※縁コウキ専用台本です。


***


【彼は玄関で靴を履きながら、弟に大きな声で話しかける】


んじゃりひと、俺、バイト行ってくるわー!
は?晩飯?いらねー、母さんにそう伝えといて。
じゃあな。


【そう言って玄関を出た彼は、寒空を見上げてため息をつく】

さっみーなぁ。
はぁ、つーかマジダルい。
なんでこんな寒い中、バイトなんて行かなきゃなんねーんだよ。
(手を息で温めながら)ふうっ、寒っ……。
そう言えば、最近あいつに会ってねぇな。
せっかく同じ大学に通ってても、広い敷地のせいで、なかなかすれ違ったり出来ねぇのが、悲しいとこだな。
あーあ。


【気だるそうに歩いていた彼は、女性が男に絡まれているのを見つけた】


んー?あのコンビニの前で女が男に絡まれてんなー。
ナンパか?
…………って、はぁ?!
よく見たらアイツじゃねえか!


【一気に頭に血が上った彼は、彼女の方に駆け寄っていく
そして彼女をナンパしている男の肩を掴んだ】


おい、お前。
この女に何か用?
は?道を聞いてただけ?
嘘つけ、こいつが困ってんのに、しつこく話し掛け続けてたじゃねぇか。
ほら見ろよ、涙目になってるし。
お前さ、誰の女泣かしてんの?
こいつはな、俺の女なんだよ。
は?なに?
文句あんの?なぁ?
ねぇよなぁ!?だったらとっととどっか行けよ。
行けって!

【男が逃げ出した後、彼は彼女の方に振り返る。
そして声色を優しくして話しかけた】

大丈夫だったか?嫌な事とかされなかったか?
そうか、何もされなかったならよかった。
あー……悪い、勢いで俺の女とか言っちゃった。
気にしてない?ふーん、(独り言のように)そこは気にしろよ。

(彼は大きくため息をつき)はぁ、それにしても心配かけんなよな。
ぼんやりしてるからあんなのに目をつけられるんだぞ。
いつも俺が助けてやれる訳じゃねぇんだから、気をつけろよマジで。

【こーきは彼女の頭をグリグリと撫で回す】

うりゃうりゃ、ははっ、髪の毛クシャクシャにしてやったぞ。
はは、そんなに怒んなって。

あ、ここ灰皿あんじゃん。
ちょっとタバコ一本吸っていいか?
その間立ち話でも付き合えよ。

【彼はタバコを咥え、ライターで火をつける。
そして煙を吐き出した後、彼女に話しかけた】

さっきも言ったけどさ、ほんとナンパとか気をつけろよ。
お前ってさ、可愛いんだよ。
その自覚、ちゃんと持ってんのか?
ん?
どうした?めっちゃ赤くなってるぞ。
なんだよ、俺に可愛いって言われてドキドキしちゃったとか?
あーもしかして、俺の事好きになっちゃったんじゃねーのぉ?
ほら俺って、そこそこいい男じゃん?
そんな男にナンパから助けてもらうって、なかなかこれいいシチュエーションだと思わねぇ?

【彼女は困ったようには苦笑いしている。それを見て、彼は大きなため息をついた】

そんな戸惑ってるみたいな顔するなよ。
……なんか、タバコが美味く感じねぇ。
ん?いや、うん、もう捨てる。

【彼は吸いかけのタバコをコンビニ前の灰皿にグリグリと押し付けた後、彼女に真剣な眼差しを向けた】 

なぁ?冗談抜きでいい加減俺のことを好きになれよ。
小さい頃から近所に住んでて、幼稚園から大学までずーっと一緒に過ごしてきた仲じゃねぇか。
俺はさ、ガキの頃からずっと……お前の事が好きなんだよ。
好きで好きでたまんねぇの。

いや、俺だけじゃない。
りひとだって、お前に好意を抱いてる。
その事も、とっくに気づいてるんだろ?

【彼女は何も言えず、彼の顔をじっと見つめる。
彼はそんな彼女の頬に手を添えて顔を近づけ、こう問いかけた。】

そろそろ決めてくれねぇかな。
お前は俺とりひと、結局どっちを選ぶんだ?


end
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