な奴は住んでなさそうだけど…」
ゆーちゃん「誰かの夢が作ったんじゃないでしょうか?」
霊夢「……ゆーちゃん、どうしてついてきたのよ?」


霊夢の背中には、何故かゆーちゃんがしがみついていました。


ゆーちゃん「細かいことは良いじゃないですか♪」
霊夢「全然良くないわ」
ドレミー「あら、またいらしたのですね? あまり生身で、夢の世界に来てほしくないのですが…」
霊夢「ちょうど良かった。確かめたいことがあるの」
ドレミー「ブラックサンタが、ちゃんと封印されているか。ですよね?」
霊夢「話が早いわ。封印されてる場所まで案内しなさい」
ドレミー「お断りします」
霊夢「じゃあ、力ずくで」
ドレミー「どうして貴女は……良いです。何を言っても無駄なんですよね」
霊夢「聞き分けのいい奴は嫌いじゃないわ」
ドレミー「…何て言うとでも思いましたか? 今の貴女は完全に不純物。今すぐ目覚めるか、永遠の眠りについてください」


???


「……ん? 誰か来たのかな?」


思いがけない猛攻に苦戦を強いられた霊夢でしたが、どうにかドレミーに勝利することが出来ました。


ドレミー「す、少しは手加減してください…」
霊夢「それはこっちの台詞。さあ案内しなさい」
ドレミー「…分かりました」


玩具の城 玉座の間


霊夢「ちょっと、私達はブラックサンタの封印を確認しに来たのよ?」
ドレミー「分かっています。ですがその前に、厄介な夢の住人を何とかしてもらいたいのです」
霊夢「断る」
ドレミー「そうは言っても、もうここは彼女のテリトリー。逃れることは出来ません」
霊夢「…嵌めたわね」
ドレミー「勝手に夢の世界を訪れた罰だと思ってください。…それから、決して油断しないでくださいね? 彼女は他の夢の住人が苦戦するほどの力を持っています。せいぜい、殺されないよう気を付けてください」
霊夢「いらぬ心配だわ。で、その厄介者はどこにいるの?」
「厄介者って、私の事ですか?」
霊夢「…んん?」
ゆーちゃん「…えぇ!?」


霊夢とゆーちゃんの前に現れたのは何と『夢に寄り添うスピラエア』雪柳 至音だったのです。
突然の事に困惑する二人。
それもそうでしょう。
ゆーちゃんこと雪柳 至音は、霊夢の背中にしがみついているのですから。


霊夢「これは、どういう事?」
ドレミー「彼女は夢の住人。夢の中の至音なのです。もともと彼女は、幻想郷の少女達に憧れを抱いていました。私も、皆のように戦いたいと。普段の性格で抑制されている分、夢の中(こちら側)で思いっきり暴れているのですよ」
霊夢「でも、夢の中とは言え幻想郷よ? 幻想郷に住んでる奴らが手を焼くとは思えないけど」
ドレミー「夢の中の至音は、とても無邪気なのです。何の因果かは分かりませんが、夢の至音は戦う力を持っています。そして力を手に入れた無邪気は、この上ない狂気となるのですよ。私も止めようとはしているのですが…」
霊夢「…夢の中のゆーちゃんが暴れたら、どんな悪影響が出るわけ?」
ドレミー「このままいくと、夢の至音は現実の至音を肉体から追い出し、自らが現実の至音となるでしょう。この無邪気さと力を持っているわけですから、それは幻想郷にとって驚異となりうるかと」
霊夢「このゆーちゃんだけを隔離することは?」
ドレミー「……どこかの誰かさんのせいで、それもままなりません」


どこかの誰かさん……それはおそらく涼花ちゃんの事だろうと、霊夢は考えていました。


ドレミー「純真無垢で無邪気な子供は、夢を作り出す力も強力です。涼花ちゃんのようにはいかないかもしれませんが、どうかよろしくお願いします」
霊夢「……はぁ。分かったわ」
ゆーちゃん(夢)「話は終わった? さっきから戦いたくてウズウズしてたんだよね」
霊夢「こっちのゆーちゃんは、性格からして違うのね」
ゆーちゃん「…ごめんなさい」
霊夢「いや、謝ることじゃないんだけどさ。とにかく、死ぬ気でしっかり掴まってなさい?」
ゆーちゃん「は、はい!」
ゆーちゃん(夢)「白は黒の裏返し。その漆黒を覆い隠す為に、私は白を身に纏うの」


