縁コウキ専用台本です。
読み物としてお楽しみ下さい。

【彼は彼女の作った書類に目を通している】


うん、うん、よし、ちゃんと出来てる。
残業してくれて助かったよ。
悪かったな、俺の仕事を手伝わせる形になってしまって。
そのせいでこんなに遅くなっちゃってごめんな。

ん?あ、コーヒー淹れてくれたんだ、ありがとう。
じゃ仕事も片付いた事だし、ゆっくり飲ませてもらおっかな。


【彼はコーヒーカップを手に取り、それに口をつける。
彼女も席につき、コーヒーを飲み始めた】


そう言えばさ、今日ってバレンタインじゃん?
お前って彼氏とかいるんだっけ?もしいたらこんなに遅くまで残業させて、めちゃめちゃ悪いことしたなと思って……。
あ、こういうことってあんまり後輩に聞かない方がいいのかな。
言いたくなかったら無理に言わなくてもいいよ。
ただの世間話だし、はは。
ん?あーいないんだ、へぇ。


【「彼氏はいませんが、夢中になってる人はいるんですよー」と彼女は嬉しそうに笑う】


え、なになに?
夢中になってる人がいるって?
すげー気になるんだけど。
この会社のやつ?
ん?会ったこと無い、画面の向こうの人?
あーつまり、その、俳優とか、アイドルとか、そういうの?
あ、違う?じゃあ何?


【彼女は恥ずかしいと言った顔をして、説明をする】


え、シチュエーションボイス……?
(動揺しつつ)あ、それって、えっと
(ぎこちなく)へ、へぇ……そういうのに、ハマってるんだー。
それで、お前が推しって言ってるのってどんな人?

いやいや、なんでそこで口籠るんだよ。
ここまで話したなら、言えよ気になるだろ。


【「えっと、実は「縁コウキ」っていう演者さんなんですけど……」】
 
(コーヒーが噎せて)こほっ、えっ、あ、そうなんだ、「縁コウキ」って人に、お前ハマってんだ?へぇ。
(様子をうかがうように)……ちなみに、ソイツのどこが好きなの?


【彼女は「縁コウキ」の好きな所を、楽しそうに話す】


あー……なるほどねぇ。
声、が好き……かぁ。
あと話し方?あーそうなんだ……ふーん。
え、え、今なんて言った?
Twitterで公開されてる写真も、自分の好み……って。
えっ……と、あのさ、だったら、もしかして……気づいてる?
あれ、結構顔が分かるように、写ってるよな……。


【彼は頭をかきながら彼女を見つめ、彼女はキョトンとした顔になる。
それを見た彼は、思わず苦笑いした】


ははは、えっ、そのキョトンとした顔……まさか気づいてなかったのか?
いや、マスクしてたりスタンプ押してる写真とは言え、顔分かるだろあれ。
鈍感かよ!
まだ分からないのか?
だーかーらー!その、縁コウキは俺なんだよ。


【彼女は「ええええっ」と大声を出して、椅子から立ち上がる。
そしてスマホに保存してある推しの写真を見て再び「あああ!」と大声を出した】
 
お前キャーキャー叫びすぎ、うるせぇよ、ははは
動揺しすぎだって。
あー、一つだけお願い、会社の他の連中にはこういう活動してる事、内緒にしといて。
別にやましい事じゃないんだけどさ、なんかやっぱり照れくさいし。

それにしてもさ、まさかお前が画面越しの俺に沼ってたなんてなぁ。
偶然って怖いよな。
って、さっきから顔が赤いぞー。
(耳元に唇を寄せて)もしかして、自分の推しが身近にいたって知ってドキドキしてんの?
頷いちゃって……可愛いじゃん。

俺もさ、まさかこの流れで自分のリスナーさんが身近にいる事を知るなんて、夢にも思わなかったよ。
しかも俺が好きな子が、なんてさ。


【サラリと言った彼の言葉に、彼女は目が点になる】


なに固まってんの?はは。
もう一回言おうか?
だから、好きな子が俺のリスナーさんだったなんて凄い偶然だなって話。


【彼女は顔を真っ赤に染めたまま、あわあわしている】


落ち着けって、ははは。
もーう、ほんとかわいいなお前。
(少し真面目な顔をして)でさ、どう?
その……俺が、お前の憧れの人だって知って。

感激してる?はは、そっかー。
じゃあさ……もし、俺が、付き合ってって言ったら……お前はどうする?

【彼は一気に緊張した顔になり、彼女の返事を待つ。
すると彼女は俯きがちに口を開いた】

いやいや、なんでそんなに弱気なの?
私なんかでいいんですかとか、そんな言い方しないでよ。
お前がいいの、だから付き合ってって言ったの、分かる?
はは、やっと表情が和らいだ。

ねぇ、抱きしめていい?
ってか嫌って言っても抱き締めるけど。

【彼は少し強引に彼女の体を引き寄せ、強く抱きしめる】

お前ってさ、いつも誰かが困ってたら声を掛けたり自然と手を貸したり、そういう気遣いが出来る子じゃん?
そんな所、前からいいなって思ってた。
はは、なんか改めてこういう事言うの、照れくさいな。

【「こうして近くで声を聞くと、縁コウキくんと同じ声だって実感してドキドキします」】

はは、なにそれ当たり前だろ。
俺と縁コウキの声が一緒って、ははは。
ん?近くで声を聞いたらより一層実感したって?
そっかー。
じゃあ今度からこの声、毎日近くで聞かせてやるから。
何嬉しそうな顔してんだよ、だからお前のそういう所、可愛すぎるんだってば。
なんか色々させたくなっちゃうなー。
え?何をさせたいのかって?
(にっこり笑って)んーじゃあとりあえずまずは、バレンタインが終わっちゃう前に、本命チョコの代わりとして、今からお前のキスをもらってもいい?

END
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