縁コウキ専用台本です。
読み物としてお楽しみ下さい。

***

【カタカタカタとキーボードを叩く音】


(彼は一旦手を止め、時計にちらりと視線を向ける。
すると針は夜の10時を指していた)

もう10 時かー。
働いたなー。
流石にもう僕以外誰もいないかぁ……(事務所を見渡しながら)っていた。

(彼女を見つけた彼は驚き、目を丸くする)

あれ、なんだまだ君もいたんだ。
他の後輩達はみんな帰ったのに、熱心だなぁ。 

あんまり無理せず帰りなよ。
働き過ぎると体壊すから。

え、僕?
僕はいいの。
ほら、一応管理職だしね。
って言っても、あんまり威厳ないんだけどさ。

(彼は頭をかきながら苦笑いし、彼女もクスクスと笑う)

それにしても、昼間はガヤガヤしててうるさいオフィスなのに、二人きりだと随分静かだな。
ほら、少しキーボードを打つだけで音が響く。
でもさ、こういう静かな場所で仕事するのも新鮮でいいよね。


【しばらくキーボードをたたく音】


(うーんと上半身を伸ばした後)よーし、僕の方はだいたい片付いた。
君の方はどう?まだ掛かりそうなら手伝うよ。


【そう言うと彼は椅子から立ち上がり、彼女の席に向かう。
そして彼女のパソコンの画面を覗き込んだ】


ん?あれ?
これって昼間のうちにとっくに終わってた案件じゃない?
じゃあなんでわざわざ残って残業してたの?
ん?なに?僕が今日残業するって言ってたから?……って
ふーん……


【彼女は真っ赤になってうつむき、唇を噛みしめる。
それを見た彼は、何かを察し小さく笑った】


(少し甘めの声で)ねぇ?それってもしかして……俺と二人きりになりたかったとか?
(※ここでわざと一人称が僕から俺に)

否定しないって事は、そうなんだ?
知らなかったなぁ、君が俺をそんな目で見てたなんて。
嬉しいよ。


【顔を真っ赤にした彼女を、彼はからかい続ける】


あれ、どうした?
さっきから固まって、動けないみたいだね。
ん?俺の声を側で聞いてると、ドキドキして動けなくなる?
はは、どんだけ俺の事好きなんだよ。
(耳元に唇を寄せて)そんなふうに言われたらさ、こんな風に抱き締めてもっと近くでこの声を聞かせたくなるだろ?


【彼女は恥ずかしさで彼から離れる為に椅子から立ち上がる。
それを見た彼は、くすっと笑った】


あっ、ごめんごめん、いきなりこんな事したらびっくりするよな。
うん、じゃあさ。
俺はここにこうして両手を広げて立っておく。
だから、もし俺に抱きしめて欲しかったら自分からこっちにおいで。


【彼に挑発的にそう言われた彼女は戸惑う。
するとこれはわざとらしく時計をチラ見して、優しく微笑んだ。】


ああ、ごめん。
俺さ、もうすぐ終電だからもし来たいなら10秒以内でお願い。
じゅーきゅーはちーなな……っと、意外と早く来ちゃったね。


【カウントダウンに焦った彼女は、彼の胸元に飛び込んでいく】


いい子いい子、ほらぎゅー。
(耳元に唇を寄せて)やっぱり、抱きしめてほしかったんだ?
可愛いとこあるね。


【彼女は「あなたの事がずっと好きでした」と告白する】


うんうんそっか、実は時々向けられる視線からそうかなって薄々気づいてたよ。
確信を持ったのはついさっきだけどね。
ありがとな、気持ちを伝えてくれて。
あれ、どうした?
身体、すっごく熱くなってる。
俺の声だけでこんなに体温が上がるなんて、なんだか君が愛おしく思えてきた。
いや、白状すると、俺は前から君を自然と目で追ってたんだよな。
人が嫌がる雑用を率先してやったり、新人の面倒を根気強くみてやったり、いい子だなって思ってた。
あ、また顔が赤くなってる。

(抱き締めていた手を緩め)さてと、そろそろ帰るか。
冗談抜きで終電がヤバイぞ、はは。
ほらデスクの上を片付けろ、一緒に帰るぞ。
え?俺と駅まで一緒に帰るのが夢だったって?
はは、随分と小さい夢だな。

(耳元に唇を寄せ)もっと俺にしてほしい事、たくさんあるんじゃないの?
帰りながら、全部聞かせてよ。


END
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