ゆーちゃん(夢)の白い髪と純白のワンピースが漆黒の色へと染まり、白く透き通った肌は褐色のものへと変化しました。
『夢に寄り添うスピラエア』改め『悪夢を見せる漆黒の幼花』雪柳 至音が戦闘態勢をとります。



ゆーちゃん(夢)「でも、白さを捨てた私には誰も勝てない。勝てるはずがない。白さを裏返した黒い私の、本当の恐ろしさを思い知るがいい!」


その言葉を皮切りに、ゆーちゃん(夢)はおびただしい数の弾丸を無数に展開しました。


霊夢「無邪気か……初めてフランと会った時の事を思い出すわね」
ゆーちゃん「れ…霊夢さん…」


ゆーちゃんは必死にしがみついていますが、この猛攻です。
様々な弾幕がすぐそばを通りすぎていく恐怖に、ゆーちゃんは体を強張らせていました。


霊夢「……これは、長引かせるわけにはいかないわね。威力重視(パスウェイジョンニードル)で一気に攻めるわ」


霊夢はホーミングアミュレットからパスウェイジョンニードルに切り替え、一気に押しきりました。


ゆーちゃん(夢)「へぇ、やるじゃん。苧環『愚者の黒紫花』!」


ゆーちゃん(夢)を中心に、幾重もの花が描かれるように弾幕が配置されていきます。
それらは一斉に外側へと展開していき、霊夢達を追い詰めます。


霊夢「…弾幕の密集度は凄いけど、下がればどうにか」


予想以上の弾幕の密集度に戸惑いながらも、霊夢はスペルカードを攻略しました。


ゆーちゃん(夢)「やっぱり、様子見のスペルカードじゃダメだね」
霊夢「今ので様子見かい…」
ゆーちゃん(夢)「でも、この程度でやられてたら張り合いがないからね。黒弾『三年磨いた無患子』!」


ゆーちゃん(夢)の周囲に、小さな黒い弾丸が配置されました。
それらは霊夢をロックオンしているらしく…。


ゆーちゃん(夢)「いっけー!」


の掛け声と共に、高速で霊夢の元へ飛来しました。


ゆーちゃん「きゃっ!」
霊夢「あぶなっ!」


咄嗟に回避し、直撃は免れた霊夢。
しかし高速の弾幕は、なおも霊夢達を狙い続けています。
慎重に弾道を見極めていく霊夢ですが、ゆーちゃんは前方を見る余裕がありません。
そしてゆーちゃんが気づいた頃には、霊夢はスペルカードを攻略していました。


霊夢「ゆーちゃん、大丈夫」
ゆーちゃん「は、はい…なんとか…」
ゆーちゃん(夢)「霊夢さん、そっちの私を捨てちゃえば? そうすれば楽に戦えるよ?」
霊夢「馬鹿なこと言わないで。そんな事をしたら本末転倒よ。それに、ゆーちゃんを背負っているからといって、私があんたに負けるはずがないでしょ?」
ゆーちゃん(夢)「言うね。じゃあ、これはどうかな? 黒夢『弾丸黒死の地』!」


ゆーちゃん(夢)は放射状にレーザーを放ち、霊夢の動きを制限しました。
その上で大量の小さな弾幕をばら蒔き、更に霊夢を追い詰めていきます。


霊夢「言うだけあって、なかなかえげつない弾幕を張るじゃない」
ゆーちゃん(夢)「ほらほら、そっちの私を捨てちゃえば楽になれるよ?」
霊夢「悪いけど、ゆーちゃんを荷物だと思ったことはないの」
ゆーちゃん(夢)「その強がりが、いつまで持つかな?」
霊夢「いつまでもよ」


