読み物としてお楽しみ下さい。
【二人でデートの帰り道】
もうこんな時間かー。
なんか、二人で過ごすと楽しくてあっという間だったね。
俺さ、久しぶりに映画館で映画見たけど、やっぱり家で見るのとは違うなー。
迫力が全然違う。
あ、今日はありがと、俺の好きなジャンルの映画に付き合ってくれて。
今度はさ、お前の好きな映画にしようよ。
どんなのが好き?
【彼女は自分の好きな映画の話をする】
じゃあ次の休みはそれを見に行こうか?
よし、決まりー。
次のデートも楽しみだなー。
ん?俺が子供みたいにはしゃいでるのが面白いって?
そりゃはしゃぐよ。
だって俺、お前と出掛けるの大好きだもん。
ん?お前も同じ気持ち?
はは、俺たち両思いじゃん。
って、付き合ってるんだから当然か。
【彼は時計を見て時間を確認する】
えーっと、そろそろ終電がヤバイ。
間に合わなくなったら大変だし、駅に行こうか?
って、ん?
どうして足が止まってるの?
ほら、早く駅に行かないと帰れなくなっちゃうよ。
【彼女は足を止め、真っ赤な顔をして俯いていた】
あれ?どうしたの?
気分でも悪くなった?大丈夫?
え、だって急に立ち止まっちゃったから……。
ん?
【「……今日は、帰りたくない」】
(少しの沈黙のあと)…………えっ、あ、今、帰りたくないって……言っ……たの?
【「……うん」】
(困ったように頭をかきながら)うーん……そっか
あー……でも、ほら、俺達まだ付き合ったばかりで……今日が二回目のデート……だし、さ?
そう言うのは……その、まだ早いんじゃないかなーって思うんだよね。
【彼は彼女を傷つけないように、必死に言葉を選んで伝える。
すると彼女は悲しそうな顔をした後、下を向いて必死に涙をこらえた】
ん?どうしたの?大丈夫?
だって悲しそうな顔で俯いちゃったから……
え……?
「自分が恥ずかしくなった」って……いやいや、なんで?!
【彼女は泣き顔を隠すように「もういい」と言いつつ、その場なら駆け出していく。
ワケがわからない彼は、呆然と立ち尽くしていた】
え……「もういい」って、あっ、ちょっと待って……!
どこ行くんだよ……っ、おい!
あ…………行っ……ちゃった……
アイツ、絶対泣いてたよな……
なんで?
俺、なんか悪いことした?
***
(ピンポーンとインターフォンを鳴らす音、その後扉が開く音)
やっぱり、家に帰ってたのか。
なんで来たのって、いや、普通来るだろ!
彼女が泣きながら帰って行ったら……さ。
とにかく、部屋の中……入れてくれる?
ありがとう、お邪魔します。
(あえて明るく振る舞う)初めて入ったけど、お前らしい可愛い部屋だなー。
おっ、アロマキャンドルとかおしゃれな物まであるし……
って……ごめん、夜中にいきなり押し掛けて何言ってんだって話だよな。はは……
【深呼吸して落ち着く彼】
さっきも……言ったけど、ここに来たのはお前が泣いて帰ったのが気になって……
俺、なんか酷い事言っちゃったのかな?
だとしたらごめんな?
いや、「もういい」って……そんな投げやりな事言わないで、なんで泣いちゃったのか教えてほしい。
俺、あんまり女の子の気持ちとか読み取るの苦手でさ。
たぶんそのせいで傷つけちゃったんだよな?
本当にごめん。
もう2度と泣かせない為にも、理由を教えて?
【彼女はしばらく黙り込んでいた後、少しずつ語り始めた】
うん……
うん……
俺とまだ一緒にいたくて、勇気を出して誘ってくれたんだ?
それを断られて……恥ずかしくなった?
ん?それと?
「自分に魅力が無いからなんだって凹んじゃった」って……
違うよ!それは全然違う!!
お前に魅力が無いとか、そんな事は絶対にない!!
その……えっと、勇気を出してくれた事を無碍にしちゃったのは、ほんと配慮が足りなかった、ごめん。
誘いを断ったのは……お前に原因があるとかじゃないんだよ。
むしろ、本能だけで言えば、今すぐにでもお前に手を出したい気持ちを必死に抑えてる。
でも……俺ね、お前の事が本当に大切なの。
大切だからこそ、軽はずみに手を出したくなかったの。
あーでも、それが傷つけちゃってたなんて……っ、俺ってほんと女心に鈍感だなぁ……。
自分が嫌になるよ。
ごめんな?
ん?「大切に思ってくれてありがとう」って……俺の気持ち、わかってくれたのか?良かったぁ。
じゃあさ、ほら、仲直りのぎゅーしよ?
ぎゅー。
……なんかさ、こうして二人きりの部屋でひっついてるとドキドキするね。
お前も?そっかぁ。
あーもうっ、ほんとに好き……大好き。
ん?「終電も終わったし、今夜うちに泊まる?」って……
いや、それは……すげー魅力的な提案だけど、さっき俺、カッコいい事言っちゃった手前、流石に……
ん?添い寝だけ?
あ、ああ、添い寝ね!!(少しだけ残念そうに)添い寝だけ…………うん、
(苦笑い)え?いや全然残念だとか思ってないよ!
「そのまま襲ってくれてもいいよ?」って、そういう事を笑いながら言ってからかわないでよー。
(少し色っぽく)俺の理性が飛んだって、知らないよ?
end