縁コウキ専用台本です。
読み物としてお楽しみ下さい。

【部屋の中、行為を終えたばかりの二人】

はぁはぁはぁはぁ(しばらく激しく、そしてだんだん呼吸が落ち着いてくる感じで長めに呼吸音)はぁ……はぁ……
はぁはぁ……抜く、よ?
……っ、んっと。
あ、ちょっと待って、ゴム外して捨てるから


【彼は避妊具を外してティッシュに包み、ゴミ箱に捨てる】


はぁ……体力尽き果てたぁ……


【彼はそう言いながら、ベッドにいる彼女に寄り添うように横になる】


んーギューっ。
何年ぶりだろ、お前の事、こうしてベッドでギューって抱き締めたの。

(一旦は腕を緩めて顔を離し)付き合ってたのが高校生の時だったから、もう5年以上も前かぁ。
お前ってば、都会の大学に行くって言い出して、地元に残る事になった俺と自然消滅しちゃったんだよな……。

(様子をうかがうように)あの、さ、痛くなかったか?
いや、俺久し振りだったから、上手くできてたのかなって……。


【「痛くなかったよ。大丈夫」】


なら良かった……。


【「この5年間誰とも付き合わなかったの?」】


え?いや、違う違う!
お前と別れて、付き合った女がいなかった訳じゃない。
でもなんか、全部長続きしなくてさ。


【「そうなの?」】


うん、不思議とすーぐに別れちゃうんだよなぁ。
なんでだろうな、ははっ
(話を誤魔化すように、無理やり話題を変えて)それにしても、まさかあんな形で再会するなんて思ってもなかった。
いきなり今日コンビニに行ったら、お前と入口の所で鉢合わせするんだもん。 

え?すぐにお前だってわかったよ。
だから飯でもどうかって、声掛けたんだって。
まさか年末年始で帰省してるなんて知らなかったからさ、すっげー驚いた。
それにお前ってさ、5年たっても全然変わってないよな。


【「えー私、少しはあれから大人っぽくなったつもりだったのにー」と彼女は笑う】


はは、違う違う。
お前が子供っぽいとかじゃなくて、相変わらず可愛いなって事が言いたかったんだって。
都会に行って垢抜けて、もちろん凄く綺麗になったけど、俺が好きだった可愛らしさはそのままだったから、嬉しかった。


【「ありがとう、それから今日は……ごめんね?」】


なんで「ごめん」なんて言って謝るの?
マリッジブルーなんてよくある話じゃん。
飯食いながら今の彼氏との結婚に悩んでるって聞いて、なんか流れでこんな事になっちゃって……。
そりゃ良くないことではあるけど……。
で、どう?少しは気晴らしになった?


【「うん……」】


そっかそっか、なら良かった。
で、お前はいつ向こうに帰るんだっけ?
あー……そうなんだ、明日の朝、帰るのか。
彼氏さんもお前が戻ってくるのをきっと待ってるよ。
話を聞いてる限り、すごく誠実そうな人じゃん。
結婚を迷ってる理由も「彼が良い人過ぎて私でいいのか」なんて、ほんと贅沢な悩みだよ。はは。

で、こうして元カレに抱かれてどんな気分?
こんな綺麗な婚約指輪を嵌めたまま、俺に抱かれて、罪悪感はある?


【「意地悪言わないで」と彼女は泣きそうになる。それを見て、彼は力が抜けたように微笑んだ】


はは、その顔は、相当心を痛めてんな?
って事はさ、やっぱりお前は彼の事が大好きなんだよ。
その事を確認できただけでも、俺、お前の事を今日こうして抱いた甲斐があったわ、はは。
結婚を迷う必要なんてない、そうだろ?

んー?いや、俺の事は気にしなくていいって。
俺はさ、お前の心が落ち着けたならそれで十分だから。

ほら、もう一回ハグしてもいい?
んーっ、ぎゅー。

…あの、これは聞き流してもいいけど、一応言わせて。
俺ってさ、こんな状況で言うのもなんだけど……大切に思ってる子としか、こんな事はしないからな。
今日、こうしてお前の肌に触れたのも……正直さ、少し未練があったからなんだよね。 

あ、いや、待って待って。
俺は別に、彼氏からお前を奪おうとかそんな事は全然思ってない。安心して。
お前からの話でしか想像できないけど、きっとその人はお前を幸せにしてくれる人だよ。
だから、心から一緒になって欲しいと思ってる。

でもさ、時々でいい。
ほんと一年に一回とか、数年に一回とかでもいい。
俺っていう存在も、時々思い出してくれたら嬉しいな。
あぁ、あんな元カレいたなーくらいでいいからさ。
お前の心の中に、少しだけでも存在を残せたら……俺は、充分幸せだから。


【「ありがとう」と言いながら、彼女はぎゅっと彼に抱きつく】


っと、抱きついてくれると思ってなかったからびっくりした。
ん?「ありがとう」って、泣きながらそんなこと言うなよ。
俺だって泣きたくなっちゃうだろ。
ほら、そろそろ服を着て先に帰った方が良いよ?
ずっとここにいたら、俺……良くない事を考えちゃうかもしれないから。
たぶん……なりふり構わず、お前を奪いたくなっちゃうから。

だからお願い、一生のお願い。
もう行って?


【彼女は悲しそうな顔で彼から離れ、衣服を着ていく。
そして「さようなら」と告げて、部屋から出ていった】


(服を着る音、そして扉が閉まる音)


【しばらく黙り込んだ後、彼は扉を見つめながら泣きそうな顔になる】


良かった、俺、ちゃんと泣かずに送り出せた。
アイツの前で泣いたら、気を使わせちゃうもんな……
お願いだから、幸せになってよ?
さよなら


END

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