慎重に回避し続けた霊夢は、このスペルカードも攻略しました。


ゆーちゃん(夢)「むぅ…。なかなか落ちないね」
霊夢「言ったでしょ? あんたに負けるはずがないって」
ゆーちゃん(夢)「…分かった。こっちも本気の本気でいくよ」
霊夢「良いから、さっさと来なさい」
ゆーちゃん(夢)「…黒花『独占的なブラックローズ』!」


ゆーちゃんは霊夢を取り囲むように弾幕を配置しました。
そこへ一発の大きな弾丸を撃ち込みます。
弾速は遅いため回避するのは容易なのですが、霊夢の周囲に配置された弾幕に大きな弾丸が触れた途端、弾丸は反応を起こし大きな黒薔薇が咲きました。
それは古明地こいしの弾幕に似たものがあります。


霊夢「なるほど、この手のタイプか。避けるのはさほど難しい事ではないわね」


そう言いながら、霊夢はスペルカードを攻略していきます。
その様子を見て苛々を募らせているのはゆーちゃん(夢)でした。


ゆーちゃん(夢)「なんで…なんで一発も当たらないの…?」
霊夢「何度も言わせないで。私はあんたには負けないわ」
ゆーちゃん(夢)「……忘却『ブラックビューティー』!」


ゆーちゃんは尚もスペルカードを発動させました。
部屋全体に咲き乱れる花状の弾幕。
それらは次第に解れていき、花びらとなった弾幕が霊夢を追い詰めます。
しかし弾速そのものは緩やかであり、集中力さえ切らさなければ、霊夢にとって避けることは造作もありません。
このスペルカードも、霊夢は被弾することなく攻略しました。


ゆーちゃん(夢)「なんで……なんで……」
霊夢「あんたも、そして私の背中にしがみついてるのも、どっちもゆーちゃんでしょ? それなのに自分を否定して、夢が現実に成り変わる? 甘えたことぬかしてんじゃないわよ。自分を受け入れられないような奴に、私は絶対に負けないわ」
ゆーちゃん(夢)「う……うぅ……」
ゆーちゃん「霊夢さん……」
ゆーちゃん(夢)「……雪柳至音!」
ゆーちゃん「は、はい!」
ゆーちゃん(夢)「至音は、私の事をどう思ってるの?」
ゆーちゃん「私は……私は、夢の自分が、こんな性格だとは思わなかった。確かに私は、幻想郷の皆と遊びたいと願ったこともあるよ? でも、皆を傷付けたいなんて思ったことはない。……それでも、夢の中の私がそう願うなら、私はそれを受け入れてあげたい。皆を傷付けたいわけじゃないけど、夢の私が心から願うなら……」
ゆーちゃん(夢)「……はぁ。私だって、本当ならこんなことしたくないよ。でも、抑えられない。この力を、抑えられないの」
霊夢「ゆーちゃん……」
ゆーちゃん(夢)「霊夢さん」
霊夢「ん?」
ゆーちゃん(夢)「これから使うスペルカードは、私のとっておき。本気の本気。これを攻略してくれたら、私はもう諦めるよ」
霊夢「……分かった。あんたの想い、受け止めてあげる」
ゆーちゃん(夢)「……ありがと。黒心『ブラックベルベット』!」


ゆーちゃん(夢)の放った弾幕は、これまでゆーちゃん(夢)が使ってきたどのスペルカードよりも美しく、そして繊細で、それでいて危険さを漂わせる難易度となっていました。
ゆーちゃんはもう、目を瞑っていません。
それは自分を受け入れると誓った、小さな決意の現れなのでしょう。
そして霊夢も、ここに来て極限の集中力を発揮していました。
ゆーちゃん(夢)の想いを受け止めるため、このスペルカードは絶対に被弾してはならないからです。
そして遂に……。


ゆーちゃん(夢)「……完全に私の敗けだよ、霊夢さん」


決着がつきました。
力を使い果たしたのか、ゆーちゃん(夢)の体は白に戻っています。


ドレミー「さあ至音、自分の夢に戻りなさい」
ゆーちゃん(夢)「は〜い。じゃあね」
ゆーちゃん「至音」
ゆーちゃん(夢)「ん?」
ゆーちゃん「……また会おうね♪」
ゆーちゃん(夢)「……うん」


