縁コウキ専用台本です。
読み物としてお楽しみ下さい。


***

【幼馴染の彼女から、カフェで愚痴を聞いている設定】


うん……
うん……
へぇ……そうなんだ。
お前も苦労してるんだなぁ……。


【ストローでジュースの中に入っている氷をカランカランと混ぜながら、彼は彼女の話を聞いている】


ってかさ、そこまで彼氏の不満をダラダラ喋るくらいなら、早く別れちゃえばいいじゃん。
なんで別れないの?

ふーん、それでも別れないって言い張るんだ?
うーん、俺には全然その気持ちが分からない。
だってさ、浮気……されてるんだよね?
いや、浮気でしょ?
お前以外の女の子と毎晩長電話したり、二人きりで遊びに行ったり、そんな事俺なら絶対にしないけどな。
だってそんなことしてたら、自分の彼女が傷つくって想像がつくもん。
好きな人に少しでも嫌な思いをさせたくないって、普通は思うはずだよな?


【彼女は少し考え込んだ顔をするが、踏ん切りがつかないようで、困った表情を浮かべたままだ】


それでも、彼の事が好きなんだ?
……そう、お前がそれでいいなら俺は何も言えないよ。


【「ごめんね、いつも愚痴を聞いてくれて」】


いや、いいよ、謝らないで。
お前の愚痴を聞くのは、昔から俺の役目だったし……。
それにお前は大切な幼馴染なんだから、俺に遠慮なんてしなくていいよ。


【「あなたに話を聞いてもらえると、気が楽になる。ありがとう」】


はは、どういたしまして。
ん?俺の方はどうなのって?
いや、全く恋愛とかしてないよ。
っていうか作る気もあんまりないしなー。
なんでって……こんなに手のかかる幼馴染がいたら、彼女なんて作る気にはなれないって。ははは。


【「いつもありがとう。もし貴方にも恋人ができて悩みができたら、今度は私がいつでも相談に乗るからね。話聞いてもらってるお返し」】


はは、分かった。
ありがとう。
その時は、存分に話を聞いてもらう事にする。


【そんな中、彼女は自分のスマホを見て顔色を変える。
そして「もう行くね」と立ち上がった】


あれ、もう行くの?
頼んだコーヒー全然、飲んでないじゃん。

え、彼からメッセージが来た?
今すぐ来いって……ほんと横柄だよね、彼氏。
それで、お前は呼ばれてそのとおり行っちゃうんだ?
「行かないと怒られる」って、なにそれ。

ねぇ、なんでその彼の言いなりなの?
彼女が思い通りにならないからって怒るなんて、俺は同じ男としてどうかと思うよ。


【「ごめん……でも、私……行くね」】


(大きなため息)はぁ、そっか。わかった。
じゃあ近くまで送るよ。
さ、行こうか?


***

【二人で並んで町中を歩きながら、彼は彼女に話しかける】


ねぇ、今から彼氏に会うのに、どうしてそんなに緊張した顔してるの?
普通はさ、好きな人に会う前はもっと楽しそうな顔をするものなんじゃないの?
はぁ、いつも俺がこんな風に訊ねると、お前は困った顔でだんまりになるんだもんなぁ。
ねぇ、お前は本当に今、幸せ?


【彼女がハッとした顔で彼を見つめたその時、彼女のスマホから着信音が流れ始める】

(着信音が鳴り続ける中)


もう一度聞くよ、お前は今、幸せなの?
俺には、そうは見えない。
そしてもう、幸せじゃないお前見ているのは、いい加減嫌なんだけど。

ねぇ、その鳴り続けてるスマホ……俺に貸してよ。
お前が彼を断ち切れないなら、俺が断ち切る。
なんでって、あのさ……まだわからないの?
言っておくけど、俺は貴重な休日を使って、好きでもない女の子の為に、わざわざカフェに出向いたりしない。
そういうことなの、分かった?

ほら、貸して。


【彼はスマホをタップし、彼女の彼氏からの電話に出る】


(穏やかな声で)もしもし。
はは、お前誰だよって、そりゃそうなりますよねー。
僕は彼女の幼馴染です。
はぁ、随分乱暴な口調でまくしたてるんですね。
落ち着いてください。
いつも彼女に対して、そんな風に怒っていたんですか?
へぇ、そうですかー。

(声を低くして)お前、何様のつもりだよ。
はぁ?じゃねぇだろ、こっちの台詞だよ。
お前さ、話を聞く限り全然彼女の事を大切にしてねぇよな。
だーかーら、落ちつけって言ってんじゃん。
さっきからぎゃんぎゃんうるさいんだけど。
とりあえず聞けって。
あのさ、お前って彼女を大切に出来ないみたいだし、このまま俺が貰うことにしたから。
は?彼女の意思?
いいよ、聞いてやる。
それで彼女がこっちを選んだら、お前引けよ。
わかったか?


【彼は彼女の方にスマホを渡しながら、優しく声をかける】


話、聞いてたよね?
あとはお前が選べばいい。

(耳元に唇を寄せて)もちろん、俺を選んでくれたら後悔はさせないから。
お前を傷つけるようなヤツとはここで関係を切って、俺にしておきなよ。


【彼女は唇を噛み締めた後、勇気を出してスマホを耳に当てて彼氏と通話する。そしてきっぱりと別れたいと告げた。
それを見た彼は、嬉しそうにニコリと微笑む】


はは、彼にちゃんと別れを言えて偉いじゃん。ありがとう、僕を選んでくれて。

じゃ、スマホ貸して?

(低い声で)聞いた?彼女はお前と別れるって。
言っとくけど、つきまとったりしたら絶対に許さねぇから。

ん?あ、通話切れた。
なんか最低な捨て台詞吐かれちゃったし。
女は他にもいるからつきまとったりするかよ、だってさ。
ね?この男と別れて正解だったでしょ。


【彼女が涙目になったのを見て、彼は少し焦る】


あぁ、ごめん、今のはお前に伝えるべきじゃ無かったかも。
無神経だった、本当にごめんな?
お願い、泣かないで……。


【「ううん、言ってくれてありがとう」と彼女は泣きながら笑顔を見せる】


え、言ってくれてありがとうって……なんで?
「これで新しい恋に進める」って……そっか、そっかぁ……。
涙目で俺を見つめながらそんなにニコニコしないでよ、可愛すぎるから。

ねぇ、抱きしめさせて?


【彼は彼女を抱き寄せ、ぎゅーっと強く抱き締める】


ごめんな、いきなりこんな展開になってお前は困惑してると思う。
俺さ、ずっと物分りのいい幼馴染のフリをしてたけど、さっき……お前の辛そうな横顔を見て、彼氏から奪ってやろうって強く思っちゃったんだよねー。

あ、その顔、お前のホッとしたような幸せな顔。
良かった、俺の行動は間違ってなかったみたいだな。


【2人は照れくさそうに微笑み合う】


なんかさ、子供の頃からずっと一緒にいて、今更恋人っていうのも照れくさいけど、俺はお前を悲しませたりしない自信はあるよ。
だから、安心してついてきて?

【彼女は彼の言葉に、嬉しそうに頷いた】

はは、ありがとう。
じゃあさ、幼馴染から一歩先に関係が進んだ訳だし、とりあえず今から手を繋いでデートするっていうのはどう?

【そう言って彼は彼女に手を差し出した】


END
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