縁コウキ専用台本です。
読み物としてお楽しみ下さい。





***

(ピンポーンとインターホンが鳴る音)

お、いらっしゃーい。
ごめんな、ちょっと今作業してて。
適当に座って少し待っててくれる?

(カチカチとマウスをクリックする音)

ん?そうそう来週アップする予定の動画の編集中。
こうして休日にまとめてやっとかないと、平日って何時に帰れるか分からないじゃん。
同じ職場だからわかるだろ?
そうそう、帰ろうとしたらいきなり新しい仕事来たりしてさ。
あれ、ほんと困るよなー。


【彼はしばらくマウスをカチカチと動かし、作業を続ける】


あっ


【突然彼が漏らしたその声に、ソファに座る彼女は顔を上げた】


おお、ホワイトデー企画の応募者……たくさん来てる。
すげー嬉しい。
ほら、明日のホワイトデーにボイメのプレゼントするって企画、あっただろ?
応募者少なかったら凹むなぁーと思ってたんだけど、想像していた以上に来ててテンションあがった。

って、ん?

(笑いながら)おい、なんでお前も応募してんだよー。

お前のTwitterからDM来てるの見て、びっくりしたじゃん。
え?いや、確かにお前も元々俺のリスナーさんだけど、バレンタインの日から恋人になっただろ?
だったら、わざわざ企画に応募しなくったって、俺の声ならいつでも聞けるじゃん。

は?そんなにボイメ欲しいの?
(笑いつつ)いやいや、必要ないって。
そもそもなんか彼女に対して、縁コウキとして甘ーいボイメ送るとか、恥ずかしいしさ。
だからだめー。


【彼女は口を尖らせ、少しムッとする。
作業中の彼はそんな彼女の変化に気づかない】


はぁ、嬉しいなぁ。
こんな風にさ、俺を応援してくれるリスナーさん達を見てると可愛くて堪らないんだよな。
なんかみんなまとめてヨシヨシって頭撫でたくなる。


【「私の事も構ってほしい」】


ん?いやいや、お前の事もちゃーんと構ってるだろ。
職場も一緒だし、休日はいつもうちに来て仲良く過ごしてるし。

あ、また希望DMが来た。
なぁ、録音したやつを一斉配布とかじゃなくてさ、この子達一人ひとりに、それぞれの名前を呼んだメッセージを送るってのはどうかな?
喜んでもらえるかな?


【彼女は不貞腐れて横を向き「知らない」と言い放つ】


知らないって……え、なんで怒ってんの?
なに、もしかしてヤキモチ?
勘弁してよ、俺がボイス投稿者な事は分かってて付き合ってんだよな?
だったら、このくらい我慢してもらわなきゃ困るんだけど。

いや、別にリスナーさんばかり優先してる訳じゃないだろ。
お前の事も気にかけてるよ、俺は。
そりゃリスナーさんはめちゃくちゃ大切だよ?
応援してくれる人には、その分お返ししたいと思うじゃん。
彼女だったら、そのくらい理解してほしいんだけど。


【「あなたは私のこと全然気にかけてないよ。ホワイトデー企画の事で頭がいっぱいじゃない」】


(イライラしつつ)は?なに、もしかしてホワイトデー企画のボイメ、お前にはあげないって言ったから拗ねてんの?
だーかーら、俺の声なら四六時中聞いてるじゃん。
わざわざ録音して聞かせる必要ないだろ。

(大きくため息をついて)はぁ、とにかく今からボイメ、たくさん録らなきゃだから、ちょっと待っててよ。
終わったらちゃんと構ってあげるから。
ね?わかった?


【涙目で立ち上がった彼女は、帰り支度を始める。
それを見た彼は少し焦りだす】


え、なんで帰ろうとしてんの?
俺、そんなに怒らせるような事言った?
は?初めてのホワイトデーなのに、大事にされてる感がない?
ちょっ、そんなに泣かないでよ。

(大きなため息)

あーもう、わかった、わかったって!
本当は明日見せようと思ったけど、泣かせてまで内緒にする必要ないしな。
ちょっと待ってて。


【彼はキッチンに行き、冷蔵庫を開ける。
そして何かを取り出し、彼女のもとに戻っていく】


ほーら、見て。
俺特製の手作りプリン。
今朝たくさん作って冷蔵庫で冷やしてたの。
これをラッピングして、明日お前に渡そうと思ってた。


【彼女はそれを見て、目を丸くしている】


言っておくけどそこらへんの店より美味いぞ。
ってのは言い過ぎか(照れ臭そうに笑う)
これを食べれるのは、彼女の特権なんだからなー?

はは、なにまた涙目になってんだよ。
今度のは嬉し涙?


【「リスナーさんへのプレゼント優先で、私の事なんて考えてないと思ってた」】


えー何言ってんだよ。
ちゃんと大事な彼女へのプレゼントは用意してるよ。
(耳元で)だってバレンタインの時、お前からキスのプレゼントをもらったんだから、そのお返しをしないと……だろ?


【彼女は顔を赤くして、バシバシ彼をたたく】


(笑いながら)あっ、恥ずかしいからって叩くなって。

とーにーかーく!
これで俺がお前を蔑ろにしていない事はわかっただろ?
だから俺が録音している間、このプリンでも食べながら待ってて。
うん、いい子いい子。
じゃ、俺は作業に入るから、終わったらいっぱいいちゃいちゃしような?

End

book / home