ゆーちゃん(夢)は姿を消しました。
自らの夢に戻ったのでしょう。


ゆーちゃん「夢の私がブラックビューティーを使った時は、本当に私を否定しようとしてるのかと思ったけど……最後にブラックベルベットを使ってくれてホッとしてる」
霊夢「…え?」
ゆーちゃん「ブラックビューティーって、黒いチューリップの名前なんです。その花言葉は、私を忘れてください。でも、最後に使ったブラックベルベットはペチュニア。黒いペチュニアは危険な愛って花言葉もあるんだけど……ペチュニア全般の花言葉は、あなたと一緒なら心が和らぐ。心の安らぎって意味なんです」
霊夢「……つまり、あれは強がりだったってこと?」
ゆーちゃん「その通りです。現実の私が言うんですから間違いありません」
霊夢「そうね。……ところで」
ゆーちゃん「すー……すー……」


緊張が解けて安心したのか、ゆーちゃんは霊夢の背中で眠ってしまいました。


ドレミー「寝ているだけのようですね」
霊夢「そう。良かった」


霊夢の「良かった」と言う台詞は、ゆーちゃんの心配をしてのことではありません。
これからドレミーと話す会話は、ゆーちゃんには聞かせられないものだからです。


霊夢「さぁて、色々と白状してもらおうかしら?」
ドレミー「はて…何の事でしょうか?」
霊夢「今回あんたは、事ある毎に嘘をついていたわね」
ドレミー「嘘…ですか?」
霊夢「とぼけるな。まずはブラックサンタの正体。あれは夢のゆーちゃんの事だったんでしょ?」
ドレミー「何故、その様に思ったのですか?」
霊夢「夢のゆーちゃんを倒した時点で、ブラックサンタの気配が消えたからよ。それにゆーちゃんがブラックサンタなら、涼花ちゃんを利用した事にも説明がつくわ。ゆーちゃんを見た時の涼花ちゃんの慌てぶりからもね」
ドレミー「なるほど。そう言う考え方も出来ますね」
霊夢「私があんたにブラックサンタの居場所へ案内させたにも関わらず、ゆーちゃんの居る場所へ誘導したのも、私にブラックサンタであるゆーちゃんを倒させるため。違う?」
ドレミー「ふむ……」
霊夢「直接の原因は涼花ちゃん。あの子は夢に介入できるから、普段から近くに居たゆーちゃんにも影響が出てるはず。そんな無防備なゆーちゃんに、妖怪共の思念が集まったんでしょ? それで、あれだけ強くなってしまった」
ドレミー「……降参。降参です。全部、貴女の言う通りです。……この事は最後まで秘密にしておきたかったのですが……貴女の勘の良さを侮っていましたね」
霊夢「でも、これで本当に、ブラックサンタの驚異は去った……ってことで良いのよね?」
ドレミー「はい、間違いありません。一応私が、ゆーちゃんに思念が宿らないよう細工をしておきましたし、これで二度と、ブラックサンタが生まれることも無いでしょう」
霊夢「それを聞いて安心したわ」


博麗神社へと戻ってきた霊夢は、ゆーちゃんを居間に寝かせました。
そしてその寝顔を眺めながら、霊夢は夢の中のゆーちゃんについて考えます。
ゆーちゃんはまだ、能力を持っていません。
今後、もしかしたら能力が開花するかもしれません。
紛い物の力を手にしていたとは言え、あれだけの強さを誇ったゆーちゃん。
そんなゆーちゃんの能力が開花したら……自分達にとってどれ程の驚異になるのかと。
再びゆーちゃんの寝顔を覗き込む霊夢。
この純真無垢が、どれ程の…。


霊夢「……はぁ。ゆーちゃんはゆーちゃんよ。驚異になるはずがないわ」


霊夢はそんな考えを払拭し、ゆーちゃんに寄り添います。
今はただ、この小さく可憐な花を守ることだけを考えよう。
そう、心に誓う霊夢でした。


